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 コウガのバイクは、馬よりも早い。あっという間に、怪人たちがひしめく地点に到着した。  コデロは、一旦バイクをしまう。  岩場に隠れ、様子をうかがった。 「なんて数でしょう?」  おびただしい数の怪人が、アロガント城塞跡を拠点に集結している。 『奴らは、再生怪人たちだ!』  怪人たちのどれもが、以前コウガが倒した怪人たちによく似ていた。  色違いというべきか。  また、ボディや腕・足に追加武装をされた強化型の姿も見える。  人間型の怪人ばかりではない。  動物の改造体まで大量に集まっていた。  数名の戦闘員が、気性の荒い牛型の戦車に引っ張られて転倒している。 『まるで劇場版だな!』 「劇場版とは?」  映画どころか、TV自体知らないんだった。 『特撮番組には、お祭りみたいに怪人がひしめいて大乱闘になる特別な演目があるんだ』 「はあ。舞台のクライマックスのようですね」 『舞台か。そ、そうかもな……』   あまりリュートは、ヒーローショーは見に行かない。  本編を知らない脚本家が書いているのか、シナリオに難がある場合が多いからだ。  ひたすらヒーローをピンチにして、客の不安を煽る展開も好きではない。 「我々がオオカミ怪人と戦っている間に、他の大幹部が勢力を拡大していたようですね」 『そうらしいな。とにかく、異常事態だということだ』 「その割には、嬉しそうですね」  ヒーローファンとしての血だろうか。  これだけの悪を相手にするのだ。いやでも緊張する。 『なぜだ。こんなにも興奮している』 「どうしようもないですね。でも、その感情はキライではありません」  家族の仇が、あれだけいるのだ。  コデロも、はやく攻撃しようと考えているらしい。  怪人の群れが、城塞跡の頂上に注目した。動物型ですら、黙り込む。  現れたのは、女型の怪人だった。  全身を蛇の鱗のようなボンテージで包んでいる。ハイレグが際どい。  頭にコブラのような王冠を載せていた。  ヘビが巻き付いた杖を片手に持っている。 「あの崖の上にいるのが、ボスでしょうか」 『らしいな。あれは、大怪人だ』  大怪人とは、怪人の中でも最上位に位置する最強の存在だ。  煌牙シャイニングフォームでなければ勝てない。  女性型怪人が、配下を見下ろしながら呼びかけた。 「聞け、魔物たちよ! 私はかつてアロガントの女王、マーリトと呼ばれていた者! 今ではデヴィランに忠誠を誓い、魔物【メディーサ】と名を変えた! 今こそ復讐の時!」  顔は少女のように若いのに、声からして老婆のようである。  どれだけ生きてきたのか。 「やはり、黒幕はアロガントだったようですね」  黒幕がアロガントの女王であるなら、大怪人が相手なのもうなずける。 『しかし、もう何百年も前なんだろ?』  アロガントが流刑にされたのは、かなり古い記録だったはず。 「エルフの寿命は長いのです。それまで、準備をしていたと考えれば妥当でしょう」  ならばずっと以前から、デヴィランという組織は存在していた可能性がある。 「本日、イスリーブの王子も、憎きレプレスタの元に滞在しておる! イスリーブは、我々の誘いに抵抗した! もろとも潰してしまえ!」  怪人たちが、歓声を上げた。 『あいつら、イスリーブとも戦争をする気なのか』 「これだけの兵を集めたのは、世界を敵に回すためだったのですね」  なんという執念か。  しかし、それも終わりだ。  バレないように、監視塔を登る。 「最大の敵は、コウガのみ! とはいえ、つい最近エスパーダなる新たな戦乙女が誕生したらしい。しかし所詮、紛い物に過ぎぬ! 我々の敵ではない! ともに戦え! コウガに死を!」  怪人たちは、未だにコブラ大怪人の演説に耳を傾けていた。 「不意打ちでも、よかったのでは?」  たしかに、有効だろう。コウガが直接、バイクに積んだ武器の類で壊滅させても構わないのだ。その方が戦力も削げる。 『考えたけどな、有効打じゃない』 「なにか、策がおありなのですね?」 『まあ見ていてくれ』 「それはそうと、あの横にいる女は何者でしょう?」  白いローブで顔半分を覆っている女性が、コブラ大怪人の側に立っている。配下とはいい難い。むしろ、彼女のほうが大怪人より不気味に思える。 『ただならぬ気配を感じるぞ』 「もしかすると、大怪人より強いかも知れません」 『……おっと』  突然、ローブの女がこちらを見た。  慌てて隠れる。うっかり深入りしすぎてしまった。気づかれていなければいいが。  『そこまでだ、怪人共!』  高台を登りきり、コデロは周囲を見下ろす。  怪人たちの視線が、コデロに殺到した。 『レプレスタを危険に晒そうとする悪党ども、許すわけにはいかん! 貴様らのような輩は、このコウガが引導を渡す!』  怪人たちを指差しながら、コデロが見得を切る。 「コウガ! フェンリルを破ったというコウガだというのか⁉」 『行くぞ!』  勢いよく、コデロは右手を突き出した。手をゆっくりと、腰まで戻していく。息を吐きなが  息を吐きながら、ベルトを触る左手を、右から左へスライドさせる。 『変……身!』  天空へと右手を掲げ、空を仰いだ。  コデロの全身を、赤い装甲が覆う。 「吼牙コウガ・レイジングフォーム!」  吼える牙、レイジングフォームへと、コデロは変身した。

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