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 子育てにうるさくない両親は、クオンを出て行きたいと言う千歳を否定しなかった。だがやはり、心配と不安は隠せずにいて、最後まで思い止まらせようという意思を見せた。  けれど千歳も頑として譲らなかった。  自立を求められたからこそ、自分なりに考え、調べ、必要な物を揃え、外の世界に羽ばたく時が来たのだと強く訴える。千歳の意志は固かった。  千歳の背中が見えなくなる。両親は「あの子なら大丈夫」と言いながら、千晴の頭を撫でた。「クオンには千晴がいるからね」と笑った。  千晴は海月と一緒に水の庭へ向かった。暮れ行くオレンジの空が湖を淡くに包んでいる。 「……海月はこれからどうするの?」 「どうするって?」 「クオンに来てから、ずっとお姉ちゃんに使役されてたでしょ? これからは他の誰かと契約するの?」 「どうしようかな。そうだ。使役の練習相手になってやろうか?」  夕焼けの輝きが、海月の瞳に反射する。 「ちょっと山まで行って来るから、俺を呼び寄せてみろよ。あ、でも千晴にはまだ無理か」  冗談っぽく海月は笑う。 「うん無理。だから行かないで」  言って、海月の服をつかむ。 「ねえ、海月。私がちゃんと使役できるようになったら、私と契約してくれない?」  キラキラ輝く、海月の目を見つめる。 「私には精霊の力が必要だもん。海月がいないと一人で学校にも行けない。だから……」  海月は千晴の頭にぽんと手を乗せた。 「分かった。千晴は命の恩人だしな。俺の契約はお前のために取っておく」 「ほんと?」 「ああ。だからさっさと使役できるようになれよ?」 「うん、頑張る!」  お前のために取っておく。千歳の去った寂しさを、海月の言葉が埋めてくれた。

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