作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

 強化合宿初日。  毘沙門館選抜VS甲斐軍団の練習試合が組まれることになった。  ASUMAの格納庫に集まるチーム一同。 「今回の練習試合は諸君らの格闘性を見たいと思っている」 「そのためにノーマルカラーズのみの使用というワケです」  夏樹と山村は今回の練習試合について説明した。  全員の純粋な格闘能力を把握するため、量産機のノーマルカラーズのみの使用になるという。 「では順番ですが……」  山村はメンバーの顔を見ながら言った。  さて先鋒戦は誰が出るか……。 「誰が先に出るんだ?」  腕組みをしながら伊藤は述べた。  チーム戦の大将は謙信なのは決定。それ以降の順番が問題だ。 「伊藤さんはどうですか?」  謙信は伊藤を見ながら言うが、彼は手を軽く振る。 「俺は後でいいよ」 「ならあたしが!」  ルミが腕を軽く回す。やる気満々である。  ――が水を差された。 「先鋒は間宮さんです。先に試合場へ向かっていますよ」  山村は人差し指を立てながら言った。  どうやら彼が先に試合場へ向かったようだった。  そういえば蒼の姿が見えない。ルミは出し抜かれたような気持ちになった。 「チ、チーム戦だぞ!協調性がないんじゃないか!?」 「藤宮さんに言われたら終わりでしょうが……」  地団駄を踏むルミを見て、謙信はそう思うのであった。 ・ ・ ・ ○ 練習試合:毘沙門館選抜VS甲斐軍団・先鋒戦 “眠れる龍” 間宮蒼 スタイル:毘沙門館空手 バランス型BU-ROAD:ノーマルブルー スポンサー企業:ASUMA VS “香母酢カボスの柔術マエストロ” マスク・ド・カボス‟オスカル” スタイル:柔術 バランス型BU-ROAD:ノーマルイエロー スポンサー企業:ASUMA 「カボカボ……君が“眠れる龍”と呼ばれるマミヤくんか」 「君は?」 「ボクはマスク・ド・カボス‟オスカル”だよ~ん」  ノーマルイエローに搭載する機闘士マシンバトラーはマスク・ド・カボス“オスカル”。  カボスを模した覆面を被る日系ブラジル人である。  ORGOGLIOの名物アナであるマスク・ド・カボスの遠縁である。 「君はボクの故郷ブラジルでも女性ママシータ達から人気者だよォん」 「そうなのかい?」  柔術をベースに、ボクシングやカポエイラの技術も取り入れているミックスファイター。  サウスポースタイルから見せる変則蹴りや、蹴りから寝技に持ち込む技術に定評がある。 「フフッ……そんな調子ブッこいてる人気者と戦えて光栄なんだ。絶対に潰してやるよん!」 「それは楽しみだ」  本国ブラジルでは、蒼は女性ママシータ達に人気がある。  オスカルはそんな彼を潰すことでスカっとしたい気分があった。 「気取っちゃって。ムカつく君に勝ってね支配下登録されるんだからねェェェん!!」  そして、彼はASUMAと本契約はされていない。  機闘士マシンバトラーの練習用として雇われた。云わば練習生扱いである。  練習とはいえ、この一戦で実力をアピールしたい気持ちが強い。 ――ブー!  ブザー音が鳴った。練習試合の先鋒戦がスタートする。  先に仕掛けたのはオスカルだ。右ジャブから左後ろ回し蹴りの連携だ。 「カボカボォ!!」 「……」  蒼は無構え。どれもギリギリで躱す。 「ならこれはどうだ!!」  右フリッカージャブ……否オスカルはそのまま右手を床に着ける。 「頭を潰れたカボスにしてやるからね~ん!!」  子安キックと呼ばれる超変則の上段蹴りである。 ――フッ!  確実に捉えた。そう思ったが蹴りは空を切る。  体を横に捌いて躱されたのだ。 ――パシッ!  蒼は軸手となる右手へと下段蹴りを放った。  手を掬われるような形となったため、カボスはそのまま床へと叩きつけられる。 「カボォ?!」 「悪いけどそれじゃあダメだよ。君さ攻撃する瞬間に肩が一瞬上がるんだよね」  人間は本能的に力みが入ると肩が上がる。そこを読まれてしまったのだ。 「くゥ……!!」  カボスはすぐさま立ち上がり今度は連続の回し蹴りを放つ。 ――ブン!  躱される。 ――ブン!  躱される。  練習試合の先鋒戦を見守るルミ。 「あいつ攻撃しねーじゃねーか」  伊藤は蒼の闘いぶりを見てこう言った。 「楽しんでるんだろ。珍しいタイプだからな」  オスカルのサウスポーで変則蹴りを多用するスタイルだ。  蒼は、なかなかいない相手と闘えることを楽しむ心のゆとりがあった。  一方のオスカルは焦りを隠せないでいる。 (ボクの蹴りが通用しない……ならばコレはどうだ!!) ――ブッ!!  ノーマルイエローは低空に飛ぶ。捨て身技の一つである蟹挟みだ。 「ブッ転がして寝技に持ち込んでやる!!」  打撃主体の蒼を寝技に持ち込めば勝てる。オスカルはそう思った。 ――フッ!! 「え……?!」  蒼の操るノーマルブルーは水鳥の如く飛翔した。  当然ながらオスカルの蟹挟みは不発に終わる。両者の滞空時間が長く感じる。  お互いに時間が圧縮されたような感覚だ。 「君と闘えて楽しかったよ」  オスカルはそう耳にした。闘えて楽しかったと。  過去形の言葉だ。まるで自分の勝利を確信したかのような発言だ。 「フ、フザけ……」  『フザけるな』そう言いたかった、が続きは言えない。  何故ならば……。 ――バギャ!!  ≪ヘッド機体損傷率100%≫  ≪マスク・ド・カボス‟オスカル”……KO!!≫  頭部に飛び足刀を叩き込まれ、そのまま蹴り足で頭を踏みつけられたのだ。 「え、えげつねェ……」  謙信は蒼の闘いぶりを見て呟いた。 「だが美しさと華麗さもある。ジキルとハイドに形容出来る二律背反性……見事である」  特別コーチの夏樹は蒼の見事な組手技術を賞賛する。  身体能力、技術の高さに満足そうな顔をしていた。 ○ 練習試合:毘沙門館選抜VS甲斐軍団・先鋒戦 “眠れる龍” 間宮蒼 スタイル:毘沙門館空手 バランス型BU-ROAD:ノーマルブルー スポンサー企業:ASUMA VS “香母酢カボスの柔術マエストロ” マスク・ド・カボス‟オスカル” スタイル:柔術 バランス型BU-ROAD:ノーマルイエロー スポンサー企業:ASUMA 勝者:『間宮蒼』 ・ ・ ・  練習試合の先鋒戦。勝者は蒼となった。  しかし、先に試合をするつもりだったルミは納得がいかない。  彼女は蒼に突っかかる。 「何でお前が先に出るんだよ!」 「ごめん、ごめん。山村さんが先に出ていいって言うから」  ルミは山村の方を見る。 「おいコラ!能面顔!!」 「え……私ですか?」 「そうだ!これは大事なチーム戦なんだぞ?!」 「えーっと‥‥…間宮さんは我が社と正式に契約を結んでおります。従いまして、彼に優先権があるのは当然かと」  山村は飄々と答える。彼のその態度はルミの怒りの火に油を注ぐ。 「そういう問題じゃねぇだろう」  その様子を見ている夏樹は息を吐く。 「フゥ……元気な娘さんだな。次は君が出たらいい」 ・ ・ ・  初戦を負けた甲斐軍団。  控室では次鋒戦に出る望月忍もちづきしのぶが軽い準備運動をしていた。  年齢は28歳。元自衛隊のアマレスラー。  全日本や国体でも優勝した経験を持つ。 「藤宮ルミ……強いんだって?」 「そうばい。女と思って嘗めたらいかんと」  望月を見ながら甲斐はそう述べた。 「スパーリングパートナーとして雇われたが、リアル世界での腕には自信がある」  レスリング出身の渡部はプロの総合格闘技家でもある。  マイナー団体ではあるが元ライトヘヴィ級チャンピオン。生身での強さに自信があった。  甲斐はその言葉を聞いて忠告する。 「BU-ROADバトルと現実の徒手格闘は違うとね」 「ふっ……わかっているよ」 ○ 練習試合:毘沙門館選抜VS甲斐軍団・次鋒戦 “美しすぎる古武道娘” 藤宮ルミ スタイル:古武道藤宮流 バランス型BU-ROAD:ノーマルレッド スポンサー企業:シウソニック VS “テイクダウンマスター” 望月忍 スタイル:レスリング バランス型BU-ROAD:ノーマルイエロー スポンサー企業:ASUMA ――ブー!  次鋒戦の開始だ。  望月の操るノーマルイエローは前傾姿勢。  レスリング経験者らしいグラップリング体勢だ。 「次鋒ルミいきます!!」  試合開始と同時にノーマルレッドがいきなり突進してきた。 「グオゴゴゴ」 「バカめ」  望月は顔から笑みがこぼれた。  このまま足を諸手で刈り取りテイクダウン。  そのままマウントで殴りまくる。総合の世界では常にそうしてきた。 「え……?デカッ?!」  ただ突進してくるだけのノーマルレッド。  だが目の錯覚か。ノーマルレッドの姿がどんどん大きくなった。 「てか……はやくね!?」 ――ガゴッ!!  飛び膝蹴りが、まともにノーマルイエローの顎へと命中する。  頭部が放電し、そのまま地面へと崩れ落ちた。  ≪ヘッド機体損傷率100%≫  ≪望月忍……KO!!≫  ノーマルレッドは地面へフワリと着地する。 (強い!)  伊藤が思うまでもなく、その秒殺劇にメンバーは驚いていた。  試合開始から約3秒。まさに瞬殺であった。 ○ 練習試合:毘沙門館選抜VS甲斐軍団・次鋒戦 “美しすぎる古武道娘” 藤宮ルミ スタイル:古武道藤宮流 バランス型BU-ROAD:ノーマルレッド スポンサー企業:シウソニック VS “テイクダウンマスター” 望月忍 スタイル:レスリング バランス型BU-ROAD:ノーマルイエロー スポンサー企業:ASUMA 勝者:『藤宮ルミ』

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません