魔女のお茶会
未来――δ

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 両者、空泳くうえいは同時。  ナンドンランドンは虎の手に自らの魔力の全てを込め。  華茂かもは炎を宿した拳でこれを迎撃しようとする。  ――いや。迎撃なんてなまやさしいものではない。奴はこちらを撃ち抜くつもりだ。  それこそがナンドンランドンの本懐ほんかい。  虎の手と、炎の拳が接近する。  視界がクリーンになった。  空中に漂う、水の分子、匂いの粒。それら全てが臨めるくらいに。  粒子の狭間で、二つの磁場が絡み合う。  虎か、炎か。  焔か、獣か。  しかしそこでナンドンランドンは冷静になった。  まともにぶつけるなど、戦いの初心者もいいところ。  ナンドンランドンは片方の手で華茂の肘を内側に押した。必然、華茂の拳は針路を崩す。これをけして受けず、首をひねってかわしてやる。さぁ、その空いた胸に。  ガッ――グ――、  グシャアアアァァアァァァァァァッッ!!!!  虎の爪が突き刺さった。  華茂の皮膚の、ぬるっとした感触。そして、ゴツリとした骨の硬さ。  爪の先端が、敵の細胞と細胞を二つに分けていく。  裂傷に、赤い花が咲く。  ――血臭ちしゅう。  華茂は眼球をきろりと剥き、阿呆のように口を開けた。  く、くくくく。  勝っ……た。 【この未来を、採用】

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