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 メイが優介の元に来てから早くも二ヶ月、春は過ぎ雨の季節が訪れた。  気温は二十℃を大きく越えるようになり少し暑い程であるが、同時に湿度も上がるのがこの季節の難点である。 「優介さん、梅雨入りしたみたいですね」 「だな……」  ニュース番組で天気予報士が言う通り、外はそこそこの雨が降っている。  この天気はしばらく続くようだ。  優介はジメジメとしたこの季節が嫌いだったのだが―― 「――私、梅雨を少し楽しみにしてました」 「そうなのか?」 「はい。いつもと違う雰囲気の街って、何だか素敵じゃないですか」  メイは優介に微笑みならがそう言った。  そんな彼女に対し、優介が無粋な持論を放てるはずも無い。 「そう……かもな。じゃ、今日は俺が朝ごはんを作るか」 「はいっ! 期待して待ってますね♪」  ちなみにだが、ご飯は作りたいし作って貰いたいというメイの要望により交代制が取られている。  元々男の一人暮らしにしては出来ていた優介は、メイに喜んで貰う為も更に腕を磨く決心を抱いた。 ――――――――――――――――――――  メイはスマホを渡されている。  だがそれはNS以外、優介以外の“人間”と連絡を取る為のツールに過ぎない。  優介や妹との連絡には、NN素体に内蔵された通信装置を使用している。  メイは自室のベットに転がると、目を閉じた。  すると脳裏とでも言うべき場所で、とある人物との接続が構築される。 『姉さーん、ちょっと遅くなーい?』 『アカネごめん! コッチも色々忙しくて、連絡出来なかったの……』 『ん~、まぁ……面白い話を聞かせてくれるなら、何でも良いけどさ~』  メイと連絡を取る相手、それは妹のアカネである。  これまでにも何度か報告の催促をされており、アカネもアカネなりに姉であるメイを心配してるのだろう。  時折恥ずかしさからベットを転がりながらも、メイは優介と直接会ってから今までの出来事を全て話した。 『ふーん、そんな事がねぇ~』 『これで良い?』 『うん良いよ、ありがとう』  アカネはメイの話を静かに聞き終えた。  そんなアカネが姉への心配を持っているのは確かだが、彼女は独自の目的も持っている。 『……面白そうじゃん。私も行っちゃおうかな?』

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