きらびやかな照明光を浴びるドーム型施設。 ここはサムライドーム、その中には色とりどりの人型マシンがあります。 色は赤、青、黄色と様々、形も大きいのから小さいのまで――。 これらはスポーツ競技用の機体で『BU-ROAD』と呼ばれています。 ここで何が始まるんですかって? うーん……簡単に言うと『ロボット同士を戦わせる格闘技』ですかね。 よくありそうな設定だな? 失礼しちゃうな! この機械格闘技イベント『BU-ROADバトル』は今世界で大流行なんですよ! なんせ年間数兆円の興行収益を叩き出すスーパーイベントなんですから! ところでお前は誰だって? え、えーっとご紹介が遅れました! 「私の名前は岡本いさみ、紫雲電機の広報部に配属されています」 今日は紫雲電機の社員一同、BU-ROADバトルの観戦に訪れています。 なんせ大事なデビュー戦ですので。 ☆★☆ 『BU-ROADバトルは爆発だァーっ!』 オーロラビジョンには、3DCGの女の子が映し出されました。 彼女の名は夢比奈ミリア。 ピンクのポニーテールに、黒の衣装はところどころに星とハートが描かれキュートです。 彼女はスポーツ実況系Vtuberとして、BU-ROADバトルの専属アナを務めています。 『紫雲電機のマシンは烈風猛竜!』 観客席に横断幕が掲げられました。 ――家電無敵! 烈風猛竜! 観客席には紫雲電機の応援団がいます。 紫雲電機は家電製品のベンチャー企業。 BU-ROADバトルのデビュー戦となります。 『赤い龍をイメージしているか!? う~んファンタスティックッ!』 烈風猛竜は紫雲電機が開発したマシン。 見た目は、幻想世界に登場しそうな龍人型でシャープな造形。 カラーは赤を基調としていて、紫雲電機の熱意と情熱を感じさせてくれます。 威風堂々と烈風猛竜は試合場中央に立っていました。 「本当に大丈夫っスかね」 「社長が設計したマシンを信じろ」 社員はみんなビジネスマンのようなスーツではなく作業着。 色はミストブルー、胸には紫雲電機と刺繍されたシンプルなものです。 みんな、どこか表情が固く緊張した面持ちです。なんせ烈風猛竜のデビュー戦なんですから。 『赤き旋風を巻き起こすか烈風猛竜!? だがちょっと待った! このBU-ROADバトルは甘くないぞ新人!』 烈風猛竜の対戦相手は、自動車メーカーMUTURAが開発したインプレスターです。 『ベンチャーにビジネスの厳しさを教えるぞ! 自動車大手のMUTURAが対戦相手だッ!』 頭部の両サイドに付けられたアンテナは小悪魔の耳のようです。そして、脚部にはタイヤが装着。機動力に自信ありといったところでしょうか。 カラーリングは白を基調とし、烈風猛竜とは対照的です。 『両機は睨み合っているか!?』 既に視殺戦が始まっていました。 操縦室にいる二人のファイターはモニターで対戦相手の顔を見ています。 頭部にはVRメット、体や手足にはプロテクターを装着しています。 BU-ROADを遠隔操作するためのデバイスのようなものです。 「フザけた格好だな、何があって覆面などしている」 インプレスターを操縦する灰野選手が語りかけています。 灰野秀児、年齢は二十歳。新進気鋭の若きファイターです。 実践空手家で数々の格闘技大会で優勝。このBU-ROADバトルでも活躍しています。 「大人の事情ってヤツさ」 烈風猛竜を操縦するファイターがそう答えました。 声は中性的、身長は160㎝後半くらいでしょうか。男性――いや女性かもしれません。 ファイターの名前は『シュハリ』、カーキ色の覆面を被っていて不気味です。 なにせ目が見えるように、二つの穴が開いているだけなのですから。 「随分と意味深だな」 「男が試合前にペラペラと――ザコのやることだよ」 「トラッシュトークのつもりか?」 ※トラッシュトーク:試合前や試合中に、汚い言葉や挑発を行い相手の心理面を揺さぶる作戦のこと。 ガシンと機械音が響き渡りました。両機は構えをとったようです。 「嘗めた口を聞けなくしてやる」 インプレスターは両手で顎を防御する組手構え。 対する烈風猛竜ですが……。 『おおっと! なんだこの構えは!』 奇妙な構えでした。 まず手のひらを相手に見せるように構えています。 手の位置は左手を相手の頭部に向け、右手は鳩尾をガードしています。 大きく――大きく構えています。何と例えたらいいでしょうか? 『花だ! 蓮華のような可憐な構え! こんなのアニメやマンガでしか見たことがなーいっ!』 そう、花のようでした。 「なんじゃあの構えは?」 「カンフー映画かよッ!」 見ている観客達も驚き半分、笑い半分です。 空手でも、ボクシングでも、キックでもない創作物のような構えでしたから。 強いてあげれば中国拳法に近いものでしょうか? それにしても外連味たっぷりです。流儀は一体なんでしょうか? 「シュハリ! 絶対に勝てよ!」 試合開始前だというのに、紫雲電機側のセコンドがシュハリに声をかけます。 烈風猛竜の構えと同じく、そのセコンドも奇妙でした。 まず眉毛がありません。とてもじゃないですが堅気の男性には見えません。 それに髪型が個性的過ぎます。なんせ中央に向かいトサカのように尖っています。 野菜で例えたら――アスパラガス? 「わかってるよ、社長さん」 シュハリはそう答えました。 この人こそ紫雲電機の社長、紫雲蓮也さんです。 『BU-ROADバトル! 開始ッ!』 アトラは画面に向かって拳を突き出します。 いよいよ始まるのです。紫雲電機の社運を賭けた闘いが――。 ○ BU-ROADバトル 契約ファイター:シュハリ スタイル:??? BU-ROADネーム:烈風猛竜 スポンサー企業:紫雲電機 VS 契約ファイター:灰野秀児 スタイル:実践空手 BU-ROADネーム:インプレスター スポンサー企業:MUTURA
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