水囚の鏡姫
エピローグ

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 それはその年のとても綺麗な満月の夜のことだった。  結市の病院でふたつの命が産声を上げた。  一人は女の子。そしてもう一人は男の子。ふたりの赤ん坊は運命に引き寄せられるかのように同じ保育室の隣同士のベッドに寝かされた。  やがて扉が開き、部屋に入ってきたふたりの母親がそれぞれの子供を優しい瞳で見つめ、そして優しく抱きしめた。そしてそれぞれの母親は彼らに名前を告げた。それは彼らがこの世界に生まれてきた証。  約束されたその名前は―― 「生まれてきてくれてありがとう。あさひ」 「生まれてきてくれてありがとう。花月」  同じ世界に生れ落ちた彼らは、同じ時を重ね始めた。そして再び巡りあうのだろう。それはきっと遠くない未来――月はようやく果たされた約束を祝福するかのように、優しい光を世界に投げかけていた。

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