俺とアンナの悪ノリは1時間にも及んだ。 写真を大量に連写しまくったので、スマホが熱を持つ。やけどしそうなくらい……。 故障してもしらね! 撮った写真の中には際どいものも多く、いくら下着じゃないとは言え、ブルーのパンティが丸見えだ。 まあスク水のことだから、セーフっちゃセーフなんだが。 一通り、撮り終えたところで冷蔵庫から飲み物をとる。 俺はアイスコーヒー。アンナに聞くと「ココアがいい」と答える。 二つの缶を持って、ダブルベッドに腰を下ろす。 「ほれ、喉かわいただろ」 「うん☆ でもいい汗かいたぁ」 額に滲む汗をレースのハンカチで拭うアンナ。 ココアを受け取ると、プシュッといい音を立ててプルタブを開く。 「んぐっんぐっ……ぷっはぁ☆ はぁはぁ、美味しい☆」 このいやらしい飲み方はミハイルと同一人物ですね。 俺もアイスコーヒーをがぶ飲みして喉を潤す。 「はぁ、ちょっと暑いね」 そういうと彼女は胸元の襟をつまんでパタパタとあおぐ。 横から見ている俺からすれば、ドキドキが止まらない。 「そ、そうだな…エアコンでもつけるか?」 「うーん…それもいいけど……」 アンナは少し頬を赤くして、うつむいた。 「どうした?」 なんだろう、さっき間違えてつけてしまった『大人の映画』でも観たいのだろうか? 「お風呂……入らない?」 「はぁ!?」 俺は思わず耳を疑った。 「な、何を言っているんだ、アンナ?」 驚く俺を見てアンナはクスクスと笑う。 「勘違いしないで。アンナのメイド服の下は何を着てた?」 「え? あ……水着か」 アンナさん、ちょっと積極的すぎやせんか? 「そう☆ だから二人でジャグジー使おうよ☆」 「でも、俺は水着なんか着てないぞ?」 フル●ンで入れってか? まあこの前『ミハイル』のときに裸で風呂入ったよな。 俺ってば、完全に女の子扱いしているやん! と自分にツッコミを入れてしまう。 「タオルとか巻いたらいいんじゃない?」 「アンナがいいなら構わんが……」 「だってタッくんもたくさん写真撮ったりして汗をかいたでしょ」 そう言ってアンナは俺のTシャツを指差す。 彼女の指したところは脇。わき汗で二つの大きな地図が出来上がってた。 いやん、恥ずかしい! 「すまん、汗臭くないか?」 「うーん。ちょっと……するかも」 そう言ってまたクスクス笑いだす。 彼女を見て思わず、頬が熱くなる。 「でも、お風呂で洗えばいいよ☆」 「へ?」 「ボディシャンプーとかで洗って干しておこう。エアコンとかでさ」 部屋にあったハンガーを指す。 よく気が利く方です、アンナさん。 「すまんが俺は家事全般、不得意だし全くやらん」 「そんなこと自慢じゃないよ!」 俺の背中をバシバシ叩いて笑うアンナ。 力は男だしあのミハイルだから、痛いのなんのって。 「大丈夫、アンナが洗うから。脱いで☆」 すいません、最後のセリフだけもう一回聞かせてください! 「りょ、了解した」 俺は素直にTシャツを脱ぐ。 「じゃあアンナがお風呂場で洗っているから、タッくんはズボンも脱いどいてね☆」 サラッとどビッチ発言じゃないですか……ちょっとドン引き。 アンナは鼻歌交じりに俺のTシャツを抱えて、もう一つの浴室へ向かった。 俺は部屋の中央に向かい、ジャグジーの前でズボンとパンツを脱いだ。 ちょうどいいところに手頃のタオルがある。 それを腰に巻くとジャグジーの蛇口を回す。 このホテルのジャグジーは可愛らしいことにハート型で、二人で入ればちょうど対面式に仲良く浸かれる。 そしてジャグジー裏にはガラス越しに中庭があり、緑と花々を堪能できる。 なんてロマンティック! ここなら彼女もイチコロだぜ! っと言いたいところだが、相手は男の子だからね。 ~10分後~ 「ふむいい湯加減だな」 ジャグジーにお湯が貯まったのを確認したところで、一足お先に浸かる。 「ふぅ……極楽極楽ぅ~」 ババンバ、バンバンバン! 「タッくんたらおじいちゃんみたい☆」 振り返るとそこには……。 「アンナ!」 ピチピチのスクール水着を着た少女が立っていた。 少し恥ずかしそうにこちらを見ている。 ロングヘアーは首元でまとめられている。 「変……じゃない、かな?」 いやいや、変だよ。 お前の息子さんはどこにいったんだよ!? 太ももからお股にかけてグイグイ食い込んでいる。 のに、肝心の『膨らみ』がない。 ペッタンコ。 どうやって隠したんだよ? 「……」 俺は言葉を失っていた。 だって、マジでミハイルって女の子じゃね? と疑っていたからだ。 胸も膨らみが少しある。ほんの少しだが。 微乳サイコー! 思わず生唾ゴックン☆ 「なんかタッくんの目、やらしい」 横目で俺を蔑むアンナ。 だが、その突き刺さる視線こそ、ご褒美! 俺はドMなんだって気がついた日。 「す、すまん……」 「アンナも入っていい?」 「もちろんだ」 透き通るような白い太ももが上がると、そっとジャグジーへ脚を入れる。 お次は可愛らしい小さなヒップが俺の顔面を横切る。 ここを写真撮ったらダメかな? 「はぁ……いいお湯」 瞼を閉じて、肩に触れるアンナ。 肩こりが酷いならわしが揉みましょうか? もちろんオプション付きで。 「ねぇ、タッくん。それってなあに?」 アンナが指した方向にはホテルのアメニティーが置いてあった。 「これは……ハーブか?」 袋詰めされたパックには花びらが複数確認できる。 「せっかくだから入れてみよ☆ 貸して」 アンナは興味津々といった顔で俺からハーブを受け取り、封を開ける。 花びらが湯船に広がると、無色だったお湯がピンク色に変わる。 それと同時に赤い花びらが湯の上を泳ぐ。 なんて幻想的な世界なんだ……。 「うわぁ、キレイ~☆」 アンナは感動しているようだ。目をキラキラさせて喜んでいる。 そういうお前の方がキレイだぜ! と言いたいところだな。 「タッくん、そこのボタン押してみて」 「ん? これか?」 俺は近くにあった丸いボタンを言われた通り押してみた。 すると『ゴボゴボッ!』という豪快な音と共にジャグジーが泡を立てる。 なんとも気持ち良い。 日頃、新聞配達で肩やら腰やら凝り固まったところがほぐれる。 「これはいいな」 俺までジャグジーへの感動に便乗する。 「ね☆」 アンナも超ご機嫌。 笑顔の彼女にこの雰囲気……何か間違いが起こっても仕方ない。 俺はなぜか恥ずかしくなってきた。 心底、彼女の魅力にやられている。このままでは本当に彼女を、アンナを好きなってしまいそうだ。 「タッくん、もうちょっと寄りなよ!」 手招きされて「うぃっす」とアンナに身を寄せる。 もう……どうにでもして! 「ねぇ、タッくん?」 「ん、なんだ?」 「ちゃんとした取材になってるかな☆」 「も、もちろんだとも……」 これが正真正銘の彼女だったらなぁ……チキショォォォ!
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