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 怪人は、兵士を胴体の側まで引き寄せた。 「はぁーい、ぱっくんちょ、っとぉ」  マムシ怪人が、兵士の首元を甘噛みする。  牙が刺さったのか、兵士の首から血が流れた。  白目をむき、兵士がつま先をピンと伸ばす。  神経毒らしき物質を、首から注入されたのだろうか。  兵士は王子を守る責務さえ忘れて、快楽を貪っている。  最期には、全身の骨を砕かれ、絶命した。 「では、いっただっきーまーす。あーん」  怪人の唇が、脇腹まで割ける。まるで、ヘビが口を開けるかのように。  息絶えた兵士を、怪人は丸呑みする。  ディアナが悲鳴を上げた。  「王子さまぁ。一緒にキモチイイことしよっ。よかったらぁ。そこのお嬢さんも一緒にでもいいからぁ。仲良くエッチッチしよっ」 「お前などに、誰が与するものか! ディアナ姫! 部屋に戻っておれ! ここは、余が食い止める!」  剣を抜き、王子はマムシ怪人の注意を引く。  つまらなそうに、怪人はため息をついた。 「しょうがないなぁ。スケルトン教授からはぁ、殺さず連れてこいって言われてるんだけどなぁ。やっぱり食ーべちゃおっ」  ギャルっぽい舌っ足らずな口調で、ラミアと名乗るマムシ怪人が王子に襲いかかる。 「逃げるんだディアナ姫!」  王子が、ディアナをかばう。 「妹をかばうのは、姉の役目ですわ!」  二人共を抱きかかえ、イクスは飛び退く。城のそばに着地した。 「イクス王女、おケガは⁉」 「よろしくてよ。それよりあなた方は、王子とディアナを!」  駆けつけた兵士に二人を任せる。 『今変身したら、確実にキミがエスパーダだってバレるよ!』 「妹を守れるなら、結構ですわ……参ります!」  イクスは軍刀を抜く。  空間を切り裂いた。青い光が、イクスに降り注ぐ。 「変身、ですわ!」  青い装甲が、イクスを覆った。ブルーのマントがたなびく。 「お姉様が、エスパーダ……」  戸惑いと安堵とが入り混じった顔をしながら、ディアナは意識を手放す。 「王子、すいませんが妹をお願いします」 「承知した!」  王子は気絶したディアナを抱きかかえ、室内へ。 「へえ。あんたがエスパーダなんだぁ。まさか、お姫様だったなんてぇ。でもぉ、お強いんでしょお? エッチな相手してよぉ」 「あなたごときが、ワタクシを満足させられますの?」  一瞬、マムシ怪人が真顔になる。 「アタシで満足できないって、ビッチってことになるけどぉ?」  すぐに軽口に戻るが、トーンは低い。 「冗談は顔だけになさってくださいまし。いくらビッチでも、人間を丸呑みになんかしませんわ。ささ」  あえて、エスパーダは右手を差し出す。 「どうぞ、食べれるものなら食べてみなさいな」 「なめるなよ年増ぁ!」  挑発にのったマムシ怪人が激昂した。  怪人の下半身が、容赦なくエスパーダの腕に絡みつく。剣の持ち手を塞がれた。 『これじゃあ、刀を抜けない!』  ノーマンが、慌てだす。 「アハハ! 大したことないじゃあん。自分で煽っておいてやられるなんてさぁ」  ジリジリと、エスパーダが怪人に引き寄せられていった。 「最強の剣士と言われてるエスパーダって、どんな味がするんだろぉ?」 「御託はいいですわ。さっさとお解きになったら? 大変なことになりますわ」 「え、なに? 命乞いしてんのっ? 超ウケるんですけどぉ!」  ゲラゲラと、怪人が笑い出す。  しかし、その嘲笑が絶叫へと変わった。 「アタシの足がああああああ!」  マムシ怪人の尾が、ぶつ切りにされて宙を舞う。 『いつの間に斬ったんだ⁉』 「体を入れ替えたときですわ」  居合である。  エスパーダは身体を横移動させただけで、剣を抜いたのだ。 「抜くのは鞘の方。刀ではありませんわ」 『それでも、全身に巻き付かれていたら終わっていたよ!』 「ご心配なく、抵抗はしていましたので」  エスパーダは移動していると見せかけて、巻きつき攻撃が全身に及ばないよう体移動していただけ。  超高速で、怪人の尻尾をかわしていた。 『とんでもない技術だ』  尾をすべて斬られて、マムシ怪人は暴れまわる。 「許さねえ! もうエッチなんて考えるかよ! 形も残さない程に食い散らかしてやる!」  切れた尾を器用にバウンドさせて、マムシ怪人が飛びかかった。 「必殺技とやらを、試しましょ」 『ああ。キミらしい技を編み出したよ』  だが、怪人は身体を蛇腹状にする。 「ギャハハ! どうよ! アタシは身体を蛇腹状にして、ダメージを散らすことができる! いくら切れ味のいい刀があっても、すり抜ける!」 「誰が斬るとおっしゃいましたか?」 「ああ⁉」  マムシ怪人が、顔を歪めた。 「エスパーダ・リーパー」  上段回し蹴りを、エスパーダは浴びせようとする。青い軌道を 描き、怪人のこめかみへ吸い寄せられた。 「そんなミエミエのハイキックが、あたしに当たるとでも」 「当たりますのよ」 「あぁあ、んっ⁉」  キックは見事に、怪人のアゴを捉える。  インパクトの直前、蹴りの軌道を変えたのだ。カマキリの前足のような動きで。 『ブラジリアン・キック、だったけ』  リュート・オリベの世界にある格闘技、「カラテ」の技だ。  マムシ怪人の首は半回転し、上下逆になった。 「ごはあ!」  血ヘドを吐き、マムシ怪人は虫の息に。 「ワタクシの敵ではありませんでしたね」 「た、助けて、スケルトン、教授ぅ!」  デヴィランの関係者らしき人物の名を口にしながら、マムシ怪人は爆発した。

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