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 シウソニックの会社訪問を果たしたルミ。後日談としてORGOGLIO事業部は正式に設立。  社長の蓮也は部署に配置する人材を選出する真っ最中である。  ルミは芋ジャージを着てランニングを行っていた。 「おっルミちゃんじゃねぇの。今週発売された雑誌で特集されてたよ」 「そりゃどーも」 「おはようございます。いつも見てますよ」 「よっ!いつも会うね」  いつものランニングコースを走る道中、声を掛けられることが多くなった。  一部限定的とはいえ、地域の有名人になっているようだ。  それもそのはずだ。現在5勝負けなしだからだ。 「すっかり有名人ね」 「……なんでアンタも走ってんだ」 「マネージャーだからね」  ランニングウェアとスポーツインナーを着用したカミラも一緒に走っていた。  体力があるのか、ルミのスピードについていっている。  その時だ。彼女は何かに気付いた。 「スピード上げさせてもらうよ!」 「待って!また勝手にどこ行くの!?」  走行スピードを上げていく。流石にカミラの足では追いつけず、そのまま置いてけぼりにされた。 (誰か知らないが途中で尾行してきてる……)  ルミは走ってある場所を目指す。近くにある人気のない神社だ。  到着するとその場に止まり、後ろを振り返る。 「誰だい。サインが欲しいならさっさと出てきな」  そう言うと黒服の大柄な男性が5人ほど現れた。中には外国人もいるようだ。それぞれ身長は180㎝以上あり肩幅もある。何かスポーツか格闘技でもやっているかのような体格だ。  真ん中に立つ一人の男が口を開いた。 「藤宮ルミ様ですね?」 「あたしとろうってのかい」 「いえ……とんでもございません。我々はASUMAの使者です」  男達はASUMAの使者のようであった。男は自己紹介と共にルミにゆっくりと近づいた。  ゆっくりと近づくものの隙は一切ない。相当の手練れだ。 「ASUMAの黒澤大吾(くろさわだいご)と申します」 「あたしに何の要件が?」 「会長がお会いしたいと……」 「会長?」 「ASUMAグループの飛鳥馬不二男あすまふじお会長と、面会して頂けないでしょうか」  唐突なその言葉にルミは暫く考えるも……決断した。 「……ヒマつぶしになりそうだし。会ってやろうじゃないか」 「ではこちらまで」  ルミは黒澤達に誘われるままついていくことにした。  一体彼女を待つ『飛鳥馬不二男』なる人物とは。 ・ ・ ・  場面は変わり、東京都大田区『東京国際空港』即ち『羽田空港』に移す。ご存じと思われるが、この羽田空港は成田国際空港と並ぶ首都圏の空の玄関と呼ばれる。  その空港のロビーを一人の西洋人が歩いていた。 「ここが日本ジャッポネか」  その西洋人は、亜麻色の髪をした青年であった。  トレンチコートを着込み、首からはロザリオを下げている。敬虔なクリスチャンであろうか。スーツケースを引く姿は様になっていた。 「ヴィート・ムッソ様ですね?」 「そうだけど」  ムッソという青年に日本人が話しかけた。 「ようこそ日本ジャッポネへおいで下さいました」 「あなたは?」 「ASUMA“ORGOGLIO事業部”の山村慈念と申します」  男はASUMAの山村慈念であった。自己紹介を終えると丁寧に名刺を手渡した。  一体この青年に何の用があるのだろうか。ムッソと呼ばれた青年は名刺を受け取る。 「日本人はカードを渡して自己紹介するって話は本当だったんだ」 「日本独特の社交辞令ですよ。テーブルマナーみたいなものです」 「ふふっ……では早速で申し訳ないが契約の話をしましょうか」 「お車を用意しておりますのでこちらへ」  リムジンでムッソを出迎える山村。どうやらVIP級の扱いらしい。  車で向かう場所はASUMA本社ビル。車から降りる二人。 「頼んでいた荷物は届いているかな?」 「もちろんです」  山村の言葉を合図にASUMAの社員が何やら黒い筒状の袋を運んできた。  荷物を受け取ったムッソはその袋を背中に背負った。その姿を見て山村はムッソに語りかける。 「お荷物は個人で運べませんでしたか」 「流石に空港に持ってくるとテロリスト扱いされるよ」 「それもそうですね」  本社ビルに入る二人。  丁寧に山村はムッソをCEO室まで案内する。  山村は扉を4回ほどノックする。 「ヴィート・ムッソ氏をお連れ致しました」 「入って」  彼女は何やら資料を見て確認してるようだった。顔を上げる小夜子はムッソの方向を見る。  資料に写っている顔写真と本人を確認しながら改めて尋ねる。 「イレギュラーリーグ〝ナイト・デュエル〟のチャンプね?」 「ピアチェーレはじめまして。アスマさん」 ○ 【イレギュラーリーグ】 “ORGOGLIO”の成功により【BU-ROAD】を使用したロボット格闘競技は世界各国で行われるようになった。 だが『WOA』の公式な認定は降りていないので『例外irregular』という扱いを受ける。 即ち全て別組織という形になるのである。 各団体とも独自の運営・興行がなされており、リーグの発足・消滅が繰り返されている。 ヴィート・ムッソは〝ナイト・デュエル〟と呼ばれるヨーロッパ圏で人気の高いリーグの選手である。 「特技は何かしら」 「コレです」  イタリア人の青年は、背負っていた黒い筒状の袋から鉛色の物体を取り出した。  それは西洋の刀剣……即ち『ロングソード』であった。 「その剣が飾りじゃないかどうか確かめたいものね」 「すぐ契約してくれるものだと」 「私はそこの山村から獲得するように勧められただけよ」 「スケジュールをキャンセルして、イタリアからわざわざ来たのにな」  ムッソは取り出した剣を再び袋に直すと、残念そうな表情をする。  そんなムッソを見て、獲得の打診をした山村は申し訳なさそうに言った。 「すいません。CEOは私のスカウティング能力を疑っていましてね……」 「山村、軽口はいいのよ。まずはムッソさんの実力を見せて私を納得させて下さらない」 「ふっ……いいでしょう。現代騎士の闘いをお見せしましょう」  どうやら正式契約するかどうかのテストマッチを行うようだ。  3人はASUMA社内にある、機闘士マシンバトラー専用のトレーニングルームへと向かう。  用意されたのは、ムッソが愛機とする〝ゴールドガラハッド〟である。ノーマルパープルに金色の鎧風プロテクターを装着させたものだ。手には銀色のロングソードが握りしめられている。  対戦相手はノーマルイエローとノーマルインディゴの2機。  搭載者はスパーリング相手と用意された、レスリング経験者と空手経験者である。 「あいつか?俺達の相手ってのは」 「そうみたいだな」  レスリング経験者は宮田謙二みやたけんじ。  空手経験者は福地強志ふくちつよし。  両者ともに、ORGOGLIO専用のスパーリングパートナーとして雇われている格闘家である。 「では、テストマッチを行って下さい」  トレーニングルームのスピーカーから山村の声が響いた。  試合開始である。広いドーム状の部屋には3機のBU-ROADが各々のスタイルで構えていた。  ノーマルイエローは、両手でしっかりと上げ顔面をガードする打撃屋の構え。ノーマルインディゴは、身を低く屈む典型的な組み技格闘家の構えだ。  一方のゴールドガラハッドは、剣術で言うところの八双の構えを取っていた。 「剣術だかなんか知らねぇけどよ」 「流石に二人相手にゃ敵わねぇだろうよ。いくぜ!」  先に飛び出したのは、レスリング経験者・宮田が搭載するノーマルインディゴだ。  タックルを狙っている。重そうな鎧を身に付けているので動きが鈍いと思っているようだ。 「遅い……!」 「ぐげっ……」  動きに合わせてムッソが搭載するゴールドガラハッドは後方へ後退する。  剣を上段から叩き潰すように強烈に落とす。その際、ロングソードの剣面で打ち込んでいた。  その結果、ノーマルインディゴは平伏すような形で地面に叩きつけられてしまったのだ。 「凄い……タックルを叩き潰したわ」 「西洋剣術の怖さですね」  テストマッチの様子を観戦する二人。  その様子に驚く小夜子に、西洋剣術の解説をする山村。 「鎧兜を相手にしてるので〝斬撃〟ではなく〝打撃〟の技術を使います」  西洋剣術は戦場で甲冑を着た騎士が決闘する為、斬撃よりも打撃を重視すると言われる。  甲冑への殴打攻撃の振動は、ダイレクトに体に伝わり脳震盪が引き起こされるという。 「キェッ!!」  ゴールドガラハッドが、大振りの一打をした為に隙が出来ている。  『今がチャンスだ』と言わんばかりに攻撃したのは、空手経験者・福地が搭載するノーマルイエローだ。狙いは顔面への上段突きだ。 「ぐわっ?!」  ゴールドガラハッドは、踏み込みに合わせて体当たりを行った。  その衝撃で吹き飛ばされるノーマルイエローを見て山村は解説する。 「ソードレスリングってヤツですよ。接近戦を想定してのね」  倒れるノーマルイエローの喉元に剣を突き付けるゴールドガラハッド。搭載するムッソは対戦相手に提案する。 「勝負ありです。降参して下さい」 「わ、わかった……俺の負けだ!」  福地の降参により、テストマッチの終了である。武器を持っているとはいえ、二人の格闘家に圧勝を果たした。  ゴールドガラハッドは、観覧席にいる小夜子に向かって語りかける。 「契約して頂けますか」  小夜子は納得したような顔でこう言った。 「合格よ。正式に契約させてもらうわ」 「おめでとうございますムッソさん」 「ボクの実力を理解わかってくれて良かったです」  ムッソは自分の実力を示すことが出来て満足している様子だった。山村は小夜子に語りかけた。 「納得して頂けましたか?」 「ええ……〝剣闘試合グラディエーターバトル〟での対戦相手として相応しい男ね」

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