……あれから60年の月日が経った。 俺は病院のベッドで人工呼吸器につながれた状態で寝ていた。 「……そ、そろそろお迎えが来る頃か……」 「あなた……」 「お父さん、そんな……」 「おじいちゃん、死んじゃヤダーっ!」 俺のベッドの周りには妻や子どもや孫の姿があった。 みんな涙目で俺を見下ろしている。 ふふっ……孫娘にいたっては俺の身体にしがみついて泣きじゃくっている始末だ。 ピーーーーーーーーーーーーーー。 心電図が止まり、俺の意識はそこで途絶えた。 はずだったのだが、 『マスター、マスターはこれからもおいらとずっと一緒だからね』 気が付くと俺はベビーの背中の上に乗っていた。 いや、ベビーと呼ぶのはもう恐れ多いくらい、ベビーは大きく成長していた。 『いいんだよ、ベビーで。おいらはずっとマスターの友達のベビーだよ』 ふふっ、そうかい。 俺は少し疲れたよ。 ちょっとだけベビーの背中で眠ってもいいかな? 『うん、もちろんさっ』 ありがとうベビー。 大空を翔るベビーの背中の寝心地はそれはもう最高だった。 目を閉じた俺は、すぐに深い眠りへと落ちていった。 そして、深い眠りの中で俺は、ベビーとともにダンジョンに潜っていた頃のキラキラした懐かしい夢を見続けるのだった。
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