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「じゃあミハイルさん、ゲームでもしますか?」 「え? ゲーム……なんだそれ?」  まさかとは思うが、ミハイルの家はそこまで貧しいのか?  それとも余程の上級家庭なのか……想像に値しない。 「古賀、お前ゲームしたことないのか……」 「鬼ごっことか?」  マジなのか……。  ミハイルさん家、かわいそすぎ。 「なんてことですの!? つまりはミハイルさん『バミコン』や『ブレステ』すら触れたことがないということですか?」  ならぬ……触れてはならぬぞ、かなでよ。 「うん☆ オレんち、ねーちゃんが『外で遊べ』っていうタイプだからさ」  あー、クラスでたまにいるよな……。  そっち系ね。 「つーかさ、かなでちゃん……その『ミハイルさん』ってやめてくんねーかな? 年もあんまかわんないし……」  なにやら歯切れが悪いぞ、ミハイル。  そんなに巨乳のJCに緊張しているのか? 「では、わたくしめはなんとお呼びすれば……」 「じゃ、じゃあ……ダチからは『ミーシャ』って呼ばれてっからさ……」 「ではミーシャちゃんで構いませんね」  え? なんでちゃん付け? 「う、うん、タクトの妹だから、いい……よ?」  ミハイルさん、ひょっとしてこのクソきもい巨乳JCにときめいてます?  もらえるなら、もらってやってください。  兄の切なる願いくさ。 「ではミーシャちゃん、一緒に遊びましょ♪」 「うん☆ ……ただ! タクトは『ミーシャ』って呼ぶなよ!」 「む? なぜだ?」  なにこれ? いじめってやつを体験しているんですかね。 「そ、それは……かなでちゃんが……女の子だからだ!」 「は?」  意味がさっぱりわからん……しかし、ミハイルさんよ。  こいつは女の子というカテゴリ化するには故障しすぎているぞ? 「よくわからんが俺は今まで通り、古賀と呼べばいいのか?」 「いやだ!」  ダダっ子だな……わがままはいけません! 「つまりどうすれば、お前の承認欲求は満たされる?」 「オレのことは……下の名前で……」  つまり男同士は『ミハイル』。女からは『ミーシャ』で通しているわけか。  なるほど、府におちた。 「認識した、改めよう。では、ミハイル」 「う、うん! なんだよ、タクト……急に……」  なぜそんなに顔を真っ赤かにしている?  かなで、喜べ。腐ったお前にようやくモテ期がきたぞ、知らんけど。 「じゃあ、かなで。お前が提案者なんだからゲームソフトは自分で選択しろ」 「もちろんですわ。おにーさま」  そういうと誰でもお気軽に遊べる大人気パズルゲーム『ぶよぶよ』を持ってきたかなで。 「さすがだな、かなでよ。これならゲームのいろはを知らないミハイルでも余裕だろ」 「デヘ♪ ですわ」  キンモ! ウインクすな。  かなでが『ボレステ4』にディスクを挿入……。  この時、妹のかなではデヘデヘと笑う。  ソフトを自動でゲーム機が吸い込む動作がたまらないそうだ。  我が妹にして最大の変態である。 「さあていっちょやるか! ですわ♪」 「うん☆ じゃあ、最初はオレとかなでちゃんでいいか?」 「構わんぞ。どうせ優勝はこの天才だからな」  鼻で笑う俺氏。 「んだと!? かなでちゃん、タクトって強いのか?」 「強いですわ……この御方は……」  顔を歪ませて拳をつくるかなで。 「フッ、せいぜい足掻いてみろ、ミハイル」  もうすでに、対戦は始まっている。  かなでは、連鎖まちというやあつである。  いっぽうのミハイルは、ガチャガチャと乱暴に扱う。  これは稀に幼少期に見られる子供と同様の行動に近い。  ビギナーというやつだ。  だが、なぜかそのプレイでも連鎖がかなで以上に優勢になりつつあった。 「うわぁ! 負けましたわ」 「やったぜ☆」  すまん、今の言い回しだと『別のこと』を考えてしまうのは俺だけだろうか?  すかさず、俺がコントローラーをうけとる。 「真打の登場だ」 「よおし☆ 負けないぞ、タクト」  数分後……。 「なん……だと!」 「やりぃ!」 「この天才、琢人が負けただと……」 「どうだ? タクト?」  ない胸をはるな!  いちいち、おタッチしたくなるだろ。  そうして夕暮れになると、ノックの音もなく扉が開く。 「晩ご飯できたわよぉ!」 「か、母さん……いつもノックをお願いしているだろ?」 「なに? オナってたの?」 「ちゃうわ!」  我が母親ながら琴音さんは今日もブッ飛ばしすぎなのである。 「ミハイルくんもいっしょに食べていきなさい」 「う、うっす」 「わーい、パーティですわ♪」  これってなんの罰ゲーム?  明日、仕事(新聞配達)があるんですけど?
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