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 翌朝、『純喫茶 ロッコ』二号店に珍客が。 「コデロ、あなたにお客様よ」  小柄の女性がコデロの起床を待っていた。見たトコロ、ドワーフである。 「あなたは、昨日の?」  伯爵に捕まっていたドワーフだった。  カレーを口にしているようだが、コデロと違い、パンにつけて食べている。クレーンのように腕を上へと持ち上げて、口の中へとそっと下ろす。 「おう、あんたが昨日の魔物をやっつけてくれた、仮面の騎士かね」  ドワーフの少女が、メガネをかけた。本来が、このスタイルなのだろう。  間近で戦闘を見ていたのだ。今さら正体を隠しても仕方あるまい。 「まあ、そうなります。コデロといいます」 「吾輩はノア・ハイデン。ドワーフだよ」  ノア・ハイデンが、イスから立ち上がった。  が、椅子の背が高かったせいか、あまり背丈が変わらない。 「ハイデン……あなたが、ラキアス様のおっしゃっていた?」 「ラキアスの友人かね。なら、話が早い。吾輩は、ラキアスの元学友だ共にイスリーブで、魔法学を学んだ」  イスリーブ近辺には、里帰りで訪れたという。 「近隣の村にいたが、緊急の依頼が入った。ギルドに赴いて依頼を受けたが、仕事自体がワナだったんだよ。ギルドも欺くほどの巧妙な手口だ」 「どのような依頼でしたか?」 「ラキアスが怪人を連れた謎の集団に捕縛された! とかで」  ノアは道中、あっさりと捕まってしまったのだとか。  嫌な予感があったが、見事的中したらしい。 「あの、その怪人は、私が倒しました」 「かーっ! そうだったのか! なんだぁ」  どうやら、ペンギン怪人の狙いは、ノアだったらしい。  本来ならばラキアスを拘束し、ノアに何かの手伝いをさせるつもりだったのだろう。 「なのに、奴隷商人の元に連れて行かれた、と」 「そうなんだよ。どうも引き渡し過程で手違いがあったらしい。何度吾輩は技術屋だと説明しても、『肉ドレイ』としか思ってくれなんだ! 頭にきたから、そこらじゅうの女どもを開放した後、その女どもに強化魔法を浴びせて商人たちをフルボッコにしてやったさ」  勝ち誇ったように、ノアはドヤ顔で腕を組んだ。  月の石を狙ったのでは、というラキアスの想像は外れていたようである。 「返してほしくば石を持ってこい」と、脅す算段だったのかも知れないが。 「傷の方は?」 「なーに、大したことないよ。これでも頑丈な種族だからさ。もっとも、吾輩は頭脳派だがね」 「安心しました。して、ご用件とは?」 「いやね、コウガという謎の騎士を追っていたら、『ここの常連客だ』とウワサを聞きつけてね」  パンをカレーに浸して、ノアはパクリと口の中へ。 「あんたの事情はだいたい知っているよ。コーデリア王女」 「どなたにお話を聞いたので?」  コデロが、ノアを警戒した。 「当てずっぽうんだったんだが、まさか正解かね」 「なぜ私が、王女だと」 「武器だよ」  そうか。聖剣・憤激ボルケーノなんて持っていれば、イヤでもコデロが王族だと分かってしまう。 「ではコデロくん。あんたの武器を、ちょいと見せてもらいたくてね」  ノアが、手を差し伸べてくる。  頭脳派の割にゴツゴツした指を持つ手に、大事な形見を桶というのだ。 「我が必殺の武器を手にして、何を企むのです?」  もちろん、コデロは警戒していた。おいそれと渡さないだろう。 「何も、技術を教えろというのではない。それは、光子剣であろう?」 「よく分かりましたね」 「その剣は、我がドワーフ族が鍛えたものだよ」  昔は、大量に生産されていたという。  が、光子の剣を鍛える技術は、歳を重ねるごとに失われていった。  科学や魔法文明の発達により、そこまで高出力の剣は必要とされなくなってきたからだ。 「今では柔らかい魔法鉄を使った剣に魔力を流し込む粗悪品を、『光子剣だぜ!』と言い張る始末。まったく、ドワーフの風上にも置けぬ」  大げさに、ノアは肩をすくめる。 「で、完璧に近い光子剣が、目の前にある。吾輩なら、仕組みを理解すれば、更にこの剣を強化できる。無償で」 「タダで、この剣を強くしてくださると?」 「助けてもらった恩としては、これでも安い方さ。いかがかな?」  コデロは、リュートに意見を求めてきた。 「いかがいたしましょう?」 『条件を飲もう』  リュートは、当然即答する。 「なぜです! これは我が国の至宝。それを、ドワーフに預けるというのですよ」  小声ながらも、強くコデロは抗議してきた。 『ドワーフだからというより、彼女だからこそ、預ける価値はあると判断した』 「何ゆえです?」 『この武器の出力不足を、見抜いたからだ』  正直な話、これほどまでに弱いと思っていなかったのである。 「大怪人を倒しました!」 『あれはライジングフォームの力だ。厳密には、憤激・改の力じゃない』  あのときは、コウガの力で強引にねじ伏せたに過ぎなかった。  光子剣と銘打ったものの、あの剣の真なる力は、発揮できていない。  情報も知識も、リュートには足りなかった。  科学だって、万能じゃない。    これでは近い将来、コウガの実力は頭打ちになるだろう。 『郷に入りては郷に従え、という言葉もある。ここはひとつ、彼女の案に乗ろうじゃないか』 「あなたがそこまで言うのでしたら」  コデロも折れてくれた。ベルトから剣を出して、ノアに差し出す。 「では、丁重に扱おう」  裏返したり、折れた傷口を確認したりと、ノアは剣を改める。 「いかがです? 高級品ですが」 「柄のほうが素晴らしいよ。エネルギー効率がよく考えられている」  ドワーフのお墨付きをもらって、リュートはホッとした。  自分のテクノロジーは、異世界でも通用するようだ。 「ただ、刃の方だけど……」  刃を見つめながら、ノアは顔をしかめる。 「これは、ひどいね」  辛辣な意見が、ノアの口から漏れた。

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