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 藤宮ルミと名乗る女性。彼女は一体何者なのであろう。藤宮流といっていたが、何か武術の流派なのであろうか。蓮也は彼女の後を追い店から出る。出来るならば、彼女にシウソニックの契約選手として‟ORGOGLIO”の舞台に出てもらいたい、そう蓮也は思ったのだ。 「ちょっと待ってくれ!」 「なんだ?」  呼び止める蓮也に対して、ルミと名乗る女性はキリッとした表情で見られた。先ほどのお淑やかな雰囲気は完全に消えている。これが彼女の本当の姿だろう。 「その……まずはありがとう助かったよ」 「お前のためではない。古武道の名誉を守るためだ」 「ちょっと待ってくれ!もう少し……」  まずは先程の礼を述べる。ただ彼女は何か忙しかったのか、蓮也に自らの思いを伝えると足早に繁華街から去ろうとする。そんな姿を見て蓮也は呼び止めるも、彼女は夜の街に消えていった。  しまった。そんな感情が出るのが遅くなるほど、彼女の足取りは早いものだった。蓮也はその姿をただ見つめるしか他ない。  印象的な彼女の姿、たおやかでいて力強い。強さの中に美しさが残っていた。 「社長さん」  彼女の姿に見とれていると、後ろからカウンターテナー調の高い声で呼び止められる。  焼き肉店「牛華族」の店長、西木金鉄にしききんてつである。先代社長、つまり蓮也の父親である紫雲邦雄しうんくにおとは懇意の中であった。  父親の関係で幼い頃から蓮也は、この店を来ていたため、顔なじみである。 「お勘定払ってないよ。コースの4000円!」 「あ、ああ……すまねぇなおやっさん」  蓮也は詫びの言葉を伝え、ポケットから財布を取り出し料金を支払った。  西木は料金を受け取り、先程起きた自分の店のトラブルでの対応を伝える。 「それから、一応救急車と警察も呼んどいたから対応頼むよ」 「そりゃもう……あっおやっさん。あのルミって子はどこに住んでるんだ!?」  先程のルミと名乗る女性について、西木に聞き出したい様子だった。  彼女は「牛華族」のTシャツを着ていた。  この店のアルバイト従業員かもしれないと蓮也は思ったのだ。 「ル、ルミ?さっきの娘かい」 「そう!」  蓮也は西木の返答に期待する。  あのルミという娘を、シウソニックの機闘士マシンバトラーとして契約し試合に出すことが出来ればと。  会社の宣伝になりブランド力を向上させ、かつての栄光を取り戻すことが出来るかもしれない。  蓮也は格闘技についてズブの素人ではあるが、あのタザワーの巨体を投げ飛ばした彼女は只者ではない。  きっと強者に違いないと感じていたからだ。  だが、西木の返答は蓮也の期待とは違うものであった。 「いや知らないよ。うちの店のTシャツ着てたけど」 「え……おやっさんのところの従業員じゃないの?」 「あれはうちの店からネット販売してるヤツだ。誰でもちょこちょこ買えるんだよ」  その言葉を聞かされると、彼はガックリと肩を落とした。だが、彼も社員数千人を抱える企業の社長だ諦めていない。しかしどうやって探したらよいものか……そんな時だった。 「遅れてきて申し訳ありません。田澤選手との契約は如何でしたか?」 「社長……誰だよこのキレイな女の人は」  美しいスレンダーの女性である。蓮也の傍にいる西木も、その女性の美しさに見とれていた。  彼女は名は芥生あざみカミラ。日本人の父とアメリカ人の母を持つハーフ。  数カ月前にシウソニックの秘書として入社したばかりだ。 「丁度良かった。実は……」 ・ ・ ・ 「次は“ORGOGLIO”のメインバトルだっ!!」 「さっさと試合しろーっ!」  ドーム状の巨大施設に娯楽に飢えた人々が集まっていた。施設内は観客達の熱気が包み込んでいる。観客達の声援と熱気の理由は“OROGLIO”のメインイベントが始まるからである。  OROGLIO起源解説しよう。20××年1月世界は未知のウイルスに襲われた。そのウイルスは初め某アジア大陸の農村部で発生。致死率は極めて低いものの感染力は非常に高く都市部にまで波及した。ウイルスの感染爆発「パンデミック」だ。  某国では対処不能と判断し、国連機関の医療機関・専門家が入国し調査。すぐさま対処し収束される……と思われた。  しかし、ウイルスは某国だけに留まらなかった。  人を通し、動物を通し、あるいはモノを通して世界中で流行してしまったのだ。世界はこのウイルスに翻弄され、混沌に包まれてしまった。免疫力が低い高齢者、基礎疾患を持つものは死亡。医療崩壊があらゆるところで発生した。  ウイルス関連による死者数は、世界で数百万人となり世界問題へとなった。  世界では感染を恐れ〝ソーシャルディスタンス〟を推奨。各種スポーツ競技が自粛あるいは大会が中止された。特にラグビーや柔道、相撲のようなコンタクトスポーツはこの煽りを受ける。  そのため人々は娯楽に飢え、ストレスが溜まる毎日……精神的疲労が蓄積されていった。人々は政治に不信、あるいは互いを信用できない状態へと追い込まれたのであった。  そんな中……ヴィクター・リュウと名乗る謎の科学者がヒト型ロボットを開発する。  その名は【BU-ROAD】概念はVRや医療用パワードスーツを更に発展。五体に操作用プロテクターを着用。  着用者の動きをそのままトレースする機能を採用している。また動作プログラムを省略し、生身の動きを再現できるようにした。  このメカとシステムは当初小さな格闘技イベント“ORGOGLIO”により試験運用される。場所はイタリアのコロッセオ。万全の感染対策の元世界各国から格闘家が参加した。  第1回の優勝者はダン・ブライ。  当初は色物扱いの大会であったが、若者や医療専門家・ジャーナリストを中心に爆発的な人気と推奨を受ける。その人気はSNSやネット配信を通じて世界にインフルエンサーする。  この時【BU-ROAD】は格闘技に留まらず様々なコンタクトスポーツイベントで使用され始めた。  そして……世界のパンデミックから数年後、遂に人類は『ウイルスを克服』。  ウイルス克服後は流石に【BU-ROAD】の使用を辞め人を介しての競技再開となった。だが、機械格闘イベント“ORGOGLIO”の人気は衰えず。  その売り上げ興行高は、年間数兆円のスーパーイベントにまで成長した。これは世界に存在する数多の興行イベントを凌駕する収入であると言われている。  そして、この機械格闘イベントに世界各国の大手・中小・あるいはベンチャー企業が参入。各社専用の【BU-ROAD】を開発所有し、専属の機闘士マシンバトラーを出場させていた。  その宣伝効果は絶大だ。リーグで活躍するスポンサー企業は、絶大なる信用を得られている。赤字企業でも、マシンと選手が活躍すれば経営はV字回復されると言われている程である。  これは『夢』『希望』『野心』が同時に成し遂げられるイベントなのだ。 ○ 最上位リーグ:BBB級トリプルバトルワンマッチメインイベント “ザ・怪物モンスター” ゲオルグ・オットー スタイル:トータルファイト パワー型BU-ROAD:崩山ほうざん スポンサー企業:ASUMA VS “肉食系鳥人キッカー” 百舌鳥小僧シュライクキッド 本名・島原駿明しまばらとしあき スタイル:毘沙門館空手 スピード型BU-ROAD:ネオシュライカー スポンサー企業:フラット 「フェフェ……」  モズをかたどった覆面を被る怪しげな空手家は百舌鳥小僧。本名は島原駿明。毘沙門館空手というフルコン空手の実力者である。年齢も26歳と脂が乗っている。  飛び技や大技が得意で、過去自流派の全日本選手権中量級で優勝も果たしている。そして、空手家でありながらも組み技対策も為されており、格闘家としてもレベルが高い。独特の笑い方をしながらゲオルグと呼ばれる格闘家にこう言った。 「デビュー戦負けなしで怪物モンスターとか言われてるらしいな?」  対するは金色の長髪…まさに獅子のような風貌と体格を持つ格闘家ゲオルグ。無駄口を開かないこの漢は、ただただ黙っている。百舌鳥小僧の言葉を耳にしながらも、大きく腰を落とし構えるだけであった。その姿は侍の気概を見せている。 「てめぇ何とかいったらどうなんだ?」 「さっさと来い……色物」 「嘗めやがって!」  ゲオルグの一言に百舌鳥小僧は感情的となった。ネオシュライカーは、左右半身にスイッチをきりながら変則的な動きをする。相手を幻惑しながら間合いを詰めているようだ。 「このウインナー野郎!!」  百舌鳥小僧はそう言うとクルリと体を回転させる。空手の技で言うところの飛び後ろ回し蹴りだ。遠心力の加速が突き、ゲオルグが操る崩山の鳩尾にヒットする。強烈な一撃だ。  手応えがあったのか、ニタリと百舌鳥小僧はこう言った。 「勝ったッ!試合終了ゲームセット!」  勝利を確信した時だ。鳩尾に蹴り込まれている蹴り足を掴まれていた。 「今の蹴り……軽かったぞ」 「フェ……?」  その言葉と共に蹴り足を柔道で言う一本背負いの要領で投げ捨てられる。 「コオオオォォォッ!!」  彼独特の息吹と共に強烈な勢いで地面へと叩きつけられた。哀れ無惨にも百舌鳥小僧は地面という固い凶器にその身を打ちつけることになった。  ゲオルグは倒れた百舌鳥小僧を見る。そして、油断なく残心を取りながらこう言った。 「修行不足だ」 ○ 最上位リーグ:BBB級トリプルバトルワンマッチメインイベント ゲオルグ・オットー スタイル:トータルファイト パワー型BU-ROAD:崩山ほうざん スポンサー企業:ASUMA VS 百舌鳥小僧 本名・島原駿明 スタイル:毘沙門館空手 スピード型BU-ROAD:ネオシュライカー スポンサー企業:フラット 勝者:『ゲオルグ・オットー』

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