ーーーーーー そんなこんなで楽しい歓迎会を終え、すっかり猫カフェバイトも定着した猫実好和。 そんなある日。 彼の耳に、友人から妙な話が飛び込んでくる。 「なあネコ?(猫実好和のあだ名)」 「なんだ?柴井」 「そういえばさ~お前、彼女いたの?」 「え??何の話それ?」 スパイキーショートの茶髪に甘いマスクを携えた、一見するとチャラい見た目の友人の名は柴井。 実は、猫実好和とは高校生時代のアルバイトで出会いそれからの付き合いである。 猫実好和にとって柴井は大学での一番の友人で、何かと関わる事が多い。 だがここ最近、つまり、猫実が猫カフェバイトを始めてからは、学校以外で会う事はめっきり無くなっていた。 昼、食堂で向かい合いながら、何やら物問いたげな目を光らせて柴井は猫実に訊ねる。 「この前、駅の近くでメチャクチャ可愛いコスプレ女子と一緒にいたらしいじゃん」 「それいつの話だ??......あっ!(それってまさか...ハヤオン先輩の事か!?)」 「ん?どうやら噂は本当だったのか?」 「いや、ちが......その、その人はそういう人ではないよ!」 必死に弁解する猫実。 「じゃあそのコスプレ女子は何者?」 柴井はニイッと不敵な笑みを浮かべる。 「た、ただのバイト先の先輩だよ!」 「バイト先ってことは、猫カフェの先輩ってこと?」 「そうそう!」 「ふ~ん、そうか」 「な、なんだよ」 「オレも行ってみようかな~その猫カフェ」 「柴井が来るの?俺のバイト先に?」 「ダメなのか?」 「いや、そもそも柴井って犬派じゃなかったっけ?」 「それはそうだけど」 「前に猫派vs犬派論争になった事もあったよな?」 「でもそん時は結局どっちもカワイイで落ち着いたじゃん」 「ま、まあ」 「てことで、オレにも見せてくれ。その猫カフェ」 猫実が「まあ柴井ならいいか」と思って了承しかけた時... 「なに?猫カフェ?おれも連れてってくれよ!」 なぜか『猫カフェ』というワードに食いついたもう一人の友人が、彼らのテーブルへやって来て柴井に便乗する。 「今、猫カフェの話してただろ?違うか?」 「おいおい秋多、お前は絶対に猫に興味ないだろ?可愛い女の子以外に興味あるのか?」 柴井が釘を刺すように言った。 「なに言ってんだよ柴井!おれはこう見えても大の猫好きだぞ!」 彼の名前は秋多。 ツンツンした黒い短髪の下に、妙に自信のありそうな眉と目鼻を携えた軽薄そうな彼は、鼻息を荒くして言い放つ。 「いいか?おれはカワイイ猫ちゃんとカワイイ女の子が大好きなんだ!そんなおれの夢は、アイドル級のカワイイ女の子に猫コスをさせて「〇〇だにゃん」と言わせる事だ!」 柴井は呆れ気味に、もはや感心したように苦笑する。 「...相変わらずだなぁ。じゃあ一緒にネコのバイト先行くか?」 「ネコ!行っていいのか?この前は来るなと言われたが」 「こうなったらしょうがないか......」 猫実は、もう一人の友人・秋多の来店も渋々了承するが、ここで急にハッとする。 ーーー今、秋多のヤツ、言ったよな。カワイイ女の子に猫コスさせるのが夢だって。それって、まさにハヤオン先輩達のことじゃね!?(コスプレどころかリアル猫娘だけど...) ど、どうする?こんなに鼻息荒い奴連れてって大丈夫なのか?柴井もいるなら大丈夫か...? てゆーか、そもそも純粋な猫カフェじゃないよな!?正確には猫娘カフェだよな!?あらかじめ言っといた方がいいのか?いや、秋多にそれを言ったらますます鼻息を荒くするだけか!ーーー 「ん?どーしたんだ?」 唐突に考え込む猫実好和に柴井が訊ねる。 「い、いや、何でもないよ」 「よっしゃ~猫カフェ行くぞ~!!」 意気込む秋多。 「アハ...アハハ......」 盛り上がる秋多を見ながら、冷や汗を垂らして苦笑いする猫実好和。 ーーーどうしよう。メチャクチャ不安だ......ーーー
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