頭目連中は。事態を予期していた。それを見越して、使いを立てた。とどのつまり、あの若者は不要な存在として扱われたことになる。あるいは、自身もその一人か。だが、それを問い質す必要は、今はない。 もしかしたら、ただ本当に単純に、心配してトキシトラを遣したのかもしれない。ひょっとすると、アセドアと私、どちらが生き残るのか、見定める腹か。 軽く頷いて、顎に手を当てた。 村の入口を潜ると、二・三の囚人が私を見た。 アセドアの隊の者ではあるから、油断は決してできないが、それでも彼らが何事か口にするのを、私は黙って聞いた。 内容は、自分達の隊の長はどこに居るのか、といったことだった。彼らも、所在がないのだ。この一団の中に。 不和が周知の事実である私という存在は、彼らからすれば、最もアセドアと接触できる相手、という訳だ。 言伝でも頼みたいのか、と考える。どの道別のやり取りに代わるだろうが。 後方で、彼らは遂に何事も起こさず、自らの家屋へと帰る。 それを確認し、私は村で最も大きい住居へと入った。 室内の一角では。頭目達が酒を酌み交わして暖を取っていた。 ゼダスを始め、アセドア以外のすべての人間が揃っている。 私は居回る一同を見渡し「遅くなって済まない」と腰を下ろした。 ゼダスは、こちらに視線を向けると、 「なに、大まかな確認をしとくだけだ」と笑った。 妙に嬉しそうに、顔も覚えていない男が口を開く。 決着は? 知るか、と一言ずつ発し、互いに白湯に口を付ける。少し、冷えた。適度に火を楽しみ、体温を上げるため、再度湯冷まし。 「知ってのとおり」 ゼダスが一行に声を掛ける。いつの間にかトキシトラも横に居る。 「明日からが計画の本番だ。今日は、ゆっくり休んでくれ」 「朝まで飲む癖に」 「流石だ、ゼダス」 口々に応和。もう酔いが回っている。理解し難い雰囲気ではあったが、こちらはこちらで考えごと。 いつも。思うことではあるのだが。私はこういった場に馴染めない。それは、決して醜態を晒したくない、ということではないのだが、周りの声に反比例して、ぽつんと取り残された感覚を覚える。決まって、その時は過去の悪夢を思い出し、ついでに自分を叱咤する。嫌な奴だ、と、詰まらない奴だ、と決められるのはかまわない。もう慣れたし、いまだに酔いは愉快ではない。 愉快ではないといえば。 私は、悪い癖だとは思いつつ、再び過去を顧みた。
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