世界終了
act00少女四人 02”楓粋有紀”

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お題:強さとはなんだろうか。 まあ正直な話そんなことはどうでもよくて。とにかく眠い。今日は眠い。限りなく眠い。 何故だ何故俺はこんなにも眠い中強さを求めなきゃいけないんだ……! 「つーわけで響、俺は強さより睡眠欲が大事だからさらばだ!」 「陽兄!姉貴がまた変なこと言ってんぞ!」 「こら有紀!そこはさらばだ!じゃなくてサラダバーの方がいいだろ!?」 「はっ…!盲点だった……!!くっ、眠かったなんて言い訳に過ぎないか…っ」 「それがお前の爪の甘さだ有紀……いつ何時も気を張っていなければ…それでおしまいになるぜ…」 「俺も……まだまだだな…」 「違うだろー!」 名は体を表すというかなんと言うか。朝から道場中に響の声が響き渡った。 寧ろ親父ギャグみたいだ。カッコ笑い。 周りにいる門下生達は、朝飯に味噌汁と白ご飯が出てくるのと同じぐらいの感覚で俺等のやりとりを眺めていた。 あ、やべ。朝飯を例えにしたら腹減ってきた。早朝稽古辛すぎるぜバカヤロウッ。 「うざ晴らしに陽兄に対決を申し込んでやる!!」 「おっ、いいな有紀。よーし皆!!今日の朝稽古は俺と有紀の試合で締め!ちゃんと見とけよ」 陽兄の一声に、おおお!と歓声が道場いっぱいになって、柔道の組み合いやら剣道のかかり稽古やらを早々に切り上げて全員が集まってきた。 今日こそ新しく磨いた俺の新必殺技!!トルネードグレートなんとかエディションを決めて陽兄に勝ってやるぜ! 「よっし有紀!今日も戦い方は自由でいいな?」 「もっちろんだぜ陽兄!跪いた方の負けな!」 道着の帯を締めて、自分のツインテールの髪をきつく縛り直して、いざ!! * * * 「で?結果はどうだったんだ?」 「燦くんよ、もちのろんでこの陽様が勝ったにきまってんだろーお?」 「だあああ!後一歩だったのによ!!俺のエディションがっ!!」 「だから何で流派の新しい技候補に横文字使おうとすんだよ!」 「姉上も陽兄もかっこよかったよー!」 でっかいテーブルに男四人と俺一人で食卓を囲う。会話しつつ繰り広げられてるのはど真ん中に置いてある燦兄特性のカツ奪い合い。 あ!!俺の狙ってたカツが陽兄にとられた!! 壁ドンじゃなくて机ドンをしてたら、ドヤ顔で返されたくっそ!!流石俺の兄貴むかつくが尊敬するぜくっそ!! 横で見てた燦兄が、陽兄と全く同じ顔なのに困った顔しながら俺の皿にでっかいカツを置いてくれた。流石燦兄!陽兄と双子だけど優しさはプライスレス!! 「姉上ー、今日姉上稽古してくれるー?」 「おお、そうだな今日は……今の世の中を脅かしている闇に飲まれて…世界でも救ってくるかな……」 「椿さんのところに遊びに行くらしいぜ遼」 「何!?なんで分かったんだ響!!貴様まさかついにこの俺の時代を通り越して…!」 「っせぇよこの中二病姉貴!昨日散々椿さんのところ行くって騒いでたじゃねぇか!」 「中二病っつーか俺中二だもーん!何かに目覚めし時だもーん!つーわけでごっそーさん!遊びに行く準備してくるぜ!!」 コップに残ったお茶を一気に飲み干して、リビングから階段登って自室にダッシュ。 我ながらなんて早い足なんだ! 道着でそのまま飯食ってたから、ばばっと脱いで着替えて……。 「よし、今日は制服の気分だし制服で良いか!」 会うのは椿たちだしな!つっこみ待機で制服のセーラー服で行くことにしよう! 今日はなにして遊ぼうか。テスト勉強するっていうつもりだけどいやまずはゲームだろゲーム!今日の事を考えると鼻歌がこぼれてくる。 さらに鼻歌加速していたら、机の上に置いていた物に目がとまった。 「……なんだこれ?」 見慣れないそれは、ガラスの球体。しかもその中に砂時計が入っていてなんとなくオシャレ感が出てる。 着替えの途中だったが気になって仕方がないので、上が半裸状態で机に近づいて砂時計を手に取ってみた。 試しにぐるりとひっくり返してみる。球体の中に入ってるせいか回るのは外枠の球体ガラスのみで中身の砂時計は同じ方向から向きを変えようとしない。 なんてこったこれじゃあカップ麺の時間がはかれねぇぞ! しかも気付いてしまった。これ完全に欠陥品の砂時計だ。 「砂動いてねぇじゃん!綺麗な青色の砂なのにもったいねーえのぉー!」 下の段に二十分の一ぐらい、すっげぇちょっとだけ砂は落ちてる。砂時計をじっと見ててもひとかけらも落ちる気配なし。なんだこれは!つまんないことこの方ないなこの砂時計。 試しに振り回してみたけどやっぱり向きも変わらず何も変わらない。 「姉貴ー。遊びに行くなら菓子持ってけって陽兄と燦兄が……。うお!?なんっつー格好してんだバカ姉貴ぃ!!」 小六思春期響君は顔を真っ赤にしながら、俺に菓子が詰まったビニール袋を投げつける。この前まで一緒に風呂入ってたというのに。 「丁度良いところに来たな響!なあなあお前この砂時計どう思うー?」 「そのままこっちくんな上着ろバカ!!………は?砂時計?ただのガラス玉だろ」 「……………うん?」 「とにかく服着ろ!菓子は渡したからな!一人で食うんじゃねーぞ!」 そう怒鳴りつけてから、ダッシュで俺の部屋をでていった響き。あいつほんと反抗期だな。 いやまあ、響の俺に対しての反抗期は今に始まったことじゃねぇし置いといて。 「ただのガラス玉とはこれまた……」 ビニール袋の中から一つだけ取り出して、うまいことに定評のある棒を頬張りながら動かない砂時計を眺めた。 最近の世界で起きてる謎の黒い空間騒動のタイミングに? 突然置いてあったのが漫画とかゲームのアイテム的によくある砂時計で? それが動かない上俺しか見えないかもしれないシチュエーション? これは、なんともまあ俺の大好きな感じの展開になりそうとか思ってもおしかなくね? 「まじで何かに目覚めし者だったりして、俺」 呟いたと同時に、砂の一粒だけが落ちたから、世界が俺を肯定したと認めよう! とりあえず、椿たちに見せてからもっかい楽しく考えてみようかな。

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