世界終了
act00少女四人 04 ”九条七瀬”

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珍しく朝早く起きれたのはいいものの、早起きに慣れてないと頭痛が止まない。 二度寝しようとも思ったけど、そうしたら騒がしいのが二人程来て無理矢理起こしてきそうだし、止めておこう。そっちの方で起きる頭痛のが酷そうだし。 重い頭と体をふらふらとさせながら、部屋の扉を開けてリビングを見てみれば、いつもなら誰も居ないはずなのにテーブルで朝食を食べている人物が一人。 「あら七瀬、おはよう」 「……いつ帰ってきたの、柚葉」 東京の大学で一人暮らしをしている姉が、何故かいる。「さっき帰ってきた所よ」と返事が返ってきて、一言そう、とだけ自分も返す。 机の上には柚葉が食べているものと同じサンドイッチが置いてあるが、どうみても量が一人分じゃない。理由をなんとなく察して、少し溜息をついた。 「私は朝食いらないわよ」 「食べないと頭回らないわよ」 「…………」 たった一言だけ言われて、そのまま無言で食べ続ける柚葉。でも視線はずっとこっちを見ていて、食べないことを許さなさそうだった。 渋々イスを引いて座り、一番具が少なそうなサンドイッチを掴んで頬張る。……一口だけでもう十分だわこれは…。 「長期でもないのに帰ってくるなんて珍しいわね」 「例の黒い空間が大学内に出来てね。小さい物だったらしいけど対策とかもするために二週間ほど休校よ」 「そう」 淡々と過ぎる会話。黒い空間と言えば最近話題の、妙なものね。じゃあ今日の報道とか新聞で柚葉がいる大学の名前が出てきそうね。 どっかの馬鹿のツインテールは興味津々だけど、正直どうでもいいというか。興味はないというわけじゃないけどあれには極力近づきたくない。 「あれのせいで色々と問題しかなくて本当大変よ」 「そうでしょうね。お疲れ様」 普段なら絶対にしないため息を一つ。 こっちもサンドウィッチが胃に来てため息をつきたいぐらいだけど、柚葉が溜息をしたのなら私はしたくないという、自分でも子供じみた対抗心が出てきて堪える。 「あれってなんなのかしらね」 「さあ、私は私に被害がなければどうでもいいわ。それよりも私はニュースであれの付近から出てる雑音の話が出ないことが不思議なんだけど」 「…雑音?」 おそらくもう四つ目ぐらいのサンドウィッチを何の躊躇もなく口に運びながら、無表情で首をかしげる柚葉。 その顔は疑問をあらわしているのか読み取りにくいけど、なんとなく雰囲気で「何それ」と言いたいのが伝わってきた。 それに対して、私が怪訝な顔をしてしまう。 「するでしょ、雑音」 「しなかったわよ」 「…………」 「空耳じゃないの?」 何度か近くに行ったことはあったが、その度に同じような雑音はしていた。知らない国の人間の声みたいだったり動物の叫びみたいだったり、機械音っぽかったり、色々な物が入り混じった雑音。 空耳とは、到底思えないものだった。 近づくなと言われている範囲を超えなくても、数百メートル離れている場所ぐらいから必ずするから全員聞こえている物ものだと思っていた。よくわからない空間だからよくわからない音がしてもおかしくないと思っていて、誰にも言ってなかった。 けれど……まさか聞こえてないなんて。 「………ご馳走様」 「お粗末様。もう少し食べて欲しかったけど」 そう言ってくる柚葉の言葉を無視して、部屋に戻る。 さっきまで堪えていた溜息を、一気に吐き出した。 ………ああ、知りたくもないよく分からない事実を知ってしまった。

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