チーン! とエレベーターのチャイムが目的地に着いたことをお知らせ。 俺は心臓がバクバク。 だって、これからアンナちゃんの自室へとお邪魔するから。 そんなことを知ってか知らずか。 当の本人は鼻歌交じりに俺の手を掴み、廊下を歩き出す。 「タッくん。アンナの部屋は一番奥だよ☆」 なんて優しく微笑むから、俺は期待しちゃう。 いや、しちゃダメだろ! しっかりするんだ、俺の理性くん! 相手は男だ、ミハイルだ、ヤンキー野郎……と思いながらも、彼女の横顔を見つめると。 「どうしたの? タッくん。あ、そうだ! 部屋に入ったら、気持ちいいことしてあげよっか?」 「えぇ!? キモチイイことぉ!?」 思わず、声が裏返る。 「うん。とっても気持ちいいこと☆ アンナ、最近色々勉強しててね。タッくんのために☆」 とウインクされてしまった。 その勉強ってまさか……。 生唾ゴックン! 長い廊下を二人で歩いていると、夜も遅いせいか、周りの部屋から宿泊客の声がドアの奥から漏れてきた。 「あぁ! 温泉でもシタくせにぃ~ 元気ぃ~」 「ハァハァ……この日のため一ヶ月は禁欲していたんだ。寝かせないぜ!」 ん? あれ、さっきスパで見かけたカップルか? 生々しい! と腸が煮えくり返っていると……。 「Yes~! come on~! Ran! You are the best whore!」(いい~! 来てぇ、蘭! 君は最高の娼婦だ!) 英語? 「ハハハッ! この白ブタが! もっと欲しいか!? なら私の名前を呼びな!」 「Ran! Pay for money! Give it to me more!」(蘭! 金なら払うよ! もっと欲しい!) 「なんだとコノヤロ~! だから日本語で話せってんだろが! バカヤロ~!」 気になった客室の前で、立ち止まる。 偶然にも、ドアは少しだけ隙間が開いていた。 俺は好奇心から、覗いてしまう。 部屋の中には、ブラジャーとパンティ姿の娼婦……じゃなかった宗像先生。 なぜかハイヒールでベッドに立っている。 手には男性もののベルト。 ベッドには、白人の外人男性が仰向けに寝かせられている。パンツ一丁で。 なぜか腕と足は荒紐で動けないように縛りあげられていた。 宗像先生がベルトをムチのようにして、彼の腹に振り降ろす。 パーン! と音を立てる。聞いているだけでも、痛そう。 「ハハハッ! これがいいのか? 変態野郎が!」 という先生もなんだか嬉しそうだ。 「I'm a pervert!」(僕は変態です!) 相手も相手で、痛そうにしているけど、めっちゃ笑っている。 ベッドの近くにあったテーブルには、福沢諭吉が三人も並べられていた。 多分、チップなんだろう。 宗像先生って、もうガチのビッチに転職してしまったのか……。 良かった良かった、教師よりこっちの方が向いていると思う。 ドアを覗きながら黙って頷く。 すると、アンナが背後から声をかけてきた。 「なにやってんの、タッくん? 早くアンナの部屋に行こうよ?」 「ああ……そうだったな」 ヤベッ、俺もこのあと、なんかすごく気持ちいいことされるんだったね。 とりあえず、シャワーは浴びておかないと。 あ、パンツ。宗像先生のレースパンティのままだったよ……。
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