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 宗像先生の裏の顔を知った俺は、動揺を隠せずにいた。  店内に戻って、その本人を見つめる。  カウンターに涎を垂らして寝ているこのアホが、そんな優しい教師だったなんて……。  しばらく待っても宗像先生は、起きることが出来なかったので、店の大将が車で送ってくれるという。  俺はさすがに悪いと断ろうとしたが、彼は笑顔で「いつものことだから」と手慣れた感じで、先生を抱え店裏の駐車場まで案内してくれた。  いびきをかいている宗像先生を、後部座席に寝かせて、俺は助手席に乗せられた。  大将の母校でもある一ツ橋高校へと車を飛ばす。 「いやあ、今日の宗像先生。かなり嬉しそうだったよ」 「え、そうですか?」 「うん。きっと君が一緒にいたからじゃない? 幸せそうな顔をしてたよ」  あれのどこが?  ただ、ハイボールをがぶがぶ飲んで、文句垂れてただけじゃん。  大将は、高校の駐車場に車を停めると、先生をまた抱きかかえ、わざわざ二階にある事務所まで連れて行く。  二人がけのソファーに先生を寝かせて「じゃ」と去っていった。 「ふごごご! クソが……パチンコ勝てねぇじゃねーか……」  腹をかいて寝言を言っている。  こんなバカが……ね。  人は見かけによらないもんだな。    ※  一時間後、先生はなにを思ったのか、いきなりソファーから飛びあがる。 「ハッ!? また記憶飛んでる!?」  反対側のソファーに座っていた俺はその姿を見て、ため息をつく。 「焼き鳥の大将がわざわざ送ってくれましたよ……」 「ほう。ところで、領収書もらっておいたか?」 「え、まあレシートなら……」 「でかした! あとで今日使ったやつ、全部お前に渡すから、白金に経費として落としてもらえよな♪」  ただギャンブルと酒に使っただけじゃねーか!  どこが取材で、どこが大人のデートなんだよ!  なんの勉強にもならんかったわ。   「ところで新宮。お前、風呂に入りたくないか?」 「え? どこで入る気ですか……まさか、三ツ橋の部室のシャワールームを勝手に使う気ですか?」  もうこの人の思考、読めてきたよ。いい加減。 「失礼な言い方をするな! こんな暑い夜だ。もっとお洒落な大浴場に行こう♪」 「だ、大浴場?」 「うむ。私に任せろ。さ、着いて来い!」  嫌な予感マックスだが、とりあえず、黙ってついていく。  誰もいない静かで真っ暗な校舎を二人して歩く。  先生が言うには、以前ミハイル達と一泊した食堂の近くに浴場はあるらしい。  階段を降りて、校舎を出て目の前に食堂はあった。  そのすぐ裏に二階建ての大きな建物が見える。  近寄って正面から見てみると、大きな看板が目に入った。 『三ツ橋アリーナ』   「なんですか、ここ?」 「ああ、通信制ではあまり使ってないから、わからないよな。ここは普段、水泳部が利用しているプールだ! 夏には持って来いの大浴場だろ!」  んなことだと思ってたよ……。  俺と先生は、階段を昇って、二階の入口からプールへと向かった。  途中、男女別々の更衣室へと別れる。  あ、水着とか持ってないけど、どうするんだろ?  まさか、裸で入る気か!?    と思っていたら、宗像先生が勝手に男子の更衣室へとずかずか入り込む。 「ちょ、ちょっと! こっちは男子の方でしょうが!」 「ああん? お前のイカ臭い股間なんて興味ないわ! それより、これ使え」  そう言って差し出したのは、一枚の競泳水着。いわゆる、海パンてやつだ。 「いいんですか? 人のでしょ?」 「大丈夫だ。忘れていった奴が悪い。どうせ、あとでショタコン向けにネットオークションで出品しようと思っていたモンだから」  この人、本当に生徒想いの良い先生なんですよね?  さっきの話を聞いても、同じ人に見えないのだけど……。
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