Primitive Story Side L〜語られることなきもう一つの始まり〜
第零章 第二節 数奇な運命を巡る旅の始まり

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それは俺が保育園の年長の時のことだ。俺はその当時、既にイジメにあっていた。とある1人の暴力的な男から度重なる暴力を受けていた。年長の時点でイジメとはそいつも未来が危ぶまれるだろう。  そして年長の運動会。その日最後の競技である徒競走の直前、俺はそいつにまた殴られていた。足を何度も蹴られ、あまりの痛さに本番走るときに全力が出せず悔し涙を流しながら走った。幼いながらに俺はその心に年齢に似つかわしくない感情を抱いた。だがそれが一時的にその扉を開いた。涙で前がほとんど見えていないにも関わらず、幼い俺は今では考えられない景色を目を通して見た。ほんの一瞬、ゼロコンマ1秒にも満たないその景色は緑豊かな大地に空を飛ぶ雄々しき翼を広げた真の龍の姿。俺は一瞬、その光景に目を奪われた。だが直後に、足の痛みで現実に引き戻され、そしてその反動か大激痛で気絶した。 その後、俺に暴力をしていた男は叱られ、以来俺のことを睨むだけになった。 そして時は経ち、ことが動いたのは小学四年生の時。その年、俺は様々な不運と変化に巻き込まれた。まずその一年間、俺は1ヶ月に一度のペースで体のどこかの骨を折っていた。年中、体のどこかに包帯を巻き、体育は見学。つまらないことこの上なかった。そして今思えばなぜそんなことをしていたのかわからないが学年の女子たちに告白しまくっていた。フラレたら新たに告白する。完全に最低の行動である。そしてある日、ある女子に初めてビンタされた翌日、ある男が俺を煽った。煽り耐性がなかった当時の俺はそいつに殴りかかり喧嘩。校庭まで行き、止める同級生を殴り飛ばし、まるで化け物に取り憑かれたように暴れた。最終的には教師たちに捕まり、落ち着いた。だがその後が問題だった。学級集会が行われた。そして学級集会で俺だけが全員の前で頭を下げることになった。その時の俺は屈辱を味わった。確かに俺が一番暴れたのは間違いない。だが、あいつも俺との喧嘩を止められそうになって他のやつを殴り飛ばしていた。なのに俺だけが謝罪させられた。行き場のない怒りに顔を歪めた。その怒りは収まるところを知らず、俺の怒りはついに恨みへと至る。だがその恨みを感じ取った教師が放課後、俺を呼び出しあろうことかハンマーを取り出し、机をぶん殴り、俺の顔の横を通り過ぎるようにハンマーを投げて叱った。今思えば恐喝として教育委員会に言えるだろう。その恐怖に当時の俺はすっかり恐れをなし、その心を閉ざした。  それから数ヶ月した冬休み。家族と旅行に行った。当時の俺は家族にも心を開いておらず、だからと言って明らかな変化は余計な怒りを買うだけだとわかっていた。小学一年の頃から既に俺は親からそういう教育をされてきた。もはや俺は両親の奴隷である。  そしてその旅行先の旅館に泊まった深夜、それは起きた。俺は一度寝たら目覚めないタイプだった。だが、その日はなぜか起きた。今思えばそれは起こされたと言うべきだろう。  目を覚ますとそこは真っ暗な空間だった。だが自然と何か大きなものがこちらを見ていることがわかった。すると、ズシンズシンと音が近づいてくる。そしてその大きな龍の顔が目の前に現れた。息を呑む俺、見つめる龍。そして口を開けた龍に俺は飲まれた。はずだった。 目を覚ますとそこは旅館。既に朝日が登っていた。その時は夢かと思ったがそれが違うことにすぐ気づく。  冬休み明け、学校に行くといつもどおり俺の周りには誰も来ない。あの日から既に俺は孤立していた。休み時間も1人、外で遊ぶ子供たちを見る。その日もいつもどおり外を見ようとしたとき、校庭に変なものが書かれていることに気づいた。それは白と黒をそれぞれ基調とした顔を合わせる龍だった。それを見た瞬間、頭の中にそれは浮かんだ。俺はその手順通りに目を瞑り体の内側からその力を引き出す。そして手で形作り呪文を唱えた。 「『ヴァニシングロック』」 次の瞬間、絵が光りそこから2つの光が俺の中に入った。その瞬間、体の底から力が湧いてきた。これまで感じたことのない万能感。その時、俺はかの者たちの存在を認識した。 それから3年後の中学1年生の頃、数多の異形の魂を封印から解き放ち、体内に宿した俺はついに自分の内側に眠るその存在を呼び起こした。それがフーズである。 フーズは元々、1つの生命体だった。だがある戦いの中で3つに分離、それぞれが窮地に立たされた。そしてフーズたちは残された力でその戦いをある意味で終わらせ、自らの力で作った器を未来に生み出すことで時を待つことにした。その器の柱としてフーズはその魂を俺の中に封印したという。それから俺達はペースを上げて封印の解除を進め、残るフーズと同等の存在である2体を探した。その中で俺は自分の正体や世界の真実の断片を知ることになった。

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