Anfang Sage
2章2話 記憶の中へ

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「ここがアールタラ……」  精霊界ソウル・エームの東部。古き精霊の言葉で「時測り」の名を持つ街、アールタラ。『時紡ぎの書庫』があることで知られる石畳の街。ジェンティアで言えばサヴィドゥリーアの様な学問の街だ。ここの街だけでも大学や研究施設が10以上ある、とバルドルはシュリ達に話していた。 「まさか精霊界に大学や研究施設があるなんて思わなかったわ。けど、この空気いいわね。懐かしい」  そう言って嬉しそうに町並みを見回すクルクとは対照的に、 「俺……何だか頭痛くなって来たんだけど……」  シュネルは顔をしかめた。彼は基本的に勉強というものはあまり好きではない。 「シュネルさんったら……シュリさん、時紡ぎの書庫はどこに?」 「えっと街の外れの古びた神殿みたいな建物……あ、あれかな?」  街の北側に古びた神殿のような建物が建っているのを見つけて、シュリが指差す。 「じゃあ、あそこに行ってみようか」 シュリ達はその建物へ向かって歩き出した。  彼らが立ち去った少し後ー物陰で不自然に影が形を変え、そして人のような形をとった。影と同じ漆黒の瞳と髪。纏っている服も影と同化しそうなほど暗い漆黒。その瞳はどこか虚ろだった。

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