ミノケンタウロスの消えた後には、宝箱が残されていた。 俺はそれを開け、中身を取り出す。 「うん? これはたしか……」 見覚えのあるボトルと中に入った灰色の液体。 エリクサーによく似ているが、微妙に色が違うそれは―― 「あーそうだ。この前裏ダンジョンに潜った時に手に入れたアイテムだっ」 思い出し声を上げる俺。 あの時は結局、緊急脱出を使ったため、そのアイテムの効果はわからずじまいだったのだ。 「気になってたんだよな、このアイテム。どれ、試しに使ってみようかな」 おそらく裏ダンジョンで手に入るアイテムは、世界中どこの国でも売買はされていないと思う。 それによくよく考えてみれば、そんなレア中のレアアイテムを国に売ろうとしたら、どこで手に入れたんだと問い詰められてしまうかもしれない。 そうなれば裏ダンジョンのことを隠しておけなくなる。 ならばせっかく手に入れたアイテムだが、自分で使ってみてもいいかのもしれない。 そう思い俺はエリクサーに似たそのアイテムを自分で使ってみることにした。 「……最悪中身が毒とかだったとしても、状態異常自然回復のスキルがあるからなんとかなるだろ。うん」 自分に言い聞かせ、俺はそのアイテムを一気に飲み干した。 ……。 ……。 ……。 「な、なんともないな……」 俺は肩透かしをくらってしまう。 どんなアイテムなのかと期待していた反面、少し不安もあったのだが、杞憂だったか。 するとその時、 「うおっ、なんだっ!?」 全身が熱くなり出した。 身体の奥底からマグマのような熱があふれ出てくる感じだった。 「な、なんだこれはっ……!?」 そしてその状態が1分ほど続いたのち、ゆっくりと熱さがひいていく。 「……ふぅ。おさまったか……」 っ! 俺は自分で自分の声を耳にしてどきりとした。 「な、なんだ……!? こ、この声っ!?」 俺の声はさっきまでの野太い男の声ではなく、凛とした透き通るような女の声に変化していた。 いや、声だけではなく、身体もどことなく重い。 目線を下にずらし、 「ま、まさかっ……!」 胸がやけに膨らんでいることに気付いた俺は、自分の全身をくまなく調べた。 その結果―― 「う、嘘だろ……」 ――俺は女になってしまっていた。
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