ルドヴェンティブ
第1話:その名は烈風猛竜、スタートアップは順調に?(前編)

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 きらびやかな照明光を浴びるドーム型施設。  ここはサムライドーム、その中には色とりどりの人型マシンがあります。  色は赤、青、黄色と様々、形も大きいのから小さいのまで――。  これらはスポーツ競技用の機体で『BU-ROAD』と呼ばれています。  ここで何が始まるんですかって?  うーん……簡単に言うと『ロボット同士を戦わせる格闘技』ですかね。  よくありそうな設定だな? 失礼しちゃうな!  この機械格闘技イベント『BU-ROADバトル』は今世界で大流行なんですよ!  なんせ年間数兆円の興行収益を叩き出すスーパーイベントなんですから!    ところでお前は誰だって? え、えーっとご紹介が遅れました! 「私の名前は岡本いさみ、紫雲電機の広報部に配属されています」  今日は紫雲電機の社員一同、BU-ROADバトルの観戦に訪れています。  なんせ大事なデビュー戦ですので。 ☆★☆ 『BU-ROADバトルは爆発だァーっ!』  オーロラビジョンには、3DCGの女の子が映し出されました。  彼女の名は夢比奈ミリア。  ピンクのポニーテールに、黒の衣装はところどころに星とハートが描かれキュートです。  彼女はスポーツ実況系Vtuberとして、BU-ROADバトルの専属アナを務めています。 『紫雲電機のマシンは烈風猛竜ルドラプター!』  観客席に横断幕が掲げられました。 ――家電無敵! 烈風猛竜ルドラプター!  観客席には紫雲電機の応援団がいます。  紫雲電機は家電製品のベンチャー企業。  BU-ROADバトルのデビュー戦となります。 『赤い龍レッドドラゴンをイメージしているか!? う~んファンタスティックッ!』  烈風猛竜ルドラプターは紫雲電機が開発したマシン。  見た目は、幻想世界ファンタジーに登場しそうな龍人型でシャープな造形。  カラーは赤を基調としていて、紫雲電機の熱意と情熱を感じさせてくれます。  威風堂々と烈風猛竜ルドラプターは試合場中央に立っていました。 「本当に大丈夫っスかね」 「社長が設計したマシンを信じろ」  社員はみんなビジネスマンのようなスーツではなく作業着。  色はミストブルー、胸には紫雲電機と刺繍されたシンプルなものです。  みんな、どこか表情が固く緊張した面持ちです。なんせ烈風猛竜ルドラプターのデビュー戦なんですから。 『赤き旋風を巻き起こすか烈風猛竜ルドラプター!? だがちょっと待った! このBU-ROADバトルは甘くないぞ新人!』  烈風猛竜ルドラプターの対戦相手は、自動車メーカーMUTURAが開発したインプレスターです。 『ベンチャールーキービジネスプロの厳しさを教えるぞ! 自動車大手のMUTURAが対戦相手だッ!』  頭部の両サイドに付けられたアンテナは小悪魔インプの耳のようです。そして、脚部にはタイヤが装着。機動力に自信ありといったところでしょうか。  カラーリングは白を基調とし、烈風猛竜ルドラプターとは対照的です。 『両機は睨み合っているか!?』  既に視殺戦が始まっていました。  操縦室にいる二人のファイターはモニターで対戦相手の顔を見ています。  頭部にはVRメット、体や手足にはプロテクターを装着しています。  BU-ROADを遠隔操作するためのデバイスのようなものです。 「フザけた格好だな、何があって覆面などしている」  インプレスターを操縦する灰野選手が語りかけています。  灰野秀児、年齢は二十歳。新進気鋭の若きファイターです。  実践空手家で数々の格闘技大会で優勝。このBU-ROADバトルでも活躍しています。 「大人の事情ってヤツさ」  烈風猛竜ルドラプターを操縦するファイターがそう答えました。  声は中性的、身長は160㎝後半くらいでしょうか。男性――いや女性かもしれません。  ファイターの名前は『シュハリ』、カーキ色の覆面を被っていて不気味です。  なにせ目が見えるように、二つの穴が開いているだけなのですから。 「随分と意味深だな」 「男が試合前にペラペラと――ザコのやることだよ」 「トラッシュトークのつもりか?」 ※トラッシュトーク:試合前や試合中に、汚い言葉や挑発を行い相手の心理面を揺さぶる作戦のこと。  ガシンと機械音が響き渡りました。両機は構えをとったようです。 「嘗めた口を聞けなくしてやる」  インプレスターは両手で顎を防御する組手構え。  対する烈風猛竜ルドラプターですが……。 『おおっと! なんだこの構えは!』  奇妙な構えでした。  まず手のひらを相手に見せるように構えています。  手の位置は左手を相手の頭部に向け、右手は鳩尾みぞおちをガードしています。  大きく――大きく構えています。何と例えたらいいでしょうか? 『花だ! 蓮華のような可憐な構え! こんなのアニメやマンガでしか見たことがなーいっ!』  そう、花のようでした。 「なんじゃあの構えは?」 「カンフー映画かよッ!」  見ている観客達も驚き半分、笑い半分です。  空手でも、ボクシングでも、キックでもない創作物のような構えでしたから。  強いてあげれば中国拳法に近いものでしょうか?  それにしても外連味たっぷりです。流儀は一体なんでしょうか? 「シュハリ! 絶対に勝てよ!」  試合開始前だというのに、紫雲電機側のセコンドがシュハリに声をかけます。  烈風猛竜ルドラプターの構えと同じく、そのセコンドも奇妙でした。  まず眉毛がありません。とてもじゃないですが堅気の男性には見えません。  それに髪型が個性的過ぎます。なんせ中央に向かいトサカのように尖っています。  野菜で例えたら――アスパラガス? 「わかってるよ、社長さん」  シュハリはそう答えました。  この人こそ紫雲電機の社長、紫雲蓮也さんです。 『BU-ROADバトル! 開始ファイッ!』  アトラは画面に向かって拳を突き出します。  いよいよ始まるのです。紫雲電機の社運を賭けた闘いが――。 ○ BU-ROADバトル 契約ファイター:シュハリ スタイル:??? BU-ROADネーム:烈風猛竜ルドラプター スポンサー企業:紫雲電機 VS 契約ファイター:灰野秀児 スタイル:実践空手 BU-ROADネーム:インプレスター スポンサー企業:MUTURA

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