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 険しい顔立ちの猛者たちが、コデロを睨んでいる。  やはり、まだ信用されていないのだろうか。 「気にするな。追っ払おうとしちまった手前、どんな顔をしていいのか分からないのさ。無理に仲良くなる必要もないが」  ダニーが、コデロの肩を叩く。 「ようこそダニー・バンナ様。依頼書を確認しますかぁ?」  受付に座る耳の尖った女性が、明るい笑顔で出迎えてくれた。 「この嬢ちゃんの登録を頼みたい」  受付嬢が、コデロの顔を見て驚く。 「ああ、あなたが! 街を救って下さって、ありがとうございます! 他の冒険者さんたちも、内心では感謝しているんですよ! 自分たちも貢献したのに、報酬は誰も受け取らなくて。全額あなたにって!」 「その報酬額も含めて、登録をしてもらいに来た。頼めるか?」 「はい。お待ちをー。この紙に必要事項を書いてくださーい」  コデロは登録用紙を渡され、項目に記入していく。 「えーと、コデロ・シャインサウザンド様、と」  エルフの受付嬢が、登録を開始する。何かに情報を打ち込んでいるようだ。見た目はPCではなく、タイプライターである。  受付に添え付けられている機械から、妖しげな光を放つ宝石が出てきた。 「これは我々エルフ族が作成した『スマート・タグ』でーす。この腕輪を、なくさないでくださいねー」  エルフ受付嬢が、カウンターの引き出しを開けて細い腕輪を出す。宝石を腕輪のタグにはめ込む。  持たされたのは、小さな腕輪だった。ドッグタグを小さくしたような長方形の鉄板がついていて、中央部には紫の水晶が光っている。ベルトの色は黒い。水晶に触れると、文字情報が虚空に浮かぶ。 「なるほど、このタグをつけてなかったから、私が冒険者でないと気づいたのですね」 「そういうこった」  うなずいて、ダニーは自身のタグを見せてくる。 「おやっさん、あなたの職業は?」  試しに、ダニーの職業欄を見せてもらう。 「【技師エンジニア】だ。いわゆる非戦闘職だな。【ハンター】って戦闘職も兼ねているが」  数字の意味はよく分からなかった。が、戦闘力より技術点の方が高いようだ。 『ますます、おやっさんだな』  依頼関連の登録だけでなく、ギルドパーティとの連絡、ステータスの確認までできる。アイテムだけではなく、お金も収納可能らしい。所持金額が表示され、財布の役割も果たすという。 『いわゆるスマートウォッチだな』 「すま……なんです?」  リュートが独りごちると、コデロが首をかしげた。 『こちらの話だ』  未来の文明に疎いコデロにとって、意味不明な言語だったろう。

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