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 今日は、領主と会う約束の日だ。  執事に招かれ、コデロたちは商業区の責任者、ヘインズリー侯爵の元へ。  領主にしては若い男性が、こちらに微笑んだ。 「イスリーブ事業団の責任者、ドレイク・ヘインズリーだ。話は聞いている。ラキアスを助けてくれたそうで」  ドレイクと名乗る男は、服装は貴族風だが、親しみやすさが滲み出ていた。整えているのか、顔にヒゲはない。 「とんでもありません」  膝を突きながら、コデロは首を振る。 「楽にしてくれ。茶を用意する」  ソファのある応接室に通された。  メイドが、ティーパーティのセットを載せたトレーを持ってくる。 「ラキアス様、ここにいらしては!」 「よいのです。ようこそ皆さま」  メイドの脇を抜け、ラキアスが現れた。真紅のドレスに身を包んだラキアスは、コデロたちに見事なカーテシーを見せる。大人も顔負けだ。 「いやいや。こんにちは、お嬢ちゃん。幼稚舎のバスでもお見かけしましたが、カワイイお子様ですな!」 「まったくです。実に立派な方です」  ダニーに続き、コデロも心からの感想を述べた。 「妻だ」 「はあ?」  ドレイクに訂正され、真顔でダニーが聞き返す。 「あらら、わたくしラキアス・ヘインズリーは、ドレイクの妻です。よく娘と間違えられますが」  アテムとドレイク以外の全員が、絶句した。 「マジですか?」 「ええ、マジですわ」  ダニーの質問に、ラキアスはコクコクとうなずく。 「すまん、説明が必要だった。妻はエルフでな。魔術に長けていて、普通のエルフより若いんだ。小さな見た目もそのせいだよ。おかげでオレは、カワイイ物好き呼ばわりさ」  娘がいるそうだが、毎回姉妹と間違えられるらしい。 「すぐに分からなかったのですか?」 「エルフを嫁にもらうって聞いていたから、てっきり背の高い美人が来ると思ったんだよ! そしたら、こんなチンチクリンが来るなんて」  不満そうに、「あらら?」とラキアスが頬に手を当てる。 「では、あなたはチンチクリンのわたくしでは満足できないと? わたくしが声をかけてあげなくては生涯独身だったでしょうに」 「はいはい、満足してますよ! ダンナさんにしてくださってありがとうございましたね!」  なかばヤケ気味に、ドレイクは返答した。  ラキアスは魔術師で、現国王をサポートしているらしい。  主に、治癒魔術を教えているとか。 「国王に、治療の秘術を習得する必要があるのですか?」 「違いますわ。『治癒に見せかけた暗殺を防ぐため』に指導していますの」  コデロと出会った日も、後進の魔術特訓を行った帰りだったそうな。  馬に近づいたのは、魔法で治療できないかと思ったからだろう。 「これより危険な話をする。お前は部屋で、娘の魔術練習を見てあげなさい」 「あら、わたくしは怖くありません。お邪魔しませんから、お話しなさって。娘は勝手に上達しますわ」  ラキアスが、アテムの腰に居座った。 「わたくし、英雄譚に目がありませんの! 人知を超えた存在を迎え撃つ、孤高の勇者! 人ならざる力を己の身に宿し、孤独な戦いを強いられる。それでも、人々を守る盾となる存在。彼らをサポートする人間たちも、力及ばずながら英雄の支えとなる様も素敵ですわ」  どうやら、ラキアストは馬が合いそうだ。  ヒーロー物を一緒に鑑賞できたら、友だちになれたかも知れない。  メイドが持ってきた、茶菓子をいただく。誰も喉を通らない中、勝手知ったるアテムはバリバリとビスケットをむさぼっていた。豪快な食べっぷりを、ラキアスもマネをする。  二人の愛らしい光景を見て、みんなは食が進むように。 「事業団が管理している店舗の問題だったな。我々も手を尽くしているが、未だに尻尾を掴めん」 「デヴィランの仕業かと」  コデロが意見をした。 「ああ、何かと世間を騒がせている集団か。オレの管轄しているエリアでも悪さを始めたか。オレは恨まれる筋合いはないぞ」  一連の闇ギルドが活発な動きを見せているという。その裏には、必ずデヴィランの影があったらしい。 「冒険者を雇って応戦しているが、いかんせん相手が強すぎる。人間じゃないからな」  人類や亜人種の混成チームで問題に取り組んでいるが、改造人間であるモンスターに太刀打ちできないそうだ。 「未解決の問題を発生させ、領主様の力を疲弊させることが、ヤツらの目的かと」  自身の推理を、コデロはドレイクに聞かせる。  ヘインズリー家は、イスリーブ国王の親戚筋だ。領地を任される程の実力者である。誰に狙われてもおかしくはない。 「デヴィランが入り込む要因となったのは?」 「ロデントス伯爵の仕業とみて、間違いないだろうな」  肩を落としながら、ドレイクは頬杖を突く。   「この街で起きている一連の事件には、ロデントスが関わっていることは、分かっているんだ」  だが、敵はなかなかシッポを見せず、今でものうのうと重要ポストに就いている。 「騎士団というのが手強くてな。こちらも私兵はいるが、ヤツらには手も足も出ない」  その正体はデヴィランの兵隊だ。 「例のナメクジ怪人の証言だけでは、足りませんか?」  あの怪人は、ロデントスが関与していると白状した。 「証人が死んでしまってはな」  役所に突き出せれば、まだ打つ手はあったかもしれない。 「モノは相談なんだが、ロデントスを……という訳にはいかないんだろな」  自分に替わって、ロデントスを討てというのだろう。

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