悲鳴。驚愕、困惑。背後で、数人の部下が倒れた。 なんだ! とデュゼが辺りを見回す。 ――すぐに。理解した。 「アセドアアアッ!」 と私は叫ぶ。 応えるように、二条の光。またも背後で、苦鳴が聞こえた。 振り返るこちらの視界に、首元を裂かれた二者の死体。鋼糸? いや、絶命までは一瞬だ。私は、部下の防具を剥ぎ取った。予想通りに、口蓋から脳天へ、ぽっかりと穴が開いている。 わざわざそのあとで、首を切って退けている。私は、憎悪に満ちて、奴を探した。こんな時 にまで――。私怨で部下を巻き込むのか。 仲間が次々と倒れ、折り重なるように山を成す。 それともただの趣味か? 私は、彼に対して声を荒げた。 「出てこい! この場で決着を付けてやる!」 だが辺りの木々に、私の声は空しく霧散し、溶ける。 村へ! とデュゼが促した。 ゼダスに報告を! と私が付け足す。意味はないかもしれぬ。あの男は、この変質者を高く買っている。 部下達が次々に森を抜け、私は殿を務めながら、それに続いた。 なんだ? なんだこの光景は? 私は村を瞻望して驚愕した。 よお。遅かったじゃねえか、とゼダスが笑う。 殺戮。の……臭い。 私は激昂してゼダスを問い詰めた。 「なにをやっているっ! ゼダスッ、作戦が違うではないか! この村は! この村は武力を持たぬ! 人々を捕らえ、自由を禁じ、それで終わりではなかったのか? 我々の留まる間のみ、ここを根城とするのではなかったのか!」 襟首を掴んで、私は呻いた。 「なにを甘いことを言ってるんだ、ルイセール。万が一、情報が外へ漏れてみろ? 俺達は志半ばで国の奴隷だ。いいのか? 白の主に報復ことができなくても? 俺だって好きでやってる訳じゃねえ。すべてはお国のためさ。――今の国家を打倒ことが。この国の、人々のためになるんだ」 にやり、と下卑た笑みを作り、ゼダスはこちらの肩に手を置いた。 「お前は、非情な、その上、冷酷な白の主を。俺はこの国そのものを。それが互いのためになり、しいては未来のためになる。その目的の一致で、俺達は共同戦線を張っている。違うか? 相棒?」 ゼダスの手を、払う。 目的の一致だと? 私は、こんな惨状を望んではいない。 革命に血は付きものさ、とゼダスは意に介さない。もう殺しちゃえば? とトキシトラ。 彼女の方に一瞥をくれて、私は村へと歩を進めた。
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