特撮ヲタ、姫騎士のヒーローベルトに転生! ~二人で一人の復讐者《ヒーロー》~ 
3-1  『戦闘データが盗まれたぞ!』「ならばもっと強くなればいいだけのこと」 ウツボ戦艦怪神『リヴァイアサン』

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 コデロは、翼のついたバイクで空を滑空していた。  隣には、同じくイクスがバイクで空を飛ぶ。 「ベルト様、目的地はあそこですね」  海の上では、激戦が繰り広げられていた。幌を掲げた何百隻もの戦艦が、たった一隻の巨大戦艦に集中砲火している。  だが、ビクともしない。むしろ、相手の戦艦を近代的な大砲で蹴散らす。  その形状は、リュートの世界で活躍していた物体だ。  何丁もの大砲を積んだファンタジー的武装船の、何世代も先を行く。 「あれはなんですの?」  イクスが、海を暴れまわる物体を指差す。 『あれは戦艦・大和。こんなところで出会いたくはなかったな』  リュートは、あの戦艦の形状を知っていた。  日本人なら誰でも馴染みがある、戦時中の船である。 「有名なのですか?」 『オレの故郷で作られた、最強になるはずだった戦艦だ』 「なるはず? 活躍しなかったんですか?」 『活躍する前に、沈んだのだ』  しかし、その巨大戦艦がこのファンタジーな世界に蘇った。しかも、ウツボの姿まで借りて。  ウツボ状にうねりながら、巨大戦艦は方向転換をする。 『凄まじい火力だ。油断するな、コデロ』  リュートは、バイクをオートモードにチェンジした。 「承知。では……変身」  ハンドルから手を放し、コデロが変身ポーズを決める。  コデロは変身し、伝説の戦士【コウガ】となった。目指すは、海上にある敵の本拠地である。 『来たか、コウガめっ! 我は、ウツボ戦艦怪神。その名も【リヴァイアサン】! コウガよ、クイラス要塞を沈めたくらいでいい気になるではないわ!』  ウツボ怪神の艦橋から、声が発せられた。よく見ると、司令部に人間の顔が無数にへばりついている。 「レイジングモードで、様子を見ます」  標準的な強さを持つ【レイジング】で、敵の動きを探った。 『死ねえ!』  ウツボ怪神が、コウガのいる空へ向けて砲撃してくる。  集中砲火を食らい、コウガは近づくどころではない。 『思っていたより、砲台がデカイな!』 「ですが、精度が低いです。殺戮や破壊・虐殺には長けているようですが、戦闘に慣れていません。我々の敵ではありませんね」  警戒するリュートをよそに、コデロは冷静である。 『ボクたちも行こう、イクス』  ノーマンが、イクスに呼びかけた。コデロの兄であり、死後、イクスと肉体を共有している。 「変身ですわ」  彼女の姿も蒼いコウガこと「エスパーダ」である。  リュートを捕捉し、砲撃を開始した。主砲だけではない。背面の甲板から、ミサイルまで撃ってきた。 「コデロの言う通り、こんな豆鉄砲、目をつむっていてもよけられますわ」  エスパーダことイクスが、軽々と砲弾を避け続ける。  コウガこと、リュートと肉体を共有しているコデロも、砲弾とミサイルの雨を意に介さない。 『反撃だ。フィーンド・バスターッ!』  艦橋に向けて、コウガは発砲した。司令室にある顔を次々と潰していく。 『ボクらも。ギャラルホルン!』  イクスたちエスパーダ組は、マキガイ型の片手持ち重火器を召喚した。大砲の中に、グレネードを撃ち込む。  グレネードを放り込まれた主砲が、爆発して無力化する。  だが、艦橋の顔が減る気配がない。 「妙です、ベルト様」 『いや。数は確実に減らしているはずだ』  ただ、異常なまでに数が多いのである。 『この戦艦は、一〇〇〇人を超える精鋭の頭脳を搭載した最強の戦艦である! その戦闘力は、貴様らが破壊したクイラス要塞を上回る! たった一人で、一〇〇〇人分もの叡智には敵うまい!』  誇らしげに、ウツボ怪神は語る。 「なるほど。有象無象ばかりを寄せ集めて改造された船というわけですか」 「ザコが一〇〇〇匹同化しようと、我々の敵ではありませんわ」  コデロとイクスは、辛辣な言葉を浴びせた。 『相変わらずだね。ウチの姫たちは』  ノーマンが呆れる。 『だな。だからこそ頼もしい』  リュートがベルトに意識を集中させ、魔力を増大していく。 「ベルト様、一気に行きますか?」 『もちろんだ。このままでは、犠牲者が増えるだけ』  今はからめ手より、全力で撃ち込むのがいいだろう。 『トゥア!』  バイクから直接、上空へジャンプした。  エスパーダも、同じように飛ぶ。 『二人同時に、キックだ』  コウガは、シャイニングフォームへと変形する。赤と金のヨロイへと、姿が変わっていった。 『憤激・リ・ボルケーノ!』  足首の、聖剣【憤激・改】に魔力を流し込む。これにより、自身の足を一本の聖剣へと変質した。  エスパーダも、【女君主ローデス】モードへと変身する。両足に、魔力を流し込んだ。  サーベルが、蹴り足に絡みつく。ドリル状に変形した。 「なんだ、その剣は?」 「我が秘宝、【バルムンク】ですわ。キツイ一突きをお見舞いいたします」  二筋の光が、艦橋へと突き進む。 『なんと! 我が無限の砲撃に丸腰で挑むとは! 策をなくしたかコウガ!』 『そんな武装過多でオレたちを仕留められないキサマのほうが、策なしと見た!』 『なにを。コウガめぇ!』  艦橋正面の砲塔が、コウガに狙いを定めた。  コウガは、砲台の真正面に。しかし、キックの構えで直進する。攻撃をかわす気はない。 『玉砕覚悟か。それもよし。はなばなと散らせてやろうぞ!』  怪神が、砲弾を発射した。 『散るのは……お前たちだ! コウガ・シャイニングキック!』  戦艦をも撃墜する砲弾を、コウガはキックだけで破壊する。 『なあ!?』 『終わりだ、ウツボ怪神!』  コウガのキックが、艦橋をへし折った。 「トドメですわ!」  追い打ちで、エスパーダ・ローデスが司令部に蹴りを食らわせる。  竜巻の魔法を同時に展開して、顔を細切れにしていった。 『なああああ!? 無敵の戦艦が!?』  怪神戦艦が、爆炎を上げる。船体から、次々と火柱が上がった。 『人々を守るために戦うコウガが、破壊するだけの機械に負けるわけがない』 『壊すだけの兵器を、無敵とは言わないよ』  黒煙を上げて海に沈んでいく戦艦を見ながら、コウガたちはバイクで去っていく。 『デヴィランの神よ!』  花火のような光を放ち、古の巨大戦艦は今度こそ絶命した。

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