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 俺とミハイルは腐女子の北神 ほのかの『ホモォォォ!』光線から逃れるため、教室棟をあとにした。  次の授業はみんなが大嫌い体育だ。  しかも2時間も。  なんですかね~ やりたくありませんね~ 「なぁ……なんでさっきオレに昼ごはんを分けてくれたんだ?」  うつむいたまま、時折チラチラと俺の顔を伺う。 「え? だから言っただろ? 俺の気が済まん」  ミハイルは目を丸くして言う。 「どういうこと?」 「俺は不平等であることが大嫌いだ。なんでも白黒ハッキリさせたい」 「?」 「わかりやすく言うとだな……俺とお前が体育でかけっこするよな?」 「うん」 「それで空腹のお前が本来の力を出せずに負けたら、俺がズルしたみたいだろ?」 「えぇ、そんなことで……」  めっさひいてるやん、ミハイルさん。 「そんなことだから大切なのだ!」 「そ、そっか……」  だからまた『ゆかちゃん』がお友達になっているよ? いや、今はアスファルトか。    二人してとぼとぼ歩く。校舎を抜けて、武道館へと向かった。  今日は全日制コースの部活動はなく、ありがたく利用していいんだとよ。  仰々しいまでの入口を抜けると、地下に降りる。  朝もらったスケジュール表にはそう示されているからだ。 「えっと……男子はA室か」 「うん」  俺は一応、マナーとしてノックする。  特に反応なし。  入るか、ドアノブを回して扉を開く……。 「きゃあああ!」 「え?」  目の前に現れたのは、制服組の女子。  スカートを太ももの辺りで、静止していた。  シマシマ、パンティーだ~ わぁい! 「なにやってんだよ、タクト! 早く閉めてやれよ!」  ミハイルの注意がなかったら、30分は見ていたかもしれん。  扉を閉めた後、とりあえず、深呼吸する。  こういう時は落ち着いて対処するのが肝心だ。  あくまでも紳士的に対応すれば、更によろしいですよ。 「なあ、俺。部屋、間違ってないよな?」 「オレが知るわけないじゃん! この変態オタク!」 「なんでお前が怒っているんだ? 怒るのは見られた彼女だろ?」 「うるさいっ!」  超怖いけど、超かわいいなこいつの顔。  俺らが会話を楽しむ間も、更衣室からはキンキン声が扉を叩く。  しかも、なにかを扉に投げているようだ。  なんで女ってのはものを投げたがるかね。 「おい! そこの女子! ここは男子更衣室だろが!?」 「〇☆✖§Δ\~!!!」  なに言っているか、わかんねぇ。 「謝罪はする! だから堪えてくれないか!?」 「……」  しばらくすると、制服を着たボーイッシュな女子が現れた。  褐色でショートカット。  しかも校則違反なミニ丈。  どこかで見た顔だ。 「あっ! やっぱり新宮先輩じゃないですか!」  そう言うと女は俺の頬をビンタする。 「いたっ……」 「お、おい! おまえ、何も殴ることないだろ!」  いや、ミハイルに言われたくないんだけど。 「はぁ!? 女の子の裸見たんでしょうが! お嫁にいけなくなったらどうすんのよ!」 「おまえの裸なんて、誰も興味ないよ~ だあっ!」  ん? そう言えば、なぜ俺以外の生徒たちはミハイルを女の子と間違えないのだ。 「なあ、コスプレ女子に問いたい」 「誰がコスプレですか!? この前言ったでしょ! 私は正真正銘のリアルJKです!」  ああ、確か……赤坂 ひなただったか? 「お前……赤坂か?」 「そうですけど! し・ん・ぐ・う先輩!」 「あのな、こいつを見て“可愛い”と思うか?」  言いながらミハイルの顔を指す。 「なっ!」  ボッと音を立てて、顔が赤くなるミハイル。 「はぁ? 私、中性的な男子って嫌いなんですけど?」  ふむ、やはり女の子としては認識していない……。 「それよりなんなんですか! この前はかっこつけて私のこと『認識した』とか言ってたくせに!」 「いや、覚えているとも……だが、その先ほど見てしまったパンティーの方がインパクト強くてな……」    ダンッ!!! 「いっでぇ~!」  なにこれ、両脚にダブル踏みつけとか信じられます?  左右からミハイルと赤坂の攻撃、こうかはばつぐんだ! 「なんで……古賀まで……」 「タクトが悪いんだろ!」 「そうですよ! 女の子のパ、パ、パ……」  皆まで言えずに顔を赤らめる。 「パンティーだろ?」 「最低っ!」  そう言って、赤くなってない方の頬をビンタして、足早に去っていった。 「なんだったんだ……あいつは」
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