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「島の全容を覆うのは、人工物だった。それも、大昔のテクノロジーだ。最近、手を加えられた形跡があった」  今でこそ機能していないが、大昔に沈んだ、浮遊型の人工島だという。 「もし、奴らの狙いが、この人工島を浮き上がらせることだとしたら」 「魔法石強奪の秘密も」  ノアも、「うむ」とうなずく。 「妖精王、これは何なのです?」 「浮遊島【クイラス】。神々が善悪に分かれて争っていた時代に古代エルフ族が建造したという人工島です」  我々が島だと思っていた物体は、古代エルフが悪しき神に対抗して作った戦艦だった。 「中でもクイラス要塞っていえば、エルフ要塞でも最大級で、その気になれば大陸すら消し飛ばしたって話だよ」 「おとぎ話の世界だとばかり、思っていましたわ」  神話に詳しいラキアスでさえ、要塞の存在は絵空事に思っていたらしい。  「しかし、作動方法は誰も知りません」  もともとエルフの所有していた土地なら、物資もそれなりにあるから多少は不自由なく行きられると、妖精王は判断したようである。  どうせ、忘れられた土地だ。  兵器として扱うことはできなかろうと。 「しかし、それをアロガント末裔が要塞として再利用しているとしたら?」 「おそらく、レプレスタもある程度はサッシが付いていたと思います。何度も調査隊を派遣しているところを見ると」  敵の動きを察知していたからこそ、周辺の貴族や国家と手を組むことに熱くなっていたというわけか。 『細かい作動方法は、まだわかっていないんだな?』  リュートが、女王に尋ねた。 「はい。我々エルフ族でさえ、あんな巨大要塞を動かす方法は知りません。ですが、アロガントは執念深い女。何か掴んだのかも」  だから、動き出したと思われる。 『そうか。破壊要塞を浮かばせることができれば、一気に形成は逆転する。一刻も早く、阻止せねば』 「お気をつけくださいまし。実は、先の妖精王がアロガントに肩入れしていたのには、ワケがあるのです。二人の間には、子供がいまして」  その子孫は、今でも暗躍していて、密かにレプレスタ打倒のチャンスを伺っているとか。 「名を【レネゲイド】といって。今でも活動しています」  裏切り者レネゲイドか。 「ウワサでは、コウガと並ぶ実力者と聞きます。怪神の力も得ているのでは、とも」 「レプレスタにも、スパイが潜んでいると?」 「確証はありませんが、可能性は否定できません」  たしかに。レプレスタ城の警備があっさりと突破されたことに、リュートは疑問を持っていた。それが、レネゲイドの仕業なら。 「眉唾ならそれでいいのですが、油断はできません。くれぐれも、警戒を怠らぬよう」 『わかった。気をつけるよ』 「いざとなれば、我々も協力いたします。もう昔のように、エルフ同士が言い争う時代ではありませんから」 『よろしく頼む』  女王との面会を終えた。   「浮遊島クライスに、レネゲイド。難題は山積みだね」  帰りの車内で、ノアはため息をつく。 「聞いた話だと、イクスを襲った怪人たちは、自分たちを子孫と名乗っていたそうです」 『そいつらが、アロガントの末裔だと?』 「だと言っていた。おそらく、レネゲイドとは彼らの仲間だろう」  ノアの発言を聞き、リュートは自身の推理を話す。  「先の襲撃は、そのレネゲイドというスパイが仕組んだとでも?」 『可能性があるとすれば』 「なら、我々が持ち場を離れたのは失敗だったかもしれませんね」 『あちらにはイクスがいる。彼女のほうがずっと動きやすかったのだが』  彼女は自身がエスパーダであると、国王に知られている。  拘束などはされないだろうが、自由を奪われる可能性は高い。  監視も厳しくなるだろう。  とはいえ、いざとなったら強引に突破するだろうが。 「王は我が子に過保護すぎるのです。いくら嫁入り前だといえ、戦えるものを戦場へ行くなとは。今、戦えるのはエスパーダしかいないのに」  胸の前で、コデロは拳で手をミット打ちのように叩く。 『とにかく祭りの当日まで、警戒を怠らないようにしよう』  城へ帰ると、イクスがヴァイオリンを持ってコデロを出迎えた。蒼いミニのドレスに身を包んでいる。演奏会本番の衣装らしい。 「早く着替えてくださいまし。練習ですわ」 「私も、ですか?」  コデロは耳を疑う。 「ワタクシの監視も兼ねて、あなたには練習に立ち会ってもらうと、お父様が」  いいアイデアかも知れない。  実際、イクスを止められるのは現時点でコウガだけだ。  アテムでは心もとない。 「私はこのままでいいです」 「ダメですわ。あなた用のドレスを仕立てないと!」 「ええ……」  珍しく、コデロが絶句した。正装は苦手らしい。 「レネゲイドですか。どんな相手だろうと、倒すまでですわ」 「あなたなら、そう言うと思っていました」  その後の数日、午前中はドレスの採寸、昼以降はイクスと練習をする日々を送った。 「うんざりですわ」 「これも、祭りまでの辛抱です」  街の様子も見られない。  今頃、レプレスタは飾り付けが行われているだろう。  監視しておきたいが、街の様子を探る役割はアテムに譲った。  こうして、祭りの本番を迎える。

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