作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

実戦空手道灰野道場・事務局より この度は、灰野道場にお問い合わせ頂きありがとうございました。 灰野道場主催リアル空手チャンピオンシップオープントーナメントの件についてお伝えします。 当流派では女性の参加は女子の部のみとなっております。 従いまして……(以下省略)  ダメか。所詮『実戦』を謳っていてもこの程度だな。おっ!総合空手覇道塾からメール来てるな。  ……。  ちっ……コイツもお祈りメールか。  ムカつくから道場破りだ !  そんなこんなで、あたしは灰野道場の本部まで行った。  この道場主、灰野康裕って人はフルコン空手の重鎮で現役時代は数々の大会で優勝したらしい。  実戦を謳っていてどんなもんか試したくなった。  ところがこいつがなかなか……。 「本当に女なのか……?」  思ったよりも大したことがなかった。でも周りの弟子は驚いた様子だ。  大会で活躍していた、あの灰野先生がやられているからね。 「先生の技が全く通じない……」 「何者だ……あの女」  通じないも何も試合用の技ばかりで、実戦とやらじゃ全然使えないものばかりだった。  何というかポイント制の競技だったのだろうか、攻撃が軽い。  一撃に重みがないから、打点をズラせば対して効かないものだった。 「灰野さん。アンタこそ本当に一流派の代表かい?」 「だ、黙れ!」 「黙るのはアンタだよ」  立ち上がろうとする灰野だったけど、顔面がガラ空きだったので一発入れてやった。  顎を打たれ脳を揺らされた灰野はそのまま倒れちまった。  そしたら弟子は大慌てだ。 「だろうッ!?」 「顔面は卑怯ね……」 「そうだ顔面攻撃はルールにはない!」  若い弟子が喰ってかかった。  若いといっても、あたしとそう変わらない年齢だけど……。 「顔面無しに実戦空手名乗るなよ」 「な、なんだと?!」 「全員でかかってきな。モノホンの闘争ってやつを見せてやるよ」 ・ ・ ・  他の弟子はダメだが、この若い弟子だけはそこそこ粘った。  結構楽しめたね。 「ク、クソ……」 「アンタはそこそこやるね。名前だけ聞いてやるよ」 「灰野秀児はいのしゅうじ……」  どうやらこいつ、灰野の息子のようだ。 「はいの……なンだ同じ苗字じゃないか。おっさんのせがれかい?」 「そうだッ!」 「……いきなり解りやすい大技はねぇだろ」  秀児ってやつは、素早く間合いを詰めハイキックを繰り出した。  でもモーションが大きかったので、あたしはカウンターの中段を極めた。 「ぐっ……?!」  無念そうに倒れた……。  今だから言えるけど、少し罪悪感が残った。 「精進するんだね。いつかあたしを楽しませてくんな」 ・ ・ ・  あっちこっちの武道、格闘技の大会に申し込んだがどこも断られた。にだ。  そりゃそうだ。  普通だったら女子の部ってものがある。素直にそういった女子格闘技界で腕試しすりゃいい。  男性の出る格闘競技大会に出場申請したら撥ねられるのはわかっていた。  ダメもとさ。  自分を試したかった。  道場破りすることで憂さを晴らしていた。あの時のあたしは荒んでいたね。  今思えば迷惑な行為をしたと思っている。  男だ。女だ。  子どもだ。老人だ。  体が大きいだ。小さいだ。  体重が重いだ。軽いだ。  あたし……この藤宮ルミをどこで試せばいい?  この藤宮流をどこで試せばいい?  あたしをどこで開放すればいい?  「そのまま前に……。芥生君これでいいのかな?」  どこかで聞いた声だな……。  「ええ、戦争捕虜にも使用されたものですのでご安心を」  「そんな危ない薬どこで手に入れたの……?」  「それは秘密です」  あれ勝手に足が前に進む…まァいいっか。 ・ ・ ・ 某サッカースタジアムを改修。 バトルスタジアム【ルーキーコロシアム1】 「女の子が戦うなんて珍しいわね」 「客寄せパンダを入れての集客だよ」  何だ……人の声がする。 ○ 最下層リーグ:B級(シングルバトル)ワンマッチ “謎の古武道娘” 藤宮ルミ スタイル:古武道藤宮流 バランス型BU-ROAD:ノーマルレッド スポンサー企業:シウソニック ≪戦績≫デビュー戦 0勝0敗 VS “墺太利オーストリア功夫超人カンフーターミネーター” カーリー・ヴェルマ スタイル:カンフー バランス型BU-ROAD:ノーマルブルー スポンサー企業:クリムゾンラム ≪戦績≫8回戦 5勝1敗1分け 「こ、ここは……それに何だこの格好は?!」  ルミはやっと自我を取り戻した。  頭部にはヘルメットが被せられていた。  また腕や足、胴体には何やらプロテクターらしきものが付けている。  立っているこの場所……何やら小さい空間である。  ある程度の動きが自由に効くくらいには広い空間だ。 「お目覚めかい?」  小さく映し出された画面には、例のアスパラこと紫雲蓮也が映り出されていた。 「アスパラ!?よくも……」 「我が社の社運を賭けた一戦だ。頼んだぞ!」  そう言い残し映像が切れた。一体何が起きているのか皆目分からない。 「おい……」 「ん……?」  誰かに呼び止められた。 「おいそこのお前!これから試合だ!!」 「えっ……」  VR空間に似た映像から白いヒト型のロボットから注意を受ける。  ゲームか何かか……それとも夢の続きか……ルミは少し動揺する。  白いヒト型のロボットは何やら話しかける。 「これから試合を開始するぞ」 「ちょ……ちょっと!?試合って!」 「BU-ROADファイト……開始はじめ!!」  太鼓のような大きな音が響いた。何かの合図らしい。 「おいコラなんだこれは?!それにここはどこだ」 「何を言っている!BU-ROADバトルは開始はじまってるぞ!」  白いヒト型のロボットから、BU-ROADバトルという言葉を聞かされる。  彼女にとって、初めて聞くようなワードだ。 「何だそりゃ?!」 「いきなり実戦デビューだ。頑張れよ」  音声通信から先程のアスパラこと蓮也の言葉が聞こえてきた。  実戦デビューとは一体どういうことなのであろうか。 「いきなり実戦デビューって」 「ホワチャッ!」  怪鳥音と共に左外側の大腿部から鈍い痛みと衝撃が伝わった。  夢ではないリアルな痛みがあった。青いヒト型ロボットが注意勧告を行う。 「君、もう試合は開始はじまっているんだよ」  やっと理解することが出来た。これは現実だ。  そして思い出した。これは『BU-ROADバトル』だ。  存在自体はテレビやネットを通じて知っていた。 「まぁ良い!私のカンフーで優しく撃沈してあげよう!!」  その言葉と共に、素早い中段突きをワン・ツー・スリーと3連発くらう。  ブルース・リー顔負けの素早い突きでの連打であった。 ≪ボディ機体損傷率25%≫ 画面映像にそう表示される。 「すごいやつがやってきた!」 「流石は“功夫超人カンフーターミネーター”だぜッ!」  スタジアムの観客達は一連の試合展開を見て叫び野次を飛ばす。  ノーマルブルーに搭載する機闘士マシンバトラーはカーリー・ヴェルマ25歳。  カンフー以外にも柔道やキックも学び、欧州のキックボクシング大会では優勝準優勝多数。  髪型はGIカットをしており、筋骨隆々で逞しい。  オーソドックスな『キックボクシングの構え』をとるヴェルマ。  ルミの耳には野次の言葉は入っており、少しイラっとしている様子だった。 「ちっ……どいつもこいつも好き勝手言いやがって」 「もう棄権しなさい。君のような女性が来るところではない」  対戦相手であるカーリーは、ルミに棄権するように勧めた。  彼は彼なりにこの過酷な世界に女性が来て欲しくない、との思いからである。  だがその発言は、彼女のプライドを傷つけるものである以外に他はない。 「はっ?女性だからってなんだ」 「ならば仕方がな……」  強く鈍い痛みがカーリーの左内腿に伝わる。  腿の内側に下段蹴りを入れられたようだ。少し体勢が崩れている。 「お、重い……!」 「科学ってやつは凄いもんだ。動きに合わせてロボットも動くのかい」  ルミは軽くジャンプしながら機体の動きを確認している。  自身の動きに合わせてヒト型ロボットBU-ROADが動くことを楽しんでいる。  カーリーはそれを見てスキがあると思ったか、素早い左ジャブを繰り出す。 「ひょわッ!!」 「ふん……」  カーリーの左足の踏み込みに合わせ、ルミは足払いをかける。  再びカーリーは体勢が崩れそうになるがなんとか踏み留まった。  功夫超人カンフーターミネーターの異名で呼ばれる彼に対してルミは挑発する。 「つーかさ。カンフーとかいう割にじゃん」 「私はこれまでの伝統を破壊し、実戦性の高いカンフーを……」  彼は自身の流儀を更に発展させたいと思い、キックボクシング等他の格闘技を学んだ。  それを否定されることを許さない。  だがその間に隙が生じている。彼は踏みとどまっているが、少し体勢が崩れていたのだ。  ルミは右手を開き、カーリーの顎に右掌底を入れる。 「アンタのは、カンフーの名前を借りたキックもどきだよ」 「私のスタイルを色物とバカにするのか」 「いや違うね」  その言葉と共に、右掌底での斜め上からの軌道で一撃を加えられ足は地面から少し浮き始める。  少しづつではあるが、確実に地面から足が離れていく。  そして、いつの間にか空が見えていた。 「藤宮流……〝落月〟ッ!!」 「ッ?!」  藤宮流の落月は、人の頭部を満月に見立てて垂直に落とす。  即ち当身と投げ技が一体化した技である。  この技をかけれたカーリーは、後頭部を強くそして激しく地面に打ち付けられた。 ≪ヘッド機体損傷率100%≫ ≪カーリー・ヴェルマ……KO!!≫ 「昔の人はそれを〝形無し〟といったそうだ」  藤宮ルミノーマルレッドは左手は開手で鳩尾をカバーし、右手は握拳で顎をガードする。  これぞ藤宮流の基本の構え〝弘真〟である。 「強くなりたきゃ……まずカンフーを磨きな」 ○ 最下層リーグ:B級シングルバトルワンマッチ “謎の古武道娘” 藤宮ルミ スタイル:古武道藤宮流 バランス型BU-ROAD:ノーマルレッド スポンサー企業:シウソニック ≪戦績≫1回戦 1勝0敗 VS “墺太利オーストリア功夫超人カンフーターミネーター” カーリー・ヴェルマ スタイル:カンフー バランス型BU-ROAD:ノーマルブルー スポンサー企業:クリムゾンラム ≪戦績≫8回戦 5勝2敗1分け 勝者:『藤宮ルミ』※デビュー戦勝利

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません