イマジナル・ファシリティー
佐々塚洋治が逮捕された事件

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それにもっと太っているはずだ。 佐々塚はこのアニメを見てからは肉を食べる量が増えていたからだ。 ではこれは誰だろうか? その時、インターホンが鳴った。 ピンポーン。 玄関に出ると警察官が立っていた。 私が言う前にその警察官は名刺を差し出してきた。 公安局第四課。 刑事課特殊勤務員 狩谷 警部補(かりや こうちょう) 狩谷が口を開く前に私はその刑事の名刺を奪って投げ捨ててやった。 刑事が顔をしかめるのがわかった。 だがしかし、そんなのは無視だ。 俺はここに来るべき人間ではない。 私は家を出た。 後ろで呼び止める声が聞こえたが無視だ。 そして私は全力で走った。 走るのは好きではないが仕方がない。 体力がないのでかなり苦しいがこれ以外に逃げ道はないのだ。 なぜ俺が走らないといけないんだ?と私は自分に問いかけたが、その問いに対する答えは浮かんでこなかった。 ただわかることは一つあった。 あの男が追ってきているということだ。 私は捕まりたくないのだ。 だからひたすらに逃げるしかなかった。 走って走って、しかし息が上がり、喉の奥から鉄の味がした。 足はもつれたし頭はガンガンと痛む。 そして私は倒れてしまった。 目の前にあるものは空っぽの公園の遊具だけだった。 そこに座り込むと後ろから気配を感じ振り返ると刑事がいた。 「やっと、追いついたぞ」 俺は死ぬのだと思った。 しかし、痛みはない。 不思議に思って前を見たらそこには俺がいるのだ。 俺はもう一人の俺のほうに向かって言った。 「俺、俺、死んじまうのかよ」俺の口から俺のしゃべり方が飛び出すと変な気分だった。 「お前、だれだよ」俺が聞くともう一人の俺はこう言った。 「佐々塚。 佐々木だ」 俺は俺の名前を名乗ったつもりだった。 すると後ろで狩谷が叫ぶ「動くな!」 俺と佐々木はその声を聞いて振り向いた。 佐々木は言う。 「何ですか?! この人、急に飛び掛かってきたので」俺は佐々木にいった。 「おまえも抵抗しようとしただろう!」佐々木も言う「なんなんですか!この人は! 僕、悪くない!」佐々木が叫ぶ。 狩谷は俺を見ながら言った「お前を逮捕に来たんだよ!」「どうして!」佐々木も同じことを叫んだ。 俺達はお互いに目を合わせると、佐々木が俺を押し倒してきた。 そして彼は言った。 「僕の身代わりになってください!」 「はあ?」 狩谷が銃を構えながら言う「おとなしく手を上げろ!」 俺は言われた通りに両手を上げた。 もう一人の俺はまだ地面に倒れたままだったが気にしている場合ではなかった。 俺が逮捕されればどうなるかわかったもんじゃないのだ。 とにかく時間稼ぎをして隙を伺うことを考えた。 しかし相手もプロである。 簡単にいくとは思えなかった。 俺は言う、「○○の×ページに載っている、○○の件なんですけど」刑事は銃をしまいながら答える、「○○についてはまだ捜査中だから何も話せない」刑事は俺に近づき言った、「ところで、佐々塚君」 俺は答えた。 それは、本名であった。 俺のフルネームは、佐々塚洋治(さざづかようじ) そして、その言葉に俺は絶望した。 何故なら刑事は知っている。 俺の名前を。 そして、佐々塚が偽名だとわかっている。 「どうして、名前を知っているんですか?」俺は恐る恐る聞いた。 すると、刑事は俺に言った「お前の家にあったパソコンを押収させてもらった」 俺は思いっきり叫んだ「あのPC!俺のなんだが?! どうしてくれるんだよ! 返せよ!」 刑事は俺を落ち着かせるためにか、優しく諭すように答えた。 「残念だがあのパソ、は壊れてる。 データも消去してある」そういえばそんな話を聞いたことがあるような気がしたが俺にはもう関係のないことだった。 なぜなら逮捕された瞬間に全て終わってしまうのだから。 「あれ、高かったんだぞ」俺は泣きたくなった。 「ああ。 すまない」刑事が素直に応じたことで怒りはすぐに収まったが、同時に虚しさと悲しさに襲われた。 「あのパソコン、買って一か月なんだぞ。 俺だって新しいゲームとかやりたかったのに」俺は呟く様に言うとまた涙が出てきた。 それを見ていたのか今度は刑事の方が狼になっていたが関係ないことであった。 「悪かったよ。 それで、あのパソだが修理に出せばなんとかなると思うのだが」 正直、直っても遅いんじゃないかと思い始めていた。 なにしろハードディスクがダメらしいからだ。 それを聞いた途端、もう完全に心は折れていた。 俺は何もかもどうでも良くなっていた。 どうせ、俺の人生なんてこんなものだ。 もう、いいじゃないか。 俺は諦めてそう思った。 俺はこうやっていつも人生を諦めてきた。 それが俺の生き方だった。 俺はこう言ってやった。 俺は佐々塚だ。 俺の意識はそこで途切れた。 目を覚ますと俺はベッドの上に寝かされていた。 俺はどうやら助かってしまったようだ。 俺は起き上がりあたりを見渡した。 どうも病院のようである。 俺は病室らしき部屋にいた。 俺は窓の外を眺めていた。 俺が入院しているこの部屋の外には廊下があるらしく、その先にはたくさんのドアが並んでいるのが見える。 そして、俺の横にもドアがあった。 どうやら、隣の部屋に繋がっているようで、そこから誰かが入ってきた。 「佐々塚さん」と看護師が呼んだ。 「はい」俺は返事をした。 「目が覚めたみたいですね。 よかったです」 「ここはどこでしょうか?」俺は尋ねた。 「ここは警察病院ですが、ご存知ですか?」 俺は答えた「はい」 「では、あなたは昨日の出来事を覚えていますか?」 「いいえ」 「そうですか」 「何かあったんですか?」 「実はですね」そういって彼女は説明し始めた。 私は、先ほど起きた出来事を思い出すことにした。 確か……そう、私はある男を追っていたのだ。 そしてそいつは私の部下によって拘束されようとしていたところだった。 男は必死で抵抗して、私に向かって発砲し、そのまま逃走したのだ。 その時だった。 突然男が消えた。 正確には何か透明な物に覆われたというべきだろうか?とにかく私は男を取り逃してしまったのだ。 その後、私は部下の何人かを引き連れて公園に向かい捜索に当たったが見つからなかった。 男は忽然と消えてしまったのだ。 そして私は、男の身柄を確保しようとしたが逃げられたため、仕方なく本部に戻ってきたのだ。 そのあとは、取り調べを行ったのだが男は黙秘権を行使しつづけたのだそうだ。 そして私は今日になって逮捕状の発行手続きを行うために警視庁に向かった。 するとそこには佐々塚がいたのである。 私の姿を見ると、奴はいきなり殴りかかってきたのだ。 私は間一髪でかわし、佐々塚の両手を掴んで拘束しようとしたが、その時、私の足元から、黒い影のような物が吹き出してくる。 それは佐々塚の周りを覆うように広がったがすぐに消える。 何事もなかったかのように再び佐々塚を捕まえようとすると奴も暴れ出した。 そのせいで私の顔と腕は怪我を負い、服は汚れ、佐々塚の身体には切り傷やアザができてしまったのだそうだ。 しかし私は気にしていなかった。 むしろこれはチャンスかもしれないと思っていた。 私は言った。 「あいつは何者だ?」 その問いかけに私は少し考えこんだ。 確かに気になる点が多いのだ。 そもそも何故私が襲われなければならないのか理解できない。 もちろん仕事は完璧にやってきたし問題など起こさなかったつもりである。 では、どこで恨みを買ったのか、と考えていくとどうしてもわからないのが、佐々塚の存在である。 彼は最近までアルバイトをしていたはずだ。 私が、彼のことについて調べたところ、大学四年生の彼が就活もせずに毎日パチンコ三昧だというのがわかった。 親が仕送りをしているのなら別に構わないのだがそういうわけでもないらしい。 私がそのことを聞いても、本人は一切口を割らなかった。 だが、彼と同じサークルに所属している先輩によると、なんでも佐々塚は就職活動をするふりだけしていただけで実際は就職する気はなかったのではないかということだった。 しかし佐々塚がどうして急にやる気をなくしてしまったのかについてはわからずじまいで終わってしまったのだった。 そしてそれからしばらくして私は彼に小説を書いていることを話したのだっけ?まあ、私はどうでも良かったから詳しくは聞かなかったが佐々塚はそれ以来毎日家に押しかけてきてしつこく小説のことを聞いていたのだな?思い出したよ。 私は改めて質問を返した「どういう意味ですか?」 「君は何を隠そう、あの事件の当事者なのだからな」私は驚いた「え?」「つまりだ、あの事件は君を狙っていた可能性があるということだ」 「ちょっと待ってください!」 私は思わず大声を出していた。 そして考えた、一体何が起きたのだろう?なぜ、佐々塚は俺を襲ったのだろう? それにあの男が言っていた、○○という謎の言葉、俺はそれが誰のことを示しているのか考えていたが、もしかすると俺の名前なのではないか、という疑問がわいてきたのだった。 ○○とは俺の本名のことではないのか? もし俺が佐々塚の狙いであるのなら? その考えに至った俺は戦慄したのだった。 --- 俺は病院を出て狩谷刑事と二人で警察署に向かっていた。 「それで、佐々塚さんの具合はどうですか?」と俺は聞いた。 彼は俺の肩を借りながら歩いた。 俺は答える、「はい。 命に別状はないみたいです。 」その答えに狩谷刑事もほっとしたようだったが、「ところでお前、何を隠しているんだ?」と言ったのである。 俺は、一瞬ドキッとしたが動揺を表に出さないようにして「はい? なんの話ですか?」と聞いた。 すると刑事が続けた「お前が襲った男のことだ」「さぁ……」と答えておいた。 すると刑事が急に立ち止まり俺を壁の方に追いやる形になって言う、「正直に答えろ」と言ってきた「刑事さんこそ正直に教えてくださいよ!なんですか!あの人は!?」俺の言葉を聞いて、狩谷は冷静に言う「あの人が誰か、お前は知っているはずじゃないか」刑事は俺に詰め寄るように言った「いいか。 俺には嘘をついても無駄だからな」そう言って刑事は俺に近づいてくる。 俺の背中に汗が流れるのが感じられた。 「な、なんのことでしょう?」俺は言った。 「佐々塚洋治、それが彼の名前だ」 俺は、その名前を聞くと驚きを隠せなかった。 「どうしてそれを」 「お前の家にあったパソコンを調べたら、履歴に残っていたんだよ」 「それだけですか?」 「いいや、他にもいろいろとな」 俺は頭の中で整理した。 あの時、俺は佐々木に襲われ、そしてそれを見ていた刑事が佐々塚だとわかった。 そして、佐々塚は俺に銃を突きつけながら俺に聞いた。 俺は佐々塚の問いに答える。 俺の名前は佐々塚洋治だと。 すると佐々塚は笑いながら言ったのだった。 佐々塚が笑うなんて珍しいこともあるものだと思ったが、そんなことよりも俺は混乱した。 なぜなら佐々塚は俺の名前を知っていたのだから。 俺は言った。 俺は佐々塚だ。 その瞬間、佐々塚は俺を睨みつけた。 俺は、恐怖を感じた。 俺は、殺されるかも知れないと。 俺は、何もかもどうでも良くなっていた。 どうせ、俺の人生なんてこんなものだ。 もう、いいじゃないか。 俺は諦めてそう思った。 俺はこうやっていつも人生を諦めてきた。 それが俺の生き方だった。 俺はこう言ってやった。 俺は佐々塚だ。 その瞬間、佐々塚の表情が変わった。 そして、俺に言う。 俺のことは忘れるんだ。 そう言うと、佐々塚は俺に背を向けて立ち去ろうとしたので俺は呼び止めた。 しかし、振り向くことなく去って行った。 あの後、病院に戻り狩谷刑事に報告したところ、どうやらあの男は逮捕されないらしいということを聞いた俺は安心したが同時に落胆した。 どうやらあの男はまだどこかで生きているらしいのだ。 しかもそれが誰かはわからないらしいが。 しかし、俺はそれについて考えるのをやめた。

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