#ムーンショット の作品
2034
政府のムーンショット計画によると、2050年までに一人の人間が10体のアバターを一度に操作できるテクノロジーを開発して、誰もが多様な社会活動に参加できるサイバネティクアバター社会の実現云々とあるが、そのアバターとは皆が想像するロボット然としたものではなく、実は思考停止した人間そのものではないか、そして優生思想に基づき「適性者」に選ばれたひと握りの人間がその他の選ばれなかった人間をアバターのように操作して厳格な管理のもとで社会活動を行わせることがムーンショット計画の真の目的ではないか,
というディストピアな仮説に基づき、本物語「2034」は進行していく。
過去のパンデミックで体内に「予防マイクロチップ」を「埋め込んだ者」と「埋め込まなかった者」とで、社会は大きく二分した。特区への立ち入り制限、電車の客室の分断、飲食店の利用の制限等「埋め込まなかった者」に課される制限は数知れず。 発表・発言・参加の機会を捨てた「埋めこまなかった者」は後に「サイレントヒューマン」と呼ばれるようになった。
2034年、田舎の山麓でひっそりと暮らす主人公のヒナタ(サイレントヒューマンの第二世代。18歳。バンドマン)はバンドのライブ映像をネットで見たとある令嬢からの招待で東京都スーパー特区へ行くことになる。スーパー特区では、政府によるクリーチャー計画(表向きはユートピアに向かう技術開発の計画だが・・・)によって、不審死や残虐な殺人などの怪奇事件が起きていた。図らずもそれらの事件に巻き込まれたヒナタは、事件の真相を暴くためにスーパー特区に残ることを決意する。