翌日の夜、僕らは事務室のソファーに腰掛けて、訪れた海堂警部と対面していた。 「タカヒロさんの肩の件だけどね、本当だったよ。診察した医師に話を聞いて、カルテとレントゲンを見せてもらったんだけどね。確かに、第二の事件時の夜に診察を受けてるよ」 海堂警部は大きな背中を丸めながら厳しい顔で語る。 「怪我は本物だったんですね」 ユリは両手を膝の上で重ねながら、海堂警部の顔を直視していた。 「そうなると、問題は何時頃どこで怪我をしたかよね」 マリは腕組みをしながら俯いていた。 「その通りだね。犯行中、永田と格闘になった際に痛めた。それを否定する材料は今の所ないんだよ。だから、犯行を否定する証拠にはならないね」 そういうことか。タカヒロさんの肩の怪我は仮病ではなく、本当に痛めていた。 だけど、犯行前に痛めた証拠も無い訳だ。 「それと、事件と関係あるかどうか分からないけどね。不審者の目撃情報が寄せられたよ」 「不審者?」 「どんな人なの?」 「身長は高い方。体格は細身。日付は1月15日。時間は午後9時過ぎ。場所は現場から10キロ程、離れた田舎の山奥。何か筒状の物を肩に掛けて、山に入っていく所を見たらしいんだ。滅多に人が寄りつかないような場所だから、目撃者の男性も不審に思ったらしくてね」 海堂警部は胸ポケットから警察手帳を出して開く。メモが書いてあるらしく、手帳を見ながら喋る。 ユリは左手の人差し指を顎に当てながら考え込んでいた。 何か思いついたのか、海堂警部を見上げた。 「警部さん、15日って昨日ですよね?」 「そうなんだよ。だから、もしかしたら関係があるかもしれないと思ってね」 「筒状の物って何かは分かってないんですか?」 「そうだね。筒状の物としか言ってなかったからね」 「材質も分かりませんか? 鉄とかプラスチックとか布とか」 「それも分かってないね」 「うーん、筒状の物体か」 相変わらず、ユリは左手の拳を口元に当てながら考え込んでいた。 筒状の物体か。 筒状の物体って、どんな物だろう? この目撃証言は、この死神事件と関係あるのかな? 山へ入っていった不審人物は、何者なんだろう?
コメントはまだありません