世界終了
act01勇者一行 11 集合

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「同じ……ってどういうこと?」 「えーっとだな……」 リトは腕を組み右斜め上に視線をずらして「えー……っと」とさらに呟く。どうやら伝える言葉を脳内で揉んでいるみたいで、首を傾けたり口を開いたまま突然ろくろを回したりとどうにかこうにか言葉に出来ないか頑張っていた。 数十秒そんなリトを見守っていたら、はっ!と閃いた顔をして手をぽんと叩いた。 「旅にでよう椿!」 「どうして!?」 流石に説明がなさすぎる!どういう流れでその発想に至ったのかが全くわからない! リトの胸ぐらを掴む勢いで疑問を投げかけているところ、応接室の扉が開いてせりとヨークが戻ってきた。リトに迫っているあたしを見て「どういう状況!?」とヨークが驚いている。 「丁度良かったヨーク、椿達を連れて旅に出るからアリアを一緒に説得してくれ!」 「はぁ!?たった今怒られてきたところなんだけどちょっとリト!」 ヨークの腕を掴んでそのまま廊下を走り去って行ったリト。ヨークの叫び声がどんどん遠ざかっていく。 「……いや先にあたしに対して説明をしてリトー!」 「わあ渾身のつっこみ~」 「思った以上にあの人話勝手に進めるんだけど!!魔法も魔王も何もあたし把握できてない!」 わっと叫びながら床に崩れ落ちる。あとでしっかりと聞かないと何もわからないまま旅に出てしまう。ストーリーを適当に読み飛ばしたゲームをプレイしてるみたいなのは状況は望んでないんだけど! 「魔王の事は、せりはヨークからちょっと聞いたよ」 「え、本当?どんな感じ?」 「んーなんか、あの黒い空間を世界中に出してこの世界を呪った原因だったらしいよ。あと魔物を凶暴化させたとか。封印に成功したけどどっちも全然改善しないから困ってるって」 それを聞くと、まごうことなき魔王という冠を与えられる所業だった。でも、そうなるとリトが言っていた『魔王とリト自身、そしてあたしが同じ』と言っていたことが余計に理解できない。 唸っていると、せりから紙袋を渡された。そういえば粉々になった机の片付け中だったことを思い出して二人で破片を袋に入れる。余談だけど、ビニール袋はないかせりが聞いたところビニールという単語自体を把握されなかったらしい。把握……というより、聞き取れないみたいな反応だったらしく、自分もリトの呪文が聞き取れなかった話をした。 「あとこの世界たまーに異世界の人来る記録が昔からあって、リト達も一回異世界人にあったことあるんだって~」 「しれっとまた新しい情報が流れてくる!」 「そうだから俺達が元の世界に戻る方法多分あるってことよ!」 間。 ばっと顔をあげると、そこには有紀が仁王立ちして立っていた。いつの間に応接室に入ってきたんだこいつ! 「えーもう帰る話かよもっと楽しんでからでもいーと思うぜ~!」 背後から聞き慣れない男性の声。後ろを振り向くと、澄んだ瑠璃色の瞳があたしを見ていた。焼けた肌色に白に近い青色から濃い青色へグラデーションになっているハーフアップの髪は、初めて海を見た時をふと思い出させた。 ずいっと突然顔を近づけられて驚くと同時に髪の間から見える耳がとがっているのに気づく。 「オレの名前はソウマ!リトから聞いてるだろ?」 「………あ!お味噌汁の!」 「さてはオレが作った味噌汁がくっそまずくてヨークが吐いた話を聞いたのか!?」 「え!?初耳です!!」 「しまった自ら失態を言ったってことかくっそ!オレとしたことが!」 どうしようテンションが有紀に似てる。有紀のお兄さん達と話をしてる気分になってきた。顔は似てないけど実は血縁者なのでは。 わはは椿相手に詰めが甘いな!と笑いながらソウマさんの背中をばしばしと叩く有紀。今の流れであたし相手に詰めが甘いの意味がわからないしあまり分かりたくもない。 ソウマさんは咳払いをして改めて、とあたしとせりを見やった。 「ソウマだ。ま~色々と肩書きはあるけどとりあえず漁師の陽気な兄ちゃんだと思ってくれ!よろしくな!」 「あっ、奥宮椿です」 リトとはまた違う方向性の明るい笑顔で手を差し伸べられて、そのまま握手をしながら自分の名前を口にする。リトとヨークに自分の名前を教えるのがあんなに大変だったことを思い返すと、言葉が聞こえるってすごいことなんだなと改めて感じた。なんで聞こえるようになったかは相変わらず謎だけど。 せりが近くに寄ってきて「せりで~す」と言いながら同じように手を差し出した。それに対してソウマさんはあたしから手を離してなんの疑いもなくせりの手を握った。 「いっってぇ!?」 「やっぱこのくらいだと痛いんだ~」 「初対面の人で力加減実験しないでせり!!大丈夫ですかソウマさん!?」 握られた側の手首を押さえて悶絶するソウマさん。痛みに耐えながらも小さく何かを訴えようと唸っている。さっき教えてもらった回復魔法を使った方がいいのかどうか狼狽えていたら、唸っている声がようやく言葉として聞き取れた。 「オレ……呼び捨てと…敬語なしがいい……っ!」 「あ、はい」 これは大丈夫そうな人の反応だ。心配していた気持ちが一気にすんと落ち着く。 「ええー!?有紀ちょっと話がちげえぞ!なんかすげーいい感じにつっこみしてくる子ってオレ聞いてたのに塩対応されたんだけど!!」 「どうした椿お前の実力はそんなものかもっと火に熱湯注いだような勢いでいつもの寄越せ!」 「ええいうるさい!初対面の人にいつもと同じようなことが出来るか!あと火に熱湯を注いでも消えるからきっと!勢い増すなら油を注げ油を!」 「見たかこれが俺と椿の信頼度による連携だソウマ」 「オレの信頼度は今始まったばかりってか……これから仲良くなるためにがんばるからな…」 「仲良くなってくれるのは嬉しいけどこんな方向性のために頑張らないでほしい!」 頭を抱えて叫ぶ。有紀の相手をしてるだけでも大変なのになんかもう手に負えないのがよく分かる!せりに助けを求めて視線を向けると、いつの間にか七瀬と銀髪の男性が一緒にいた。 ……増えてる!!次々と増える!処理が追いつかない!! 「アロウ、あれが有紀の保護者よ」 「まって七瀬!情報が追いついてない間にあたしをそういう風に紹介しないで!」 「そうだぞ七瀬!椿が保護者なもんか俺の相棒だ!!二人で一つだった地元じゃ負け知らず!」 「そうじゃない誰かと勝負とかしたことないし相棒も勘弁して!!友達!友達です!」 勢いのままの会話で銀髪の人に頑張って訂正する。何も言わずに無言であたしを見る金色の目はなんというか……「大変そうだな」と哀れまれている感じだった。 こんなにつっこみを入れまくるのは実際日常ぐらいだったのに、すごい久々に感じてしまう。それはそれでいいんだけどこんなことで二人にやっと再会したんだなって実感が沸いてきてしまうのが悔しい。 もっと……こう……あるはずじゃん感動的な感情がさ……!! つっこみの勢いによる肩で息をしていたのをなんとか整えて、改めて銀髪の――アロウと呼ばれた人を見る。褐色肌に金色の目。長い銀髪を一つに縛っている。静かな大人な雰囲気をしていて、髪色も相まってかなんというか……月みたいな感じだった。 無言でじっとあたしを見る目はなんとなく品定めされているような気がして……なんか目を逸らしたらこれは負けなのではと直感的に思ってその目をじっと見返した。 「お、アロウに睨まれて睨み返す女の子これで二人目じゃん七瀬といい気が強いなー」 「……似たもの同士ってところだろ」 そこで初めてアロウさんが声を発した。睨んでたつもりはなかったけど、確かに目は逸らさなかったから睨み返したことになるのか……? 似たもの同士って言われたのが不服だったのか七瀬があたしの脚を蹴ってきた。なんで! 「あたしが言ったわけじゃないのに!」 「アロウから目を逸らさない椿が悪い」 「理不尽!おかしい!」 あたしと七瀬のやりとりにけらけらとせりがお腹を抱えて心底楽しそうに笑ってる。絶対あたし悪くないのに味方がいないのは本当におかしいと思う。 「あ、椿もせりどっちもアロウのこと呼び捨てでいーからな!どうせオレが言わなくったってリトが気付いたら絶対これいうし!」 「お前勝手に……はぁ」 反論しようと一瞬したけど、すぐに諦めてため息をついた様子をみるとこういうやりとりが日常茶飯事なんだろうなと感じ取れた。リトが言うのも想像がついてしまう。 「ええっと、改めて奥宮椿です。よろしくアロウ」 ぺこりとお辞儀をすると「あぁ」と一言だけいって軽く首を頷かせた。リト、ヨーク、ソウマと続いて来てすごくクールな人だというのが身にしみる。 とりあず、有紀と七瀬に聴きたいこととかどうしてたかとかもたくさん聴きたいしソウマとアロウについても聴きたいし、忘れ去られていた机の片付けをしたいし……どれから手をつけるか悩んでいると扉が勢いよく開いた。 「ちゅうっっもーく!!」 女性の……この屋敷に入ってきたときに聴いた「アリアさん」の声が響き渡った。言葉に従ってそちらに注目すると、腕を組んで仁王立ちしているアリアさんがいた。後ろからご機嫌そうなリトと、反してすごく疲れた様子のヨークが顔を出す。 「リトヨークソウマアロウ!それに椿せり有紀七瀬!」 その場にいる全員の名前を言うアリアさんに、まるで学校の先生に呼び出されるような感じでぴっと背が伸びた。 「ここにいる全員!順を追って!ここに至る経緯とこれからのことをちゃんと話しなさい!」 ――やっとまとめてくれる人がきた…! 多分ここ一番で感動したかもしれない。

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