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 俺はわざわざ、文句だけ言いに一ツ橋高校へと出向いた。  電車代はもち自腹、返してくれますかねぇ。  今日は平日なので全日制コースの三ツ橋高校は授業中だ。  俺が私服なもんで、校舎を歩いていると制服姿のリア充どもが「なんだ、コイツ?」みたいな一瞥しやがる。  一ツ橋高校の生徒だ! という顔で歩く。  廊下を何食わぬ顔で歩いていると明らかに校則違反のミニ丈JK。三ツ橋生徒とすれ違う。  いい生足、痩せすぎず筋肉質なところが健康的で素晴らしい。 「ちょっと、そこのきみ!」  振り返るとそこにはボーイッシュなショートカットの女子がいた。  いかにも部活やってますってかんじの活発そうな子だな。  日に焼けていて、スクール水着とか着せたらエロそう。 「え、俺?」 「そうよ、きみよ!」  きみとかいってけどさ……お前年下だろ? 敬語使え。 「なんか用か?」  俺は「そのケンカ買ってやる」と彼女と真っ向から向き合う。  ちょっと照れちゃう。褐色で目も大きいし、筋肉質なせいか胸もあまりない。  まあまあ好みかも~ 貧乳スク水、大好物! 「あのね、言いたいことはたっぷりあるわ! あなた、なんで私服で登校しているの?」  そう来たか。 「俺は三ツ橋の生徒ではない。通信制の一ツ橋の生徒だ」  すると彼女は顔を真っ赤にして、うろたえる。 「ウ、ウソよ! そう言ってたまに私服で来る生徒とかいるのよ! あなたは風紀を乱しているわ! それに不法侵入とも限らないわ」  いや、お前のミニ丈スカートの方がよっぽど男子の風紀を乱しているがな。 「あのな、俺は暇じゃないんだ……」  そう言うと、彼女に背を向けた。 「待ちなさい! 証拠を見せなさい!」  は? 俺は高校生ですけど、男ですけど、股間でも見たいのか? 「なんだ、俺を小学生と疑っているのか? そんなに俺の股間を確認したいのか?」  JKは耳まで真っ赤になる。 「バ、バカ! 生徒手帳よ!」 「なんだ、そっちか……」 「普通そうでしょ!」  俺はからっていたリュックから生徒手帳を出す。  まあなんだ、この生徒手帳とやらに俺は長年苦しめられていたのだが、1つだけ有効利用できるぞ。  映画館だ。今まで大人料金だったからな。学生として割引されるのが最高だ。 「ほれ」 「ん~」  彼女はじっと俺の生徒手帳を見る。  そんなに人の証明写真見つめないで、惚れちゃいそう。 「あ!」  思い出したかのように、彼女は姿勢を正す。まるで軍隊のようだな。 「あ、あの! 年上の方とは思いませんでした! 失礼しました!」  そう言って気まずそうに、彼女はその場から立ち去ろうとしたが、そうはいかん。  フェアじゃない。 「待てよ……お前、俺にだけ個人情報を晒させる気か」 「な、なんのことでしょう……」  その振り返り方は錆びたロボットだな。油をさしてやるから服を脱げ!  色々と確認してやる。 「お前も見せろ、生徒手帳。俺に“不法侵入”とかいう疑惑を立てたんだ。お前が不法侵入者だったらどうする?」 「はぁ! 私は見ての通り、正真正銘のリアルJKで、三ツ橋高校の生徒ですよ」 「わからんだろ、ただの通りすがりのJKのコスプレをしたおばさんかもしらん」 「そんなやつどこにいるんですか!」 「俺の知り合いでいるんだよ。アラサーのくせして、子供服を平気で着用しているバカ女が」  バカ女とは度々、劇中に現る『ロリババア』の担当編集のことだ。 「ええ……」 「まあとにかく見せろ」 「知ってどうするんですか! ま、まさか私のことを狙って……」  そうやって、胸を隠すぐらいならミニ丈になぞすんな! 男は勘違いしやすい生き物だということ再確認しろ。  自意識過剰な子だ。こういう子、ダメネェ~ ワタシ、キライネ~ 「それは違う。不平等だと言いたいのだ。俺だけ見せて、お前が見せないというのがだ」 「は?」 「俺は物事を白黒ハッキリさせないと気が済まない性分なのでな」 「白黒って……ま、まさか! 私の……見たんですか!?」  そう言って、ミニのくせしてスカートの裾を少し下ろす。  白黒のパンツってなんだろ? シマパン? 「お前の脳内はお花畑か? 勘違いだ。立場が平等であるべきだろう。俺とお前はコースさえ違えど、同じ五ツ橋いつつばし学園の生徒だ。そこはちゃんとしっかりさせろ」 「わ、わかりました……」  そう言うと、JKはブレザーの胸ポケットから生徒手帳を取り出した。 「ふむ……」  証明写真の頃はまだロングヘアーか。今のショートカットの方が俺好みだな。 「な、なんですか? もう良くないですか? 長くないですか?」 「まだ見終わってない」  名前は1年A組、赤坂あかさか ひなた……スリーサイズは書いてないよな……。 「赤坂 ひなたか、認識した。今度からは気をつけろよ」  俺がそう名前を呼ぶと、赤坂はなぜかビクッとした。 「は、はい……」 「お前の性格も中々におもしろいな。いいセンスだ」  一度でいいから言ってみたかった。 「いい……センス?」  お前も言いたかったのか。 「若いのに大した根性だと褒めている。お前も曲がったことが大嫌いなタイプだろ?」  赤坂は目を丸くして俺を見つめている。 「なんで……わかったんです?」 「この天才、新宮 琢人がそうだからな……」 「そう、ですか……」  なぜか彼女は言葉を失っている。  しおらしいところもあるのね……あ、女の子だから聖水か!?  これは撤収してやらねば! 俺ってばジェントルマン♪ 「赤坂、お前は女だ。俺のように衝突ばかりしていたら、いつか身を危険に晒すぞ? もうこういうことはやめとけ」 「な、なんで新宮先輩にそんなこと言われなきゃ……」  年上って分かったからって、先輩呼ばわりすな! 仮にも身分的には同級生だろが! 「忠告はしたからな、じゃあな!」  そう言って、俺は振り返らずに手を振った。  やべっ、今の俺って超カッコよくない? 惚れさせてしまったかも?
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