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 ミレーヌの店も気になる。一旦、商業ギルドへ向かう。 「もう、四件目なんです! 立て付けや構造などにはまったく問題ないのに!」  指を四本立てながら、商業ギルドのマスターは怒りを露わにした。 「いわゆる欠陥住宅という風でもなかった」 「もちろんです! あの商店街には、どれだけ金を掛けたか! わがイスリーブ事業団も、子泣きの騒動にはほとほと迷惑しているのです!」  ハンカチをグーッと噛みしめながら、メガネのギルマスは苛立ちを隠さない。  被害に遭っている店は、ここだけではなかった。店を始めようとした、若い女性ばかりが狙われているという。男性が店を買っても、特に問題は何も起きないそうで。 「ただ、店の備品がなくなるなどの嫌がらせを受けまして、早々に出ていくことはありました」  あっ、と、ギルマスが思い出したように帳簿をペラペラとめくる。 「一人だけ男性の失踪者がいましたね。あなたが買ったお店の、最初の店主です」  購入後すぐに行方不明となって、一日と持たなかったそうだ。 「そこから事件が立て続けに起きまして! もうやんなっちゃう!」  商業ギルマスは、激しくメガネをかけ直す。 「一刻も早く、事態を収束して下さい! 報酬は、言い値でお支払いします!」  想像以上に大事のようだ。 「どうするよ? なんの手がかりもないぜ」 『オレに考えがある』  家に帰る前に、コデロとミレーヌは美容室へ。  店主に、髪を整えてもらった。長旅で、髪が傷んでいるのだ。 「何をする気なんだ?」 『みんな、耳を貸してくれ』  美容院のイスに座りながら、リュートは作戦を打ち合わせた。 「ほほう。なるほど。それで美容院に用事があったんだな?」 『そういうワケだ。次の作戦を決行するぞ』   店に戻って、引き続き営業の準備をする。 「そうだミレーヌ。今晩は『明日の仕込みをしておけ』よ」  わざとらしく、ダニーがミレーヌに告げた。 「はぁい。『お父さんは寝てていいから』ね」  ミレーヌが厨房へ向かう。 「私は、どうすれば?」 「さあ。『アテムと一緒に酒場にでも行って』ればいいんじゃないかしら? うるさくするから、眠れなくなるわよ?」  ミレーヌの言葉を受け、コデロはアテムを夜の街へ誘った。 「分かりました。ではアテム、一杯付き合って下さい」 「いいね」  二人は店を出ようとするのを、ダニーが止める。 「待て待て。金は俺が出す。『俺も混ぜて』くれ」 「いいですね。ごちそうになりましょう」  三人が夜の街へ繰り出す。  店には一人だけ残った。  あとは、獲物がエサに食いつくのを待つばかりだ。 

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