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 パチンコでボロ儲けした宗像先生は、 「ヒャッハー! 換金してくるわ♪」  とスキップしながら、店の奥にある謎の建物に直行。  俺は先生を待っている間、パチンコ屋の駐車場でスマホを確認する。  通知が酷いことになっていた。  アンナの怒涛のL●NEが112件も。  次にひなたから、電話やメールが数件。  かなり心配しているようだ。  返事だけでも打っておくかと、スマホのアプリを開き、メッセージを作成しようとした瞬間。 「おい、なにやってんだ? 新宮」  と背後から声をかけられた。 「あ、いや。宗像先生、ひなたやアンナに連絡を……」 「必要ない!」  そう言うと、俺のスマホを取り上げ、電源を強制シャットダウン。 「あ……」 「バカモン! これは没収だ。デート中に女性の前でスマホをいじるなんて、最低の行為だぞ? 取材にならないだろ……それこそ、あれだ。付き合っている女性の目の前で、エロ動画見て自家発電するぐらい失礼だ!」 「ええ……」  初めて聞いたわ、そんな表現。  俺はスマホを諦め、宗像先生の言う大人のデートとやらを、再開するのであった。  先生が次に向かった場所は、ドラッグストア『森林もりばやし』だ。  何か買い物をするのか? と訊ねたが、首を横に振る。 「ま、見ていろ。これが年の功というやつだ」  入口を抜けてすぐにある、カート置き場で立ち止まる。  積まれたカゴを一つ一つ持ち上げて中を確認する。 「ちっ、ないな……」  すると次は、カートを一台ずつ、出しては直してを繰り返す。 「ないな……」  なにかを一生懸命探しているようだ。 「宗像先生? なにか忘れ物ですか?」 「ああ。ドラ森は500円以上買い物をするとな。福引券が一枚出るんだよ」 「福引券? それがどうしたんですか?」 「たまに要らないって、捨てて行く客がいるんだよ」  ニヤリと怪しく微笑む。  乞食じゃねーか。  カート置き場を諦めた先生は、店内に入っても買い物はせず、また福引券を探し始めた。 「いいか、一番落ちている確率が高いのは、サッカー台だ。買い物終わりの客が商品を詰め終わったあと。捨てて行くんだ。10枚集めないとくじができないからって、諦める奴が多いんだよ。さ、新宮も探せ探せ」 「えぇ……」  俺と宗像先生はレジ近くで、コソコソと福引券を探す不審者と化してしまう。  ~10分後~ 「新宮、そっちはどうだ? 私は30枚もゲットしたぞ!」  よくもそんなに拾ったな。 「俺は2枚ぐらいですね……」  なにやってんだろ、俺。 「そうかぁ、じゃあ、あと8枚でくじが出来るなぁ~ よし、奥の手を使おう! レジの下やサッカー台の下を見てみよう!」 「う、ウソでしょ?」 「バカヤロー! これが大人の生き方ってもんだ。しっかり取材して覚えておけよ!」  そう言ってかがみ込むと、床の上で四つん這いになり、サッカー台の隙間に手を入れて、探し出す。  他の客から見たら、ケツをブリッとこちらに向ける痴女だ。  しかも、宗像先生はローライズのショーパンだから、ちょっと、はみ尻しちゃっている。 「う~ん……おお、あったぞ! 新宮、こっちこっち! お前も速く取れ!」  もう嫌だ。恥ずかしくて死にそう。  40枚も集めた宗像先生は満足したらしく、 「くじを楽しむぞ!」  なんて喜んでいる。  これって、犯罪なのでは?  どっかのマンガかアニメで、似たような事をしていたような……。  あ、アレだ。ジ●ジョのしげちーのスタンドじゃん。  宗像先生は今日のくじ引きのために、他にもくまなく探しまくったらしく、駐車場や近くの自動販売機の下も這いつくばって、福引券を大量にゲットしたと誇らしげに自慢していた。 「はーっははは! 見ろ、新宮! 100枚だ! ふっ、こんなに集めらるのは、私だけだな」 「でしょうね」  冷めた目で、アラサーの女を見つめる。  よく見れば、大半の福引券は、汚れたり、雨で濡れてグニャグニャに歪んでいるもので占めている。  これ、持って行くのかよ。恥ずかしい。  店内の奥にあるくじコーナーに向かい、宗像先生は、大量の紙切れをカウンターへと放り投げる。  若い男性店員が、数えるのに必死だ。 「ひゃ、100枚なので、10回くじを回せます……」  店員さん、拾っているのに気がついているだろ。めっちゃ、ドン引きじゃん。 「はーっははは! そうかそうか、新宮。今日は先生のおごりだ。お前が回していいぞ。その代わり、商品は全部先生がもらうからな!」  いらねーよ。  並べられている商品がそんなに大したもんじゃないもん。  ティッシュ、トイレットペーパー、シャンプー、タオル、アメとか……。  俺は抽選器を計10回も連続で回した。  こんなに回すの、生まれて初めて。  玉が出る度に、店員がベルを鳴らす。 「一等大当たり~! トイレットペーパーでーす!」  なにこれ、全然うれしくない。 「……」  無言の俺に対し、宗像先生はその場でジャンプして大喜び。  もちろん、バカみたいにデカい乳がブルンブルン震えて。 「しゃあーっ! これでトイレに困らないな!」  その後も、シャンプーが当たったり。 「よっし! でかした、新宮。これで髪のパサつきが、しばらく無くなるぞ!」 「……」  なんか一周回って、この人が可哀想に思えてきたのは、俺だけでしょうか?

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