冒険者ギルドから、数名メンバーを雇って、砦へ。 ルート直前の崖にて、ブリーフィングを行う。ここで打ち合わせを行い、奇襲する作戦だ。 パーティと円陣を組み、ダニーが地図を広げる。 砦への道のりは、フーゴ行きのルートから外れていた。しかし、このまま建設が進めば、フーゴの街にも接触する設計である。 「ここで止める必要があるな」 地図を閉じて、ダニーがブリーフィングを終了する。 建設中の砦では、ボロを着た男性たちが働かされていた。デヴィランに捕らえられた男たちだろう。戦闘員にムチを打たれ、石のブロックを運ばされている。 「オレたちは、作業員たちの解放だけでいいんだよな?」 怯えた冒険者が、ダニーに問いかけた。先日現れた巨大怪人を目の当たりにして、猛者どもですら萎縮してしまっている。比較的、血の気が多い集団だけを雇ったつもりだった。が、アテムほど度胸のある人材はマレらしい。 討伐隊のメンバーには、エース・スリーの面々もいる。彼らだけは、特に怯えた様子を見せない。むしろ、気分が高揚しているように見えた。 「あんたらは、事が済んだら早々に逃げてくれ。ヤツらに捕まったら、人体実験では済まない可能性がある」 ダニーが、討伐隊に警告する。 最悪、大切な家族や仲間を「殺す側」に洗脳されてしまう。コデロにとって最も避けたい事案だ。 再度、崖から様子を伺う。 「お、お」 男性の一人が、疲労で転倒してしまった。両手に持っていたブロックを地面へ落とす。石は、粉々に砕けてしまった。 「貴様、神聖なるデヴィランの砦に傷を付けるとは!」 戦闘員が男性をムチで叩く。 「すまねえ! 勘弁してくれ!」 痛みに耐えながら、男性が砕けた石をかき集める。 「悪いと思っているなら、働け! デヴィランのためにな!」 破片を担いで、男性は立ち上がろうとした。とはいえ、男性はすぐに起き上がれない。 「役立たずめ。貴様は砦に血を捧げよ!」 しびれを切らした戦闘員が、とうとう剣を抜く。 「ひいい!」 今にも、剣が男性を突き刺そうとしている。 『やめろ!』 瞬時に、コデロはコウガへと変身した。簡易バージョンで、戦闘員に立ちむかう。崖から降り、剣をキックでへし折った。 『おやっさん、あんたは人を安全な所へ!』 戦闘員を押さえ込みながら、敵の注意をこちらに向けさせる。 「よしきた!」 ダニーが光線銃で戦闘員たちを狙撃し、男性たちを解放していった。 「フィーンドバスターッ!」 コウガもベルトから銃を取り出し、戦闘員を撃退する。 簡易型もレベルアップしているのか、魔力銃の威力が凄まじい。戦闘員の位置もすべて把握できる。見えない場所へ適当に撃ち込んでも、敵に命中しているのが分かった。 「ここに魔王がいますね。もっと威力は抑えましょう」 『ああ。この奥にビンビンと感じるぞ』 敵を全滅させたコウガは、砦の入り口へ。 しかし、先にエース・スリーの面々が入っていく。 『待て! この先に、何がいるのか分からないぞ!』 コウガは止めようとするが、戦闘員たちに阻まれて進めなかった。 「だからこそ、我々が行くのだ。あなたの強さは知っている。だが、我々も露払いくらいにはなるだろう」 勇ましい剣士が、大剣を担いで先行する。群がる戦闘員を、一瞬で両断した。重い一撃で敵の大群を蹴散らして、強引に通路を切り開く。 「久々の強者、腕がなるわい」 「手柄はいただくから、お姉さんに任せて」 一方、モンクと魔女は単に報酬が目当てのようだ。 『どうなっても知らんぞ』 「いいのいいの。楽勝だから」 魔女はそう吐き捨てて、コウガを追い越す。 「コウガ、みんな無事だ。気をつけろよ!」 『心得た。トゥア!』 砦の内部へと、コウガは飛び込んだ。 奥はダンジョンとなっている。構造は、研究施設のよう。 スチームパンクめいた機材が生き物のように蠢いている。 液体に満たされた容器の中には、動物の死体が。今にも動き出すのではないかと思うほど、リアリティがある。 『冒険者が入った形跡は、ないな』 「ここにいる実験体が、外を襲うと危険です。今のうちに壊しておきましょう」 コウガは、ラボのある玄室へ。 『怪人……いや、怪獣というべきか?』 妙な生命体が眠るカプセルを、コウガは発見した。 「本来、魔物とはこのような怪物を言ったのです」 様々な経緯をへて、今の人型に落ち着いたらしい。人語を介し、知恵も回るようになってきたと。やがて、人間では手がつけられなくなっていったという。 「デヴィランの進化は著しく、我々人類の力では、抑えきれなくなっていきました。武器も魔法も通用しなくなって……」 コーデリア時代のことを思い出しているのだろう。コデロの顔が、険しくなる。 『最初は動物で怪人を作っていたんだな』 奥へ進むと、人間が入っているカプセルも。フーゴのダンジョンで見た物とは違って、このラボは本格的だ。 『こんな地下要塞を建設していたとは!』 かつて倒した怪人のクローンも、カプセルに収められていた。 「ベルト様、これは」 コデロが、女性の死体が入っているカプセルに目を向ける。
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