きょうはにちようび、ぼくのなまえは、しんぐう たくと。 ことしで18さいになる、こうこう1ねんせいだよ。 ぼくはおしごともやってる、えらーいにんげんなんだぞ! 「……」 プロットを書いていたら脱線してしまい、アホな文章になってしまった。 担当編集の白金から、『明日打ち合わせしましょう!』と身勝手な電話があった。 その後、電話をかけ直したが、着信を無視されているみたいだ。 メールでも『明日はやめくてれ』と送ったが、返信なし。 というか、日付変わってから、もう『今日』なんだけどな。 あと5分で午前7時。 朝刊配達を終えて、今日も眠気マックスだ。 妹のかなでは、まだ夢の中。 きっと母さんも仕事で疲れて……じゃなくて、ウイスキーでオンラインBL飲み会やってたから、自室で寝落ちしている。 なので、俺は物音を立てないように、静かにリュックサックを手にとった。 リビングで食パンを焼く。 地元の真島商店街で、買いだめしているコーヒーを淹れる。 「いい香りだ……」 余韻にひたりながら、というか、現実逃避しながら朝食を楽しむ。 久しぶりに徹夜で小説のプロットを書いていた。 未完成だが。 ピコン! 「またか……」 徹夜したもう一つの理由はこいつだ。 ピコン! タップする間にも次々送られるL●NE。 ピコン! ピコッ……ピコン! 見たくない。もうお腹いっぱい。 アンナちゃん、数秒刻みで送ってくるから、スマホが熱々になっちゃったよ。 イキスギィな行為だよ。 「はぁ、なにやってんだか……」 朝食を終え、スタコラサッサーと真島駅に向かう。 もちろん、アンナのことは放置している。 付き合ってられん! 電車に乗り込むこと数分。 |席内駅についた。 プシューッという音と、共に一人の少年が同じ車両に入る。 「よ、よぉ、タクト……」 目の下、くまで酷いことになってるよ! 「ミハイル……お前、寝てないのか?」 そう言う俺も、声がいつもより小さい。 「タクトだって、くまがひどいぞ」 「ま、まあな」 互いに強がる。 だって、朝まで遊んでいたしな。いとこの古賀アンナと。 「ねぇ、いとこのアンナはどうだった? 可愛かっただろ☆」 それって自分で自分のこと、可愛いってことだぜ。 「ああ……可愛かったよ。ミハイルに似ているな」 俺がそうツッコミを入れると、彼は苦笑いで答える。 「そっか? あんまり言われねーけど」 おい、床ちゃんとにらめっこすんじゃない。それに今日も風邪か? 顔が赤い。 「なあ彼女はどこに住んでいるんだ?」 「アンナ? えっとどこだろ……」 歯切れが悪いな、設定ちゃんと決めておけよ。 ~30分後~ 俺とミハイルは、いわゆる寝落ちしていた。 「赤井駅~ 赤井駅~」 車掌のアナウンスが流れて、咄嗟に目を覚ますが、何かが俺の行動を邪魔する。 視線を横にやれば、ミハイルが俺の腕にからんで「ムニャムニャ……タクトぉ」とニヤついている。 可愛いけど、起きろ! 「おい、ミハイル! 赤井駅だぞ!」 「え? あっ、下りないと……」 時すでに遅し。 プシューという音と共に、車内の自動ドアが閉まる。 「「あっ!」」 この時ばかりは、息がピッタリだった。 ちこく、ちっこく~ 「ど、どうしよう……宗像センセって怖いよな?」 ヤンキーのくせしてビビるな。 「まあ次の駅で折り返そう」 ~更に20分後~ やっと俺とミハイルは赤井駅に到着した。 二人して「ほっ、ほっ、ほっ」と走る。 赤井駅からランニングだ。 いい汗をかいている場合ではない。 あの宗像のことだ。 きっと鬼モード不可避である。 長い長い上り坂、通称『心臓破りの地獄ロード』も走る、走る、走る! これは俺たちが宗像先生への恐怖から成せる所業だ。 「み、見えたぞ! ミハイル!」 「うん!」 わざわざ、校門の前に一人の痴女が待ち伏せていた。 一ツ橋に正門など存在しない。 全日制の三ツ橋高校の正門である。 一ツ橋高校の正門とは三ツ橋高校の裏口のことだ。 なので、正門に一ツ橋の教師が立つなんて、よっぽどのことだ。 「くらぁぁぁぁぁ!」 鬼の形相で両腕を組む。アラサー痴女、宗像 蘭。 「遅刻だぞ、お前ら!」 今日のファッションチェック♪ 宗像先生は総レースのスケスケボディコンですね。 トータルホワイトコーディネート。 足元もヒールの高い、白のハイヒール 胸元を開いているわけではありませんが、レースの中が丸見え。 巨大なメロンが二つもお山を作っています。 どこの立ちんぼガールですか? 「す、すいません! 徹夜だったんで……はぁはぁ」 「オレもっす……ハァハァ」 さすがのミハイルも息を切らしていた。 「お前らぁぁぁぁぁ!」 これは殴られること不可避。 覚悟を決めた。 「よく来れました♪」 鬼の形相から一転、優しく微笑む宗像女史。 ど、どういうことだってばよ! 「え?」 「だから遅刻してもよく来れたな、えらいぞ♪」 そう言うと、先生は俺とミハイルを抱きしめる。 「なにを!?」 「センセ!?」 「いいからいいから……お前らは本当によく頑張っているな。先生は嬉しいぞ」 なにが? おっぱいがプニプニ当たってて、キモいのなんのって。 あ、でも、ミハイルともくっついているから、嬉しいと言えば嬉しいが。 「や、やめてぇ……センセッ、そろそろ放してぇ……」 おいミハイル。声色が女だよ……色っぽいのう。 「おう、悪かったな、古賀」 「べ、別にいいっすけど……」 顔を赤くして、何度か俺の顔をチラチラと確認している。 「じゃあ、二人とも元気にスクリーングはじめよー!」 そう言うと、変態教師、宗像は俺とミハイルのケツをブッ叩く。 「いってぇ!」 「あんっ!」 ミハイルだけ変な声だな! 俺とミハイルは逃げるように校舎へと向かった。 ブッ飛び~な高校で死にそう……。
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