俺とあいつが出会ったのは桜舞い散る頃だった……。 「おい、お前! さっきオレにガン飛ばしたろ?」 あいつはいわゆるヤンキーで、初対面の俺にケンカを売ってきた。 俺が勘違いじゃないか? と答えたが、あいつはそんな答えでは満足しない。 「じゃあ……じゃあ、なんでオレの方を見てた!」 あいつは入学式だというのに、肩だしのロンT。中にはタンクトップが見える。そして、ショーパン。 という……露出の激しい格好で来やがった。 正直いって俺のどストライクゾーンだった。 「かわいいと思ったから」 「……」 一言。そのたったひとことが俺の失敗でもあり、はじまりでもあった。 「オレは……オトコだぁぁぁぁぁ!」 「へ?」 そうしてあいつは、俺めがけて奇麗なストレートパンチをお見舞いした。 「な、なにをする! 初対面の人間に向かって!」 「うるせぇ! お、お前がオレに……オレにか、かわいいとか言いやがるからだ!」 「かわいいと思ったことが何が悪い!」 あいつが男だとは思えなかった。 声も女のように甲高いし、見た目は100パーセント、女だ。 俺だけがそう見えていたのかもしれない。 こいつはまごうことなき、男子だったのだ。 ~それから時は少し経ち~ 「あ、あの……わたし……」 目の前には妖精、天使、女神……どの言葉でも表現が足りないぐらいの美人が立っていた。 胸元に大きなリボンをつけて、フリルのワンピースをまとった女の子。 カチューシャにも同系色のリボンがついている。 美しい金色の髪を肩から流すようにおろしていた。 時折、風でフワッと揺れる。 「キャッ」とスカートの裾を手で必死に押さえる姿はとても女の子らしい仕草だ。 「わたしじゃ……ダメですか?」 そう、あいつは女装すると男の娘に変身するヤンキーだったのだ。
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