#完結 の作品
幸せの咲く場所
【鳥籠の幸せは罪ですか?】
楽園は、終わらない幸せを約束する場所。楽園の住人は死すら超越し、永遠の幸せを享受する。そこに招かれる資格は、待ち人だけがもっていた。
「センセイ。僕、楽園に行けるかな」
ベッドに横たわった少年は、天井を見つめながらそう聞いた。
男が迷うことなく答える。少年の腕に注射針を刺入させながら。
「当たり前じゃないか。君たちは神様に愛されている。たどり着けないはずがない」
「そうだよね――ありがとう、センセイ。さようなら」
「さようなら」
男が微笑む。
そして、少年の命は完全に停止した。
マキは楽園に憧れていた。他の家族と同様に、招かれる時を待っていた。
幸せの集う楽園にたどり着ければ、永遠に、悲しみもなく生きていけるのだ。
だからマキは楽園を信じた。幸せになりたかったから。
もしそれが偽りだったなら、なにを支えに生きればいいのだろう。
落伍者の落伍者による落伍者のための世界
【赤目は高尚、青目は愚昧。ツノがなければ絶望の底。】
差別階級の最下層民であるウィルは、むかつくやつらを自慢の奪略魔法で撃退することが、(悪)趣味のひとつだった。
しかしたまさか出会った少女ミスティには、自分の魔法が通じない。
「これじゃあ俺のライフワークが台無しじゃねえか!」
確実でなければ、クズ共を存分におちょくれない。
ウィルはミスティの旅に同道し、魔法が通じない理由を突き止めることにした。
頭にツノがある『ツノ付き』が当たり前の世界で、ノーホーン……ノームと蔑まれる落伍者の、自由気ままな旅物語。
拝啓あたしを殺したあなた。今から会いに行きます。
【あたしを殺してくれてありがとう。】
「そういう訳でネフェリアさん。あなたはもう不要です。神子ではなくただの愚民です。この毛玉と一緒に出てってくださいまし」
清らかな天使の加護を受ける白神子《しろみこ》と、闇に携わる堕天使の加護を受ける黒神子《くろみこ》。両者の神通力に支えられて国は栄えてきた。
しかし白神子シビリアーナは、己の力があれば十分だ、汚れた力は要らぬのだと、黒神子ネフェリアを追放した。
ネフェリアはとにもかくにも、これだけは叫びたかった。
「いや黒神子はあんたの方だから! イメージ悪いの嫌だからってどっかの誰かがピーピー泣くから、本当は白神子であるあたしが黒神子ってことにしてあげてただけだから!」
思うも後の祭り。高飛車猫かぶり腹黒女に親切にした自分が悪いのだと諦め、ネフェリアは愛犬パトリックと共に神殿を去った。田舎にでも帰って静かに暮らそうと。
しかしそんな彼女に、さらなる災難が降りかかろうとしていた。
◇ ◇ ◇
【同お題・異種ジャンルの三題噺】
お題:「追放」「天使」「苦痛」/ジャンル:「コメディー」と「シリアス」の二作……より「コメディー」作品。
一億年後に捧ぐ歌
【ある日、空から悪魔が降ってきた。】
最果ての地で、世界の安寧のため祈りを捧げ続ける、天使レミナ。
再生の聖女である彼女は、不老不死という祝福の代償として、世界を癒やす役割を負う。
鳥籠の内から、空を焦がれるだけの日々。飛べない翼は役に立たない。
神官長テオドへの愛だけを支えに、レミナは己の役割を果たしていた。
ある日、空から悪魔が降ってきた。
彼の名はリック。
不死が欲しいと、彼は笑った。
◇ ◇ ◇
【同お題・異種ジャンルの三題噺】
お題:「追放」「天使」「苦痛」/ジャンル:「コメディー」と「シリアス」の二作……より「シリアス」作品。