『なんだお前、めちゃくちゃ弱いじゃねぇか。そんなのでよくミノケンタウロスの奴を倒せたもんだな』 ビッグクロコダイルは俺を一瞥し、あざ笑った。 だがそうされても仕方ない。 今の俺の攻撃力はたったの1しかないのだからな。 「は、早く男の姿に戻らないとっ……」 とは言ったものの、戻り方がわからない。 というか、そもそも戻れるのだろうか。 一生この姿のままじゃないよな……。 なんてことを考えていると、 『お前みたいな弱い奴はさっさと死ねっ』 ビッグクロコダイルが体当たりをかましてきた。 俺はそれを避けきれずに、 「ぐあっ……!」 ダメージを負ってしまう。 地面を転がる俺。 なんとか立ち上がるも、防御力まで下がっているせいで、身体がふらふらする。 立っているのがやっとの状態だった。 『弱い、弱すぎるぞお前っ。ちょっとかすっただけなのにもう虫の息じゃねぇか』 「……く、くそっ……」 もとの姿に戻れればあんな奴、全然大したことないのに……。 『次の一撃で終わりだなこりゃ。じゃあ、さっさととどめを刺すとするかなっ!』 ビッグクロコダイルが大きな口を開け襲いかかってきた。 俺はもう素早く動くことも出来ず、緊急脱出をするほかない。そう考えた瞬間―― ズドン! 『ん? な、なんだ? どこに行きやがった……?』 「ここだよ、ここ」 『な、なんだとっ!?』 男の姿に戻り、ステータスも完全にもとの数値へと戻った俺はビッグクロコダイルの背後をとっていた。 「ふぅ、危なかった。ひやひやさせないでくれよな、まったく」 『な、な、何を言ってやがるんだお前っ。ど、どうやって今のオレ様の攻撃を避けやがったんだっ!?』 「さっきの俺の動きが見えてなかったんなら、お前もミノケンタウロスの二の舞だぞ」 『く……オ、オレ様をミノケンタウロスの雑魚野郎なんかと一緒にするなぁーーっ!!』 ミノケンタウロスと同列にしたことがビッグクロコダイルの逆鱗に触れたようで、ビッグクロコダイルは我を忘れて猛突進してきた。 だがそんな単調な動きを俺が避けられないはずもなく、難なくこれをかわした俺は、 「今度は俺の番だっ!」 ビッグクロコダイルの脳天にこぶしを思いきり振り下ろした。 ぶしゅぅーーっ。 ビッグクロコダイルの脳天は破壊され、どす黒い血が噴水のようにあふれ出る。 そしてビッグクロコダイルは何も発することはなく、そのまま息絶えた。 塵となって消えゆくビッグクロコダイル。 その消えた後の地面には、宝箱が一つ残されていた。 俺は近寄っていってそれを開ける。 「うん? なんだこれ?」 中に入っていたものは円形のチーズの箱のような、やはり見たこともないアイテムだった。 「うーん……使うのはやめておくか」 さっきの女体化の薬で懲りていた俺は、そのアイテムを背中のバッグに押し込むと、 「よし、次は地下3階か」 前方にある階段をみつめ、そう声に出した。
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