| | | | | | | | | | あるとこ|ろに子供がいた。 | その子は|まだ、かろうじて算術が | できるくらいで、毎日母と|ともに | 絵本を読んで笑っていた。| | ぬいぐるみが大好きで、い|つも犬の | ぬいぐるみを抱いて眠って|いた。 | し|かしその絵本は炎に沈み、 | 登|場人物の顔は奇妙に曲がった。 | ぬ|いぐるみの目が飛び出て、 | 中の綿はドロ|ドロに溶けた。 | 大好きだった|そのぬいぐるみと同じ | ように、その|子供の眼球は硝子に | よって破壊さ|れ、その子は最期まで | 手を伸ばして、暗闇の中、大事な| | 大事なぬいぐるみを探していた。| | | 華茂は たしかに | | | その光景を | | 見た。 | 目|に、強い痛みが、走った。 | | あるところに大人になり|かけの | 少女がいた。少女は想い|を寄せる | 相手に、機械で言葉を送|った。 | その返事は、少女|の想いに応えた | ものだった。少女|には、この世界が | 輝いて見えた。窓|を開けた。 | ベランダに出た。|貴女の好きな人は | 貴女の|ことが好きなのだ。夜はそう | 告げて|くれた。 | その夜|が牙を剥いた。 | 少女は大熱に焼かれた。可憐な姿|は | どこにもない。ただ残ったのは、| | 焦げた、髪の毛の束だけだった。| | | 華茂の 内臓が | | 内臓の一部が | | 潰れたような気が した。| | ギリギリと痛む。 脂汗が 出る。| | | 都会で暮らし|始めた男女がいた。 | 二人とも田舎|から出てきて、 | 初めての都会|だった。 | 立ち並ぶビル、そして|おしゃれな | 人々に、二人は戸惑っ|た。それでも | 無事に部屋を借りるこ|とができた。 | 部|屋は隣同士だった。困った時には | 助|けあおうと決めて。そして二人は | 毎|晩眠る前に、壁越しに話をした。 | そ|れはちょっとしたいたずら心と | 喜びを満|たす、取り組みだった。 | 爆風が吹|いた。 | 二人は壁|ごと圧縮され、ただ一つの | 肉の塊となった。 | | | これは いけない。 | | 華茂は | 思う。 | しかし 華茂の足の |爪が | 三枚 弾けた。 | | ついに 悲鳴が出た。 | | | 間もなく出産を|控えた女性がいた。 | (もう、見たくな|い) | だが予期せぬ難|産に、女性は二日間 | (もう、聞きたく|ない) | 苦しみ|、自然分娩から帝王切開に | (やめて|) | 切り替|えた。彼女の夫はずっと | (やめてやめてやめて) | | そばにいて、妻の手を握り|続けた。 | (やめてよぅ……) | | 手術は見事成功し、かわい|い | 丸々とした赤子が生まれた。 | | 赤子が彼女の乳房に唇を当てる。 | | 夫は涙ぐみ、窓から秋空を眺めて | | 子供に「秋菜」と名付けた。 | | 赤子は名付けられたと同時に、| | 両親とともに、蒸発した。 | | | 華茂は 脇に| 手を挟み | 手を | かばう。この手は | この手だけは| 燕のために…… | その代償 | として | 肘の骨が 粉砕した。 | | どうして | | どうして | | どうしてなの | それでも | | 華茂は | 飛ぶ。 | | 飛び続|ける。 | 悪夢の|中を | 理不|尽の中を | | 燕の 元へ | | 燕の| | | 元へと。 | すると |そこに | ぼんやりと した | | 人影が | | あった。 | | | | | | | | | |
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