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『藤宮ルミ選手! ここまで勝敗は4勝0敗! 後、4勝でBBB級トリプルバトルに昇格だァ――ッ!!』  毘沙門館VS星王会館の団体戦のメンバーとして勝利したルミ。  強襲の巨人、シーム・シュミットに勝利して1勝。  そして毘沙門館チームの勝利により、WOAから特別に追加勝利ボーナスとして1勝を得ている。  つまり、BB級ダブルバトルでルミはここまで4勝している。  BBB級トリプルバトルへの昇格条件は8勝以上の勝ち越し。  順調に無敗で来ているルミ、実況者のいう通り〝4勝〟で次のステージへと上がれるのだ。  さて――今日の相手に勝ち、5勝を得るかどうかであるが……。 『今宵の相手は元ジョージア陸軍! グリア・レヴァッ!!』  グリア・レヴァ27歳――東欧のジョージア陸軍に所属していた組み技の名手。  元々軍隊で相撲、柔道、レスリング、サンボの技術をベースに殺人術の研究と指導をしていた。  今回のORGOGLIO参戦理由は単純明快。己の格闘技術を機械格闘で試すためだ。 『本日勝利すればBBB級トリプルバトル昇格の条件が整うぞォ!』  ここまで7勝0敗と無敗のペース、ルミに勝利すればBBB級トリプルバトルが決定する大事な試合である。  専用機はパワー型BU-ROADザザ。  ジョージアの国旗をイメージにした赤と白を基調、肩や胴体、脚部には強化パーツが装着され丸みを帯びている。 「空手屋ばかりで退屈してただろう」  ルミのモニターには傷顔の男が映っていた。  髪は黒髪で組み技の選手に相応しいガッシリとした体型だ。  この男がどうやグリアらしい、ルミに対して自信満々に嫌味ったらしく言った。 「データによると打撃系ばかりが相手だったようだね。さぞやりやすかっただろう?」 「どういう意味だい?」 「打撃などガキのケンカ――どいつもこいつも、私の完成された〝投〟と〝極〟の前では無力だったのさ」 「自信満々だね」 「お嬢さんもどうやら私と同じ組み技型グラップラーだ。お互いに仲良く組み付こうじゃないか」 「セクハラ発言だよ」 「気に入らないかい?」 「言っとくけど……あたしの得意はこれさ」  そう述べるとルミは右拳を突き出す。  その動きと同時に旋風猛竜サイクラプターの右腕も動く。 「突きパンチか」 「これであんたをブッ飛ばす」 「面白い……」  両機は間合いを取り構える。  遠隔で操作するBU-ROADであるが、両機から闘気のようなものが放出され……。 ――グオッ!  互いの闘気をぶつけ合い……。 「BU-ROADファイト……レディーファイツッ!!」  審判のリリアンの合図により試合が始まった。 ○ 中層リーグ:BB級ダブルバトルワンマッチイベント “美しすぎる古武道娘” 藤宮ルミ スタイル:古武道藤宮流 スピード型BU-ROAD:旋風猛竜サイクラプター スポンサー企業:シウソニック VS “黒海の極め技ソルジャー” グリア・レヴァ スタイル:軍隊格闘術 パワー型BU-ROAD:ザザ スポンサー企業:ゼロボルド (どう攻めてくれようか)  グリアが操作するザザは直線的には攻めず、迂回しながら様子を見ていた。  腰を落とし、開手で構えるその姿はまさに組み技型グラップラーらしいフォーム。  下手に間合いを詰めると関節技により四肢を破壊されるであろう。  特に旋風猛竜サイクラプターはスピード型のBU-ROADである。  パワーではザザに分があるのは間違いない。  いつもの如く〝水流れの構え〟で出方を伺っていた。 (口だけじゃないようだね)  ルミはグリアを強者であると認識していた。  構えで理解わかる。  リズムで理解わかる。  間合いの取り方で理解わかる。  打撃を繰り出して攻めてもよいのだが、考えなければならない。  また、安易に渦潮ストロームを起動させてはいけないことだけは理解わかる。  組み技が得意なグリアのテリトリーに入るからだ。 「思ったよりりずらいね」  ルミは小さく呟いた。 ――キュイン……  スタジアムは機械音だけが流れる。  静かである――静かすぎる立ち上がりである。 「おーい! どっちも寝ているのか!」 「さっさとやれよ」  アルコールを飲んだらしい質の悪い客が野次を飛ばす。  それはまるでエラーをしたプロ野球選手を責め立てる光景に似ている。 『ここまで大きな動きはありません! それは嵐の前の静けさか!?』  実況の言葉通り、ここまで大きな動きはない。  そして、嵐の前の静けさ――正しい、実に正しい表現である。  何故ならば……。 ――ギュイイイン!  先に動いたのはザザ――つまりはグリアだ。 『う、動いた! これはブースターを機動だ!!』  脚部に取り付けたパーツはブースター。  出力はルミが対戦したガッチマンヘッドよりは劣るが、近い間合いを即座に詰めるにはこれで十分。 「ハァッ!」  繰り出したるは掌底――いや鉄砲だ。 『つ、突っ張りかァ!?』  組み技としての相撲を研究したグリアなら出して当然の技。  ブースターでの推進力とパワー型BU-ROADザザから繰り出される鉄砲。  当たれば大ダメージは免れない。 (単調だね――クレバーそうなアンタにしては)  だが、猪突猛進の攻撃は対応しやすい。  防御の型である〝水流れの構え〟を取る旋風猛竜サイクラプターにとって好都合だ。 (宣言通り……突きでキメさせてもらうよ!)  狙うは当然頭部。  縦拳で振り抜けば顔面を完全破壊出来ることは間違いない―― ――シュッ!  はずであった。 「……ッ!!」 「貰った!」  ブースターでの突進と鉄砲はおとりだ。 「隠しアーム起動ッ!」  ザザの背中から何かが飛び出した。  そうグリアの目的は別にあったのだ。 ――ガチッ!  ザザの背中から飛び出したのは二つのアーム。  このパワー型BU-ROADの隠されたギミックである。  旋風猛竜サイクラプターの両腕をガッシリと持っていた。 「な、何だこれは!?」 「驚いたであろう! これで両腕は使えまい!!」 ――ギリ……ギリ……  ザザの隠しアームが旋風猛竜サイクラプターの両腕を締め上げる。  ルミは何とか振りほどこうとするがどうすることも出来ない。  機体の出力が違う――パワーに差があるのだ。 「こんなの反則だろ」 「反則ではない。これがBU-ROADバトルであることを忘れたか」 「ド〇クエのアームラ〇オンかよ!」 「お喋りはここまでだ! 小娘ッ!!」  ザザはそのまま押し倒そうと胴体部へとタックルへと移行する。  ここからマウントポジションを取り、殴るか関節技を極めるか……。 (他愛もない)  操縦者であるグリアは思った。  所詮は空手屋ばかりを相手にしてポイント稼ぎをしてきた女。  技術、経験で私に勝てるはずがないと―― ――バ"ギ"ャ"ッ"!! 「ぐぶッ!」  胴体部に痛みが走った。  横隔膜や胃が押し上げられ、表現のしようのない苦痛が全身を駆け抜ける。 「グ"ハ"ァ"?!」  操縦ルームにいるグリアは嘔吐物を撒き、のたうち回った。  まさか私が――グリアは己の敗北を確信していた。  そう試合場では―― 『な、何ということでしょう!大逆転勝利だ!!』  タックルの瞬間、ルミは巴投げの要領で両足を腹部に叩き込んだのだ。  ゼロ距離で押し上げるように叩き込まれた一撃は強烈。  後方へと吹き飛ばされたザザ、隠しアームは引き千切れ、機体のあちこちから青白い光が放電していた。 「WINNER!藤宮ルミ!!」  リリアンは右手を掲げ勝者の名前をコールする。  ルミは掴まれていた隠しアームを淡々と外していた。 「ふぅ……危なかった」 ○ 中層リーグ:BB級ダブルバトルワンマッチイベント “美しすぎる古武道娘” 藤宮ルミ スタイル:古武道藤宮流 スピード型BU-ROAD:旋風猛竜サイクラプター スポンサー企業:シウソニック VS “黒海の極め技ソルジャー” グリア・レヴァ スタイル:軍隊格闘術 パワー型BU-ROAD:ザザ スポンサー企業:ゼロボルド 勝者:『藤宮ルミ』 ――パチパチパチパチ……  観客席で拍手する男がいた。  スーツ姿のダンディな男性、彼の名は飛鳥馬実。  ASUMA・USA支部を統括する男で、小夜子の叔父である。 「彼女が――藤宮ルミか」  実はウンウンと何か納得した表情をしていた。

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