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「ご面倒を、おかけしました。ノア」 「なあに、吾輩も楽しいものを見せてもらった。あのデヴィランの壊滅をね」  イスリーブ、及び周辺のデヴィランは、消滅したという。  おそらく、魔王ヴァージルという最高幹部が死んだことにより、下部組織もろとも絶滅したのだろうとのことだ。 「けれど、まだデヴィランは世界中に存在する。片っ端から潰して回らねえと」 「我々の戦いは、これからですわ!」  ダニーに続き、ラキアスも奮い立つ。 「さて、帰るか。ミレーヌのカレーが待ってる」  ようやく、コデロに穏やかな笑みが戻ってきた。 「その前に、やることがある」  そう言ってノアが持ち出したのは、ダイナマイトだ。 「この施設を破壊する。もう二度と、次元転送装置なんていうバカげた技術には誰も触れさせない」 『まったくだ。やってくれ』 「一応、身内に許可を取ろう。コデロ」  コデロは何も言わず、一つうなずいた。 「ならば」と、全員でダイナマイトを設置していく。 「用意はいいかい。全員脱出だ」  爆弾を仕掛け終えた全員が地上へ。 「スイッチは、キミが入れる権利がある」  ノアはそう言うと、スイッチをコデロに渡す。 「赤いスイッチが||」  説明半分だけ聞き、コデロはノーモーションでボタンを押した。  盛大に、城の地下が炎を上げる。  コデロは爆発の状況を、見ようともしない。それだけ、怒りが根深いのだ。 「本当に、ためらいがないな。こんなときは、少し間を置くものだよ?」 「デヴィランは生かしておけませんから」  もうコデロは、再興のことを考えている。  そのためには、デヴィランの技術など邪魔でしかない。  一刻も早く消滅させる必要があった。 「申し訳ありません。デヴィランさえこの世界にいなければ、あなたは平和に暮らせたのに」 『いいんだ。デヴィランを壊滅させることは、オレたちの義務だから』 「ベルト様、あなたは自分の正義を貫いて。私があなたを妨害する悪を倒します。あなたの前に立ち塞がる悪を滅ぼすこと。それが私の役目です」  コデロの決意は固い。これが最善の決断なのだろう。 「私の怒り、どうか役立てて」  リュートはもう何も咎めない。コデロの生き方を受け入れる。 『分かった。キミは、悪を祓う剣となってくれ。オレはキミを守る鎧となり、弱き者から悪を守る壁となる』 「はい。あなたが『正義の味方』なら、私は『悪の敵』となりましょう」  いよいよ、本格的な復興の始まりだ。困難は多いだろうが、ノアやラキアスも援助してくれるという。    イスリーブへ帰宅途中、フーゴの街へ立ち寄った。 「ミレーヌ!」    フーゴの純喫茶には、ミレーヌが。アテムにガードしてもらいながら、ここまで来たという。 「一旦、お風呂に入りましょ。もう砂ボコリで咳き込みそう」 「はい。カレーも食べたいです」  コデロの腹が鳴った。  ようやく、空腹を訴えるほどに緊張がほぐれたのである。 「わたってるわよ、コデロ。お腹いっぱい食べてね」 「いただきます」  久々のカレー、今から楽しみだ。 「その前に、おっかあにあいさつを済ませるぞ」  ダニー、ミレーヌ父娘と共に、コデロはフーゴの墓地に報告する。 「おっかあ、ただいま。全部終わったぜ」  どれだけ、時間が掛かったのだろう。コーデリアはついに、ドランスフォードの奪還に成功した。  とはいえ、もう滅びた国である。国民もいないので、統治すらできない。一からやり直しだ。 「わたくしが、城に資金を提供してくださる方を当たってみますわ」  ラキアスが、そう言ってくれた。先にアテムたちとイスリーブへ帰るという。  数年ぶりのように久しいカレーに、コデロはようやくありつく。 「おやっさん。今までありがとうございました」 「いやなに、俺も世話になった。お前さんと会わなければ、フーゴを、ミレーヌを守れなかっただろうさ」  思えば、コデロがミレーヌを助けたことから始まった縁だ。  しかし、もう甘えるわけには行かないだろう。  二人には、デヴィランとの因縁など関係なくなる。 「これからは、私一人の戦いになります。もう、あなた方を巻き込むわけには」  コデロの言葉を、ダニーは遮った。 「いいってことよ。もう俺とお前さんの仲だ。最後まで付き合うぜ」 「あたしも! カレー食べたいでしょ?」  二人の優しさに、コデロは心から感謝する。 「では、お言葉に甘えます」 「よっしゃ、イスリーブへ戻ろう」  ダニーの一言で、コデロはバイクにまたがった。 『む?』  白い鳥が空を舞う姿を、コデロは眺める。まるで、コーデリアを祝福しているように見えたのだ。 「どうかなさいましたか、ベルト様?」 『なんでもない。それより、まだデヴィランの脅威は去っていない』  リュートは気を引き締めた。 「だな。行くか」 「あたしも、他の街で稼いじゃうんだから!」  ダニー親娘も、張り切っている。 『じゃあ、ひとっ走り付き合ってもらう』 「はい。参りましょう、ベルト様!」  リュートが言い、コデロがアクセルをふかした。  ――妹を救ってくれて、ありがとうございます。  リュートの耳に、そんな声が。 『オレの方こそ礼をいう。オレにも、誰かを救うことができるんだ、って分かったからな』  リュートはようやく、見せかけだけではない本当の正義を完遂できたと思えた。 「誰とお話ししているのです?」 『気にするな、行くぞ』  これから先、何が待ち構えているのか。  しかし、悪がいる限り、コウガは戦い続ける。  リュートとコデロ、二人で一人の復讐者ヒーロー。  コウガの旅路は、まだ続く。 (第一部 完)

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