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 アンナとの、初めてのプールデートは無事に終了した。  とても楽しかったです……なぜならば、可愛いアンナちゃんのビキニ姿を3000枚ほど、保存できましたので。  毎晩、自室で1人、パソコンで写真を各フォルダに分別する。 『使えそう』 『可愛い』 『ブレてるが消したくない』  そんな風に名前をつけて、しっかり番号を振り分けていく。  ああ、この作業たまらなく楽しいぜ。  早く次のプール取材、来ないかな。  連日、徹夜でそんなことを繰り返していると、すぐに一週間が経った。    ※  スマホのベルで目が覚めた。  着信名を見ると、ミハイル。 「ふぁ……もしもし」 『タクト? おはよ☆』 「ああ、おはよう。今何時だ?」 『え、朝の4時半☆』  朝じゃねーだろ。夜明けだ。 「んで、何の用だ?」 『今日さ、終業式じゃん』 「そうだったな。明日から夏休みってわけだ」  やっとバカな高校から解放される至福の時。 『それでさ。タクトはちゃんと今日の準備した?』 「準備? 登校に必要な物ならちゃんとリュックサックに入れてあるぞ」 『さすが、タクトだな☆ じゃあ、あとでいつもの電車でな☆』 「おおう……」  準備ってなんだ?  しかも、ミハイルのやつ。なんだかテンションが高い声だった。  夏休みになるから、毎日遊べるってことで嬉しいのか?  ま、家を出るまでしばらく、また仮眠を取ろう。    ※  朝食をとったあと、いつもどおり、小倉行きの電車に乗る。  二駅過ぎて、席内駅に止まる。  ホームの上で、一人の小さな少年が手を振っていた。  古賀 ミハイルだ。  迷彩柄のタンクトップに、薄色のデニムショートパンツ。  そして、なぜか背には大き目のリュックサックを背負っていた。  珍しい。 「おはよ☆ タクト!」  当然のように、俺の隣りに座る。  細くて白い脚をピッタリとくっけて。  思わず、ドキッとしてしまう。 「お、おはよう」 「今日の学校。楽しみだよな☆」 「え? なにがだ? ただの終業式だろ」 「宗像センセが言ってたゾ。一ツ橋高校だけだって。あんな特別な終業式はって」 「はぁ……」  なんのこっちゃ。  あれか、ヤンキーばっかりが通っている高校だから、殴り合いでもするんだろうか?  いやいや、さすがにそれはないよな。  ガチンコでも、俺はファイトできないひ弱な一般学生。  おてんてんで戦うってなら、まあ話は別だが……。  妙に上機嫌なミハイルが気にはなるが、登校に前向きなことは良い心がけというものだ。  鼻歌交じりの彼と共に、赤井駅で降りて、一ツ橋高校へ向かった。  校舎に着くと、なにやら騒がしい。  駐車場に大きなバスが一台、止まっている。  そこに生徒たちがたくさん集まっていた。  皆が皆、大きなカバンやトランクなどを抱えて。 「ん? どういうことだ……今日は終業式だろ?」 「そうだよ。だから、バスに乗って行くんじゃん」  ミハイルが目を丸くして言う。  俺が首を傾げていると、そこへ宗像先生が現れた。 「よぉ! 新宮に古賀も来たのか! えらいえらいっ!」  今日も酒くさい。  アル中が移るから、どっかにいってください。  しかし、今日の宗像先生は、装いがいつもと違う。  いや、確かに淫乱教師であることは知っているのだが、なんか違和感を感じる。  スカートはいつものように、超ミニ丈のタイトスカートに黒のストッキングとピンヒール。  問題は上半身だ。  頭に小さな帽子を被り、ふくよかな胸はジャケットで隠してある。  おかしい。  この破廉恥バカは、だいたい露出を好む。  ならば、汚いデカチチは放り出しているはずなのに……。  俺が怪訝そうに、先生を見つめていると、口を大きく開いて、下品な声で笑い出す。 「だぁはははっははは!」  相変わらず、うるせぇ!  そして、のどちんこが丸見えだ。  中身、ほんとただのおっさんだろ。 「どーした、新宮? そんなに今日の私のファッションが気になるのかぁ~」  嫌らしくニヤニヤ笑いやがる。 「違いますよ……」 「じゃあ、どうしてだ? この私で使いたいのか? 写真を撮ってもいいぞ」  誰が撮るか!  それを鵜呑みにしてか、隣りにいたミハイルがブチギレる。 「タクトっ!? 宗像センセの写真なんか撮って、何に使うんだよ!?」 「いや、撮らないし、使うこともないから……」  アンナモードで、たくさん撮らせておいてよく言うぜ。  いつも、お世話になってます。  ムキーッと猿のように、怒るミハイルを一旦放置して、話題を変える。 「宗像先生、一体どういうことですか? 先生、いつもの服装じゃないし、あのバスはなんですか?」  そう問うと、宗像先生はキョトンとした顔で返事をする。 「え、新宮……まさか、手紙読んでないのか?」 「手紙? なんのことです?」  すると、宗像先生はその場で「あちゃ~」と頭を抱えた。  それを聞いてミハイルも驚く。 「タクト! じゃあ、ちゃんと準備してないの!?」 「は? 準備って終業式のだろ」  あれ、俺がなにか間違ってる? 「だから、オレが朝、ちゃんと電話で聞いたのに!」  なぜか悔しそうに歯を食いしばるミハイル。 「どういうことだ……俺には全然わからんのだが」  状況が把握できず、混乱していると、ミハイルが半泣き状態で叫んだ。 「今日は終業式だから、バスでみんなで別府べっぷ温泉に行くのっ!?」 「ハァッ!?」  ちょっと、言ってる意味がわからない。  何故、終業式なのに、旅行するんだ? 「よくわからないのだが……それって泊まりなのか?」 「そうだよ!」  めっちゃキレてるよ、ミハイルママ。  泣いてるし……。  俺たちが言い合いをしていると、宗像先生が間に入る。 「悪い悪い。どうやら、新宮のことだけ、手紙を出し忘れてたみたいだ、てへぺろ♪」  舌を出して、笑ってごまかす。  お前の凡ミスじゃねーか。  ブチ殺すぞ、コノヤロー! 「え~ じゃあセンセ……タクトは着替えとかどうするんすか?」 「まあ……あれだ。私の下着でも使えばいいじゃないか。Tバックだから、お尻が楽だぞ~」 「そっか。なら、大丈夫っすね☆」  全然、良くない。  女もんのパンティーで、しかもTバックとか。 「しかし、宗像先生。なぜ、終業式だというのに旅行するんですか?」 「ああ……それはだな。本校特有の事情があってな。うちの高校は通信制だし単位制だろ。だから、今期で卒業する生徒もいるんだ。ごく僅かだがな。だから、卒業旅行も兼ねて、終業式は毎回、旅行をするようにしているんだ」  なにその終業式。 「じゃあ会場はどこでやるんですか?」 「昔はちゃんと、会館借りてやってたけど、もうめんどくせーだろ? だから、バスの中で今期は終業ってことにした。司会役の私はバスガイドさんも兼ねてる♪」  めっちゃ笑顔で酷いこと言っているんすけど。 「はぁ……じゃあ、今からバスに乗って、別府まで行くんすね……」  俺だけ知らされていない孤独さよ。 「とりあえず、早くバスに乗れ! 三ツ橋高校の校長に見つかったらヤバいからな」 「え、どういう意味です……」  なんか嫌な予感。 「野暮なこと聞くなよ。このバスは、全日制コースの部活で使うやつだ。遠征とかでな」 「それを無断で拝借したってことですか」 「新宮、パクったみたいな言い方するなよ。バレなきゃいいんだよ。こういうのは」    ふと、運転席に目をやると、ガタガタ震えた一ツ橋高校の男性教師が見えた。  確か現代社会の先生だ。  なぜ彼が、ハンドルを握っているんだ? 「宗像先生。運転席に現代社会の先生がいるんですけど……」 「あいつか、あのバカは知ってると思うが、本校の卒業生でな。私が雇ってやったからさ。こういう時使えるんだな、ハハハッ!」  そう言えば、バーベキュー大会の時も良いように使われていたな。  かわいそうに……。    

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