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 エスパーダとなったイクスは、戦闘員を倒しつつ住民を避難させていた。 「本来、わたくしはこんな役割ではありませんのに」 『仕方ないよ。今は、役割に徹しよう……ん?』  人々を安全な場所へ誘導する中、怪人の姿が。城の監視塔を乗っ取り、コウガの戦いをじっと見ている。  怪人は、目が一つしかない。眼球の部分が望遠鏡のような筒状になっていた。筒だけが、前後に動く。  あれはカメラだろうか?  頭だけが怪人ぽく、身体は全身タイツのようだ。マントがかろうじて、怪人らしさを出している。 『あいつ、コウガの戦いを監視しているぞ』 「殺しましょう」  コウガを観察して何をする気なのか、わからない。  とはいえ、イクスは胸騒ぎがした。  あの行為は、よからぬことに用いられる気がする。 「ひええ!」  怪人が慌てふためいた。ここは安全だと踏んで、油断していたのだろう。 「お覚悟を!」  イクスはサーベルを、怪人へ突き刺そうとした。  だが、イクスのサーベルはどこからか湧いてきた刀によって阻まれる。  望遠鏡のような怪人が、混乱に乗じて逃げていく。 「逃しませんわ!」  サーベルを繰り出すが、またしても刀に弾かれた。 「なんと。お邪魔ですわ!」  刀の持ち主に、何度も突きを食らわせる。  しかし、すべて刀によって防がれてしまう。  イクスの剣を止めたのは、節足動物を人間の形にしたような怪人である。頭部の角が大きく二つに割れていた。クワガタかと思ったが、違う。あれはなんだ? 『アノマロカリスだね』 「なんですか、それは? あの化け物の名前ですか?」 『エビやムカデに似た古代生物だよ』  アノマロカリス怪神に向けて、イクスは構える。 「あなたも、ヘラとかいう化け物の仲間ですの?」 「某の名は、アノマロカリス怪神かいじん【ベルゼビュート】。武人を極めた末に、怪神の域に到達した。人の器を捨てた某に、敵なし」 「人間の志まで捨てたあなたでは、人類には敵いませんわ」  怪神の刀とイクスのサーベルが、何度も火花を散らす。 「もはや改造なんてズル行為を受けた段階で、あなたの負けですの」 「同じように人を捨てた貴様に、某の思想はわかるまい」 「人を守るために、わたくしはこの力を得ましたの。人としての魂まで売り渡したつもりは、ございませんわ!」 「なるほど。そんな姿になってまで、あくまでも人として生きるか」  興味を失ったかのように、怪神は刀を収める。手には、黒い球体を持っていた。 「だが、人は必ず裏切る。力を得た末に見捨てられるのは、貴様らのほうぞ」  怪神が、球体を地面に投げつける。煙幕が発生した。  すぐに晴れていくが、怪神の姿はない。 「ほざいていなさいな、負け犬」  次は、必ず倒す。

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