ゼドウィックに花束を 
嘘を囲むテーブル 十四

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 頭目連中は。事態を予期していた。それを見越して、使いを立てた。とどのつまり、あの若者は不要な存在として扱われたことになる。あるいは、自身もその一人か。だが、それを問いただす必要は、今はない。  もしかしたら、ただ本当に単純に、心配してトキシトラを遣したのかもしれない。ひょっとすると、アセドアと私、どちらが生き残るのか、見定める腹か。  軽く頷いて、顎に手を当てた。  村の入口を潜ると、二・三の囚人が私を見た。  アセドアの隊の者ではあるから、油断は決してできないが、それでも彼らが何事か口にするのを、私は黙って聞いた。  内容は、自分達の隊の長はどこに居るのか、といったことだった。彼らも、所在がないのだ。この一団の中に。  不和ふわが周知の事実である私という存在は、彼らからすれば、最もアセドアと接触できる相手、という訳だ。  言伝でも頼みたいのか、と考える。どの道別のやり取りに代わるだろうが。  後方で、彼らは遂に何事も起こさず、自らの家屋へと帰る。  それを確認し、私は村で最も大きい住居へと入った。  室内の一角では。頭目達が酒を酌み交わして暖を取っていた。  ゼダスを始め、アセドア以外のすべての人間が揃っている。  私は居回いまわる一同を見渡し「遅くなって済まない」と腰を下ろした。  ゼダスは、こちらに視線を向けると、 「なに、大まかな確認をしとくだけだ」と笑った。  妙に嬉しそうに、顔も覚えていない男が口を開く。  決着は? 知るか、と一言ずつ発し、互いに白湯さゆに口を付ける。少し、冷えた。適度に火を楽しみ、体温を上げるため、再度湯冷ゆざまし。 「知ってのとおり」  ゼダスが一行に声を掛ける。いつの間にかトキシトラも横に居る。 「明日からが計画の本番だ。今日は、ゆっくり休んでくれ」 「朝まで飲む癖に」 「流石だ、ゼダス」  口々に応和おうわ。もう酔いが回っている。理解し難い雰囲気ではあったが、こちらはこちらで考えごと。  いつも。思うことではあるのだが。私はこういった場に馴染めない。それは、決して醜態を晒したくない、ということではないのだが、周りの声に反比例して、ぽつんと取り残された感覚を覚える。決まって、その時は過去の悪夢を思い出し、ついでに自分を叱咤する。嫌な奴だ、と、詰まらない奴だ、と決められるのはかまわない。もう慣れたし、いまだに酔いは愉快ではない。  愉快ではないといえば。  私は、悪い癖だとは思いつつ、再び過去をかえりみた。

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