ゼドウィックに花束を 
嘘を囲むテーブル 十七

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 抗戦を試みた兵士は縛り上げられ、見せしめとして高い場所に吊るされる。  戦功を立てる気でいた三下が、それを投石して謗る。  彼を殴り倒し、私はゼダスを探した。  包囲網も完璧だったらしく、薄汚れた長衣の者が、目の前を通る。  一人。二人。三人。十四人。別の方角からもまた、一握り。  犠牲者は、出ていないようだった。今の所。  撫で下ろし、同時に、対処の的確さに感嘆した。  衣服の埃を払い、乱雑に散らかった一角を目指す。半狂乱の住民が、噴煙を背に罵詈雑言。もっともだ。私は目を伏せた。  彼らからすれば、突然に訪れた災禍だ。不平と不満を隠せない。それらを取り仕切るのは、また|野卑 《やひ》な相貌の一団。生涯を通じて関わりたくはないだろう。くわたつ住民を横に、さらに奥を目指す。街の中心部は――。鳩のある場所は、もうすぐだった。  自身にとっては懐かしく、唾棄したい景色。  あの時も、ここは真っ先に湖へ逃げた。街を監視する機構の社。王都への報告を常とする正義。本 来ならば、その身を盾に住民を守らねばならぬ者達は、その責務を忘れ、文字通り己が保身に走った。  巨獣の存在を放置し、我先にと湖へ向かったのである。  苛立ちを。  隠せない。  ゼダスは、真っ先にここを抑える筈だった。鳩は、発たせただろうか。王都へと、この惨事が伝わらねば、意味はない。  退路を断たれた衛兵が、武器を投げ出し命乞いを繰り返していた。  ゼダスは、それらを無視して縛り上げ、塔状の建物に括り付ける。部下に命じて。  私は、劫初ごうしょのできごとに蓋をした。それらを、ここでつけてもなににもならないし、できれば王都の騎士団に取っておきたい。 「片は付いたな」  とゼダスは首を回した。  住民用にバグバレスとフィルモルーニの隊を残し、あとは集結、というのが次の指令だった。そんな名前の連中だったのか、と一人腕組み。  こちらの姿を視認し、ゼダスは剣を鞘に収めた。 「よう、右腕。割と早かったな」  とにやける。 「統率が取れていなかったな。予想通りだが」  わざと、衛兵に聞こえるように、発言。命だけは助けてやる、と別の一人が冷やかした。 「俺としてはこの儘祝杯を上げたいんだが――そうだな。隊の頭どもを集めてまだ説明しなきゃなんねえ」  ゼダスは、左手を振って部下に指示。すぐさま数人が、伝令を持って走る。 「鳩は?」 「発った」 「予定通りだな」 「ここからが正念場だ」  我々のやり取りに、丁度いい屋敷がありました、と報告が横槍。恐らく、会議用に探させていたのだ ろう。  片手を上げて、ゼダスは応える。

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