裏ダンジョンの地下3階にはメタルベヒーモスと名乗るモンスターが居座っていた。 やはり人間の言葉を自由に扱えるようで、俺に対しかなり挑発的な言葉を吐き続けていた。 なので、俺はそのメタルベヒーモスの懐に飛び込むと、がら空きの腹めがけてパンチを繰り出した。 『ぎゃあぁぁーーっ……！』 これぞ断末魔の叫びという大きな声を上げたと思った直後、メタルベヒーモスは黒い灰と化して消えた。 その後、地面には宝箱が残されており、中身を確認すると小さな種のようなものが入っていた。 俺はそれをポケットにしまい込むと、地下4階へと続く階段を探してフロアを歩き始めた。 ◆　◆　◆ 裏ダンジョン地下4階にはレッドアイズサイクロプスというモンスターがいた。 このモンスターはとても巨大な体をしていて、攻撃力だけなら俺に匹敵するくらいだった。 だが、いかんせん動きが遅く、俺からしてみれば相手の攻撃もまるで止まっているように見えた。 そのため、俺はレッドアイズサイクロプスの攻撃をただの一度もくらうことなく、完全勝利を収めたのだった。 ちなみにレッドアイズサイクロプスのドロップアイテムは、変な模様の見たこともない果実だった。 当然俺はそれを口にすることはなく、バッグの中に詰め込んだ。 ◆　◆　◆ 裏ダンジョン地下5階。 俺を待ち構えていたのはグレイテストドラゴンという、真っ赤な巨竜だった。 さすがに最後のフロアのボスとあって、かなりの強敵だった。 まともにやったのでは歯が立たない。一瞬手合わせしてそう感じた。 なので、俺は奥の手を発動することにした。 俺のスキルであるオーバーリリースだ。 「オーバーリリースっ！」 このオーバーリリースは一日に二回だけ、それも5分の間だけだが、俺の全ステータスを倍加できるというものだった。 それにより、俺はさっきまで互角の戦いを見せていたグレイテストドラゴンを圧倒する。 『ぐおっ、な、なんだこの力はっ！？　なぜ急にこれほどまでに強くなったのだっ……！？』 恐れおののくグレイテストドラゴン。 もうこの時点で勝敗は決していたが、このオーバーリリースには俺の理性を吹っ飛ばすという副作用があったので、俺は手加減することなくグレイテストドラゴンを瞬殺した。 「……はぁっ、はぁっ……やったぞ」 俺は地面に残されていたドロップアイテムを拾い上げると、帰還テレホンを取り出して、作動させる準備をした。 だが、その矢先、 『……どこに行くつもりだ？』 地の底から這い出てくるようなおどろおどろしい声がどこからともなく聞こえてきた。 その声には聞き覚えがあった。 忘れるはずもない。 「どこだ、骸骨っ！」 俺はその声の主である骸骨の姿を探した。 すると、 『……我はそのフロアのさらに下にいる。グレイテストドラゴンの奴を葬ったならば、そのフロアのどこかに階段が現れているはずだ。我のことが気になるなら下りてこい。怖いのならさっさと立ち去れ』 実際に声は地面の下から聞こえてくるようだった。 「ここまできて逃げるわけないだろ。待ってろ、今そこに行ってやる」 『……ふふん、それでこそ選ばれし者だ』 声が聞こえなくなると、うっすらと前方に階段らしきものが見えた。 俺はそこに駆け寄っていき、階下へと続く階段を発見する。 「よしっ……行ってやる！」 階段の下をみつめながら、俺は自身を鼓舞するように、両方のこぶしをガツンと打ち合わせた。