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ーーーーーー 「ね、ねねね猫実くん!さ、ささささっきはごめんなさい!!!」  もずきゅんは、顎にガーゼをあてた猫実好和に向かい、床に猫耳が触れる勢いで深々と頭を下げた。 「もずきゅん先輩。俺は大丈夫ですから。今回は二度目なので受け身も取ったし、ある程度ダメージも受け流しました」  猫実は謎の自信ありげな表情で答えた。  もずきゅんはゆっくり顔を上げると、目をうるうるさせて悲しそうに言葉を漏らす。 「に、二度目......」 「あっ!えっと!皮肉でも当てつけでもないですよ!?他意はないですから!!だからそんな顔しないでください!」 「......ほ、ほほほほホント??」 「ホントです!」 「よ、良かったぁ...」  微笑み合う猫実好和ともずきゅん。  二人の様子を見て、アミーナとハヤオンと千代の三人は、ひとつ確信した。  この大学生男子は、かなりのお人好しだと......。  そんな中、ツンデレネコ娘ナルだけは肩をそびやかせて腕を組み、ムスッとした表情を浮かべていた...。  厨房。  猫実&もずきゅんの二人は気を取り直し...  もずきゅんが猫実好和に、本格的にキッチン仕事の指導を開始する。  キッチンに向かい並び立つ二人。  先日は五メートルほど離れていた距離も、手の触れる距離に近づいていた。  極度の人見知りでコミュ障全開のもずきゅん相手に、とりあえず物理的な距離は縮める事に成功した猫実好和。  その代償に、フライパンで襲われたり頭突き二発を喰らったりと、それなりのものを払わされた訳ではあるが...。 「じゃ、じゃじゃじゃあ、はは始めますね」 「はい!よろしくおなしゃす!」 「えええっと......ね、猫実くんは、お、お料理はする?」 「自炊はわりとしてます」 「そ、そそそーなんだ。と、得意料理とか、ある?」 「そうですね?得意っていうか...チャーハンはよく作りますね」 「お、おおおオトコメシってやつだね??」 「そうなんですか?他にも煮物作ったりもしますよ」 「に、ににに煮物も作るの??」 「はい、好きなんで。でも、やっぱりチャーハンが一番好きですかね!」 「そ、そそそそう。な、なら、チャーハンっぽいメニューがあるから、そ、それをまず教えようかな」 「チャーハンっぽいメニュー!?是非教えてください!覚えて家でも作りたいです!」 「わ、わわわわかりました!」 「よろしくおなしゃす!」 「で、でででは......当店オリジナルメニュー...」 「は、はい」 「......ニャーハンを伝授をします!!!」 「にゃ、ニャーハン!??」  ニャーハンとは、猫カフェ『ネコまっしぐランド』オリジナルメニューである。  何でも、アミ店長が考案したものらしい。   「ちょ、ちょちょ調理の仕方は、チャーハンと、ほほほとんど変わりません」 「はい」 「つつ使う食材は、こ、こちらです」 ・米 ・卵 ・かつおぶし ・にぼし ・マグロ ・カツオ ・カリカリ ・チュール ・猫缶 ・どら焼き 「あの......カツオまではいいとして、カリカリ以降は...」 「え??お、おおお美味しそうでしょ??」 「...しかも最後のどら焼きって何ですか?」 「それは、我らが大師匠、ドラ◯もん先生の大好物だよ!??」 「だから!?」 「だからドラ...」 「もういいっすそのメニューは!」  ...ということで、仕切り直す二人。 「じゃ、じゃあ、ほほほ他のメニューにするね」 「...お願いします」 「うーんと、じゃあ......」 「はい」 「......にゃんこそば!!」 「ニャンコ蕎麦!?」 「ちょ、ちょちょ調理の仕方は、蕎麦と、ほほほとんど変わりません」 「はい」 「つつ使う食材は、こ、こちらです」 ・蕎麦 ・どら焼き 「待てーい!」  猫実が叫ぶ。 「な、ななななに???」 「なにじゃないっすよ!?ただの蕎麦とどら焼きじゃないっすか!どら焼きいらないっすよ!」 「だ、だだだだって、そ、それじゃあ、ただの蕎麦だもん!」 「ただの蕎麦の方がいいっすよ!」 「ガーーーーン!」  大ショックのもずきゅん。 「なんでそんなにどら焼きを入れたがるんですか!?」 「...そっ!それは、わわわわたしたちネコ娘にとって、ドラ◯もん先生は、神様のような存在だからだよぉ!!」 「だからって無理くりメニューにぶち込まないでください!それに、どちらかと言えばド◯ミちゃんが神様じゃないんですか??女の子だし」 「そそそそれは、お、男の子視点だからだよぉ!ドラ◯もん先生は、お兄ちゃん萌えでもあるの!ド◯ミちゃんだと妹萌えだから!」 「ドラ◯もんにそんな視点あるんすか!?」  二人の間に高度な議論が展開する。  その議論に、終わりは、ない。

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